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交差点  作者: ケリッド
9/19

交差9 青空

真希編

 うちのクラスは授業中でも騒がしいだが、みんな一言も喋らず、机にかじり付いている。

 今国語の授業では表現力、文章力の強化と誤字脱字の減少を目指すために、読書感想文を書く授業を行っている。

 この感想文は前回の時間と今回の時間の2時間で提出しなければならない。

 みんな普段は本を読まないので、この授業は苦手な授業だ。

 なので誰一人喋らないで黙々とシャープを走らせている。


 私は本を読むのと、こういった文章を書くのが好きなので、この授業は得意だ。


 私は作文を書き終え、軽く伸びをした。

 教室の窓は、蒸し暑い教室に外の新鮮な空気を送るために開かれている。

 私の席は窓際。授業が退屈なときや、やることがないときは、外を見る。


 校庭にある木々がカサカサと風に揺られている。

 空は青く澄んでいて、所々に雲が点々としている。

 今日は天気がいい。


 そんな外の景色を見ながら、私はさっきのことを思い出した。


ーーーーーー


「ごめんなさい!!プリントで前が見えなくて…」

 倒れた反動で、ずれてしまったメガネを直しながら、目の前の男子生徒に謝る。

「あ、いいよ。それより大丈夫?ぶつかっちゃってごめんね」

 そう言って男子生徒は廊下に散乱したプリントを集め始めた。

「あ!!別に良いです!!ぶつかった私が悪いから…。あ!!いいですいいです!!手伝ってもらわなくても」

 しかしそう言った頃には、男子生徒は全部プリントを拾い集めていた。

「気にしなくていいよ。はいこれ」

「あ、ありがとうございます…」

 私は申し訳なさそうに、プリントを受け取った。

「うん。あ、もうチャイム鳴っちゃうよ?急いでたんじゃないの?」

 そうだった。

「すいません!!ホントありがとうございます!!それじゃあ!!」

「うん。今度はぶつからないようにね」

ーーーーーー


 あの人、優しかったな。しかもちょっとかっこ良かったし。

 友達に…、なってみたいな。


 思えば、私はこのクラスの人以外に友達はいない。むしろ喋ったことのある人すらいない。

 まぁ、このクラスにも友達と言える『友達』は、もしかしたらいない。


 私はこのクラスに利用されているのかもしれない。

 宿題や、わからない問題がある時や、学校行事で決め事がある時。

 私はいいように使われる。

 まるで『人』ではなく『物』のように。


「終わったァ!!」

「おい!!まだ書いてる奴がいるんだから静かにしろ」

「すいませーん」


 風で髪がゆれる。

『人』になりたい。

 そう思った時の空はやっぱり青かった。

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