交差6 屋上
若菜編
私は今日も“楽しいこと”が起こることを期待して学校へ来た。
でも“楽しいこと”なんてそう起きるわけもない。
今日もまたいつも通りの日常の半分が終わった。
今は昼休み。
教室で弁当を食べてる生徒、学食や購買部へ行ってる生徒、ご飯を食べ終わり遊びに行ってる生徒。
みんな“昼休みの選択肢”をそれぞれ選んで、行動している。
私はお弁当を食べ終わり、教室でボーっとしている。
何かがしたい。でもその何かが分からない。だからボーっとする。
ケータイを開く。メール、着信なし。ケータイを机の上に置いて、またボーっとする。
どうしてこの世の中はつまらないんだろう。
平凡な世の中に私は飽きた。
私は窓を見ながらため息をつく。
「わーかーなー」
背後からのほほんとした声が聞こえた。
優夏だな。
私は振り向く。やっぱり優夏だった。
「何してんのー?どこも行かないのー?」
首を傾げて聞いてくる。
「だってどこ行ったってつまんないもん。優夏は?」
「んー?優夏は暇そうな若菜の相手しようと思ってー」
そう言って優夏は私の席の隣に座った。
吉川 優夏。私が入学して1番最初に出来た友達。身長が低くて、顔も子供っぽい。恐らく私服の彼女を見れば、みんなは中学生と思うだろう。いつものほほんとしていて、見てるだけで癒される。
でもそののほほんとした性格と子供っぽいところが、何か可愛らしく思える。
実際男子からの結構評判も良い。
「んー、今日も平和だねぇ」
優夏は伸びをしながら言った。
「平和だね。だから暇だわ」
「あはは、そぉだねー。あたしも暇ぁ」
優夏は暇と言いながらもニコニコしている。
「優夏って何でそんな可愛いのさ!!」
私は優夏の頭を乱暴に撫でた。優夏の髪がくしゃくしゃになる。
「ちょっとぉ!!若菜何すんのぉ!!」
乱れた髪型を整えてる優夏を見て私は笑った。
優夏はいつでも笑顔でいる。辛いときも、頑張ってるときも。
この生活を心から楽しんでるように思える。
私はそんな優夏が羨ましい。
「ねぇねぇ若菜、屋上行かなぁい?」
髪型を整え終わった優夏は私に言ってきた。
屋上か、ここにいるよりはいいかな。
「いいよ、行こうか」
「やったぁ。それじゃあレッツゴー」
私達は屋上に行くことになった。
ーーーーーー
「若菜ぁ、早く早くぅ」
優夏は階段を昇って、屋上の入り口まで来ていた。
「そんな急ぐ必要ないじゃない」
私は優夏に急かされながらもマイペースで階段を昇っていく。
「いいから早くぅ」
優夏は笑顔でだだをこねている。
ホント子供っぽいなと思いながら私は、ようやく屋上の入り口に着いた。
「じゃあ開けるよぉ」
優夏がドアノブに手をかけた時、ドアが勝手に開いた。
「あ…」
「わっ」
目の前には女子生徒が立っていた。
優夏は驚いて前を見た。相手も少し驚いた様子で優夏を見てる。
「ご、ごめんなさい…」
その女子生徒は一言そう言って階段を下りていった。
「誰だろう?」
「わかんなぁい。若菜早く行こぉ」
女子生徒に興味が無いのか、優夏は屋上へ行ってしまった。
私もまぁ、いいかと思いながら優夏を追いかけた。