交差7 視線
芽衣編
この学校の屋上はあまり人が集まらない。だから昼休みに屋上に来るなんてあたしくらいだ。
あたしはいつも昼休みはここでお弁当を食べている。
教室で食べても、学食に行っても一緒に食べてくれる人がいないからだ。それだったら空を見ながら1人でお弁当を食べている方がいい。
あたしはお弁当を食べるのが遅い。食べ終わる頃には昼休みがあと半分しかないくらい。
だから食べ終わった今、昼休みはあと半分。
あたしにとって昼休みは苦痛でしかない。
やることがない。遊ぶ相手もいない。
里美も今は学校へ行ってる。里美は学校に行くときはケータイを持っていかない。だからメールしても返ってこない。
「次の授業は…、あ、美術か」
あたしの教室から美術室は遠い。
ましてや、あたしは屋上にいる。
今から勉強道具を取りに教室に戻り、美術室に行かないと間に合わない。
「そろそろ出ようかな…」
あたしは屋上の景色に背を向け、出口に向かった。
「あ…」
「わっ」
ドアを開けると、女子生徒が2人いた。その内の1人は突然ドアが開いたことで驚いている様子だった。
そう言うあたしも少し驚いたんだけど…。
何かその場に居づらく感じてしまった。
「ご、ごめんなさい…」
あたしは少し早足で階段を掛け降りた。
ーーーーーー
あたしは教室の前に着いた。
少し息切れをしている。無意識にずっと早足で歩いていたのだろう。
軽く深呼吸をして、あたしは教室に入った。
教室の中には男子生徒が3、4人いるだけだった。
その中の1人の男子生徒と目があった。
あたしはすぐに目をそらし、勉強道具を机の中から出した。
時計を見る。授業が始まるまで残り約10分。
ここから美術室まで約5分。十分間に合う。
あたしは勉強道具を持ち、教室を出た。
…1人の男子生徒と目が合ってから教室を出るまで、ずっと視線を感じていた。
何でだろう…。