交差9 青空
真希編
うちのクラスは授業中でも騒がしいだが、みんな一言も喋らず、机にかじり付いている。
今国語の授業では表現力、文章力の強化と誤字脱字の減少を目指すために、読書感想文を書く授業を行っている。
この感想文は前回の時間と今回の時間の2時間で提出しなければならない。
みんな普段は本を読まないので、この授業は苦手な授業だ。
なので誰一人喋らないで黙々とシャープを走らせている。
私は本を読むのと、こういった文章を書くのが好きなので、この授業は得意だ。
私は作文を書き終え、軽く伸びをした。
教室の窓は、蒸し暑い教室に外の新鮮な空気を送るために開かれている。
私の席は窓際。授業が退屈なときや、やることがないときは、外を見る。
校庭にある木々がカサカサと風に揺られている。
空は青く澄んでいて、所々に雲が点々としている。
今日は天気がいい。
そんな外の景色を見ながら、私はさっきのことを思い出した。
ーーーーーー
「ごめんなさい!!プリントで前が見えなくて…」
倒れた反動で、ずれてしまったメガネを直しながら、目の前の男子生徒に謝る。
「あ、いいよ。それより大丈夫?ぶつかっちゃってごめんね」
そう言って男子生徒は廊下に散乱したプリントを集め始めた。
「あ!!別に良いです!!ぶつかった私が悪いから…。あ!!いいですいいです!!手伝ってもらわなくても」
しかしそう言った頃には、男子生徒は全部プリントを拾い集めていた。
「気にしなくていいよ。はいこれ」
「あ、ありがとうございます…」
私は申し訳なさそうに、プリントを受け取った。
「うん。あ、もうチャイム鳴っちゃうよ?急いでたんじゃないの?」
そうだった。
「すいません!!ホントありがとうございます!!それじゃあ!!」
「うん。今度はぶつからないようにね」
ーーーーーー
あの人、優しかったな。しかもちょっとかっこ良かったし。
友達に…、なってみたいな。
思えば、私はこのクラスの人以外に友達はいない。むしろ喋ったことのある人すらいない。
まぁ、このクラスにも友達と言える『友達』は、もしかしたらいない。
私はこのクラスに利用されているのかもしれない。
宿題や、わからない問題がある時や、学校行事で決め事がある時。
私はいいように使われる。
まるで『人』ではなく『物』のように。
「終わったァ!!」
「おい!!まだ書いてる奴がいるんだから静かにしろ」
「すいませーん」
風で髪がゆれる。
『人』になりたい。
そう思った時の空はやっぱり青かった。






