交差8 くだらない
悠也編
昼休みもあと10分。
うちのクラスの次の授業は美術。
もう他の奴らはみんな、美術室に向かっている。
もう行かないと授業に遅れてしまう。
ま、そんなことはどうでもいい。
問題はどうして俺が昼休みと言う貴重な時間をお前らと過ごさなきゃダメなんだ?
ーーーーーー
「なぁ悠也、昨日の帰りに恭輔が告られたらしいぜ!!」
弁当を食い終わり、残りの昼休みを寝て過ごそうと思った俺に、公一と坂上 恭輔が話しかけてきた。
しかもまた女の話。
「え?マジで?誰に誰に?」
…ふぁあ〜、眠い。
「それが3組の飯塚 麻衣子なんだってよ!!」
「ごめん…、誰だっけ?」
「マジかよ、悠也!!知らねぇの!?」
そんないちいち女の名前なんて覚えねぇよ。
「恥ずかしながらまだ知らない奴も多いんだよね、俺」
「俺らもう2年だぜ!?いい加減覚えようぜ!!」
…はぁ、本当に疲れる。
「飯塚ってのはこの学校の中で1、2位を争うほどのブスなんだよ」
ふっ、恭輔はそんな奴に告られたのか。笑いものだな。
「恭輔君、やったな!!」
「悠也ぁ〜、マジひでぇよぉ〜」
「ブァッハッハ!!」
ーーーーーー
と言う話を永遠に聞かされて、今に至るわけだ。
全く、人の貴重な時間を邪魔されていい迷惑だ。
「あ、もう昼休み終わっちまうな。そろそろ行こうぜ」
公一がそう言った瞬間…
《ガラッ》
クラスの女子が入ってきた。
あれは…、転校生の柚木芽衣か。
恐らく教科書を取りに来たんだろう。
ま、俺には関係ない。
そう思っていると、公一に肩を叩かれた。
公一の方を振り向くと、公一は恭輔の方を指さした。
何だよと思い、恭輔を見る。
恭輔は柚木の方をじっと見ていた。
「おい、恭輔どうした?」
俺が話しかけてもシカト。
「お〜い、恭輔く〜ん?」
公一が話しかけてもシカト。
結局、恭輔は柚木が教室を出ていくまで俺らを相手にしなかった。
「なぁ、悠也」
柚木が出ていった教室のドアを見つめたまま、恭輔が話しかけてきた。
「どうした?」
「柚木って、あんな可愛かったっけ…?」
悪いが特別可愛いわけじゃないな。
「お前もしかして、惚れた?」
公一がニヤニヤしながら恭輔に聞いた。
「わかんねぇ、でも何かこう…、柚木を見た瞬間胸が熱くなった感じがした…」
くだらねぇ。
「俺、便所行ってから行くから先行くよ」
そう言って俺は教科書を持って先に教室を出た。
俺は恋愛がバカバカしく、くだらなく思える。
さっきの話も虫ずが走るほどだった。
何で人間は『人を好きになる』んだろう。
ま、俺にはどうでも良い。そう思うだけでバカバカしい。
《ドン!!》
「キャッ」
背中に何かが当たって倒れた。
振り返ると、尻餅をついている女子生徒と、数十枚あるプリントがヒラヒラ宙を舞っていた。
「ごめんなさい!!プリントで前が見えなくて…」
そんなマンガみたいなことあるんだ。
そんなことを思いながら女子生徒を見ていた。
「あ〜、授業始まっちゃう!!早く片づけないと!!」
女子生徒は焦った様子で、慌てて散らばったプリントを集めている。
俺はそのまま行こうと思ったが、俺にも責任がある。
手伝ってやるか。