交差3 芽衣
この学校に転校して来て、2週間。あたしはまだ友達が出来ないでいる。
話す人がいない教室で朝過ごすくらいなら、誰もいない屋上で景色を見ていた方がいい。
そう思ってあたしは、入学してからずっと屋上に来ることが日課になっている。
あたしはいつものように、フェンスに腕を乗せ、景色を見た。
学校の周りは住宅街になっている。ビルやデパートなど、高い建物がないので町全体を見渡せる。
町の所々に緑が見える。この町は自然を大事にしているんだろう。
家々の多彩な色、自然の緑、そして空の青。
いろんな色が組合わさったその景色があたしは好きだった。
あたしはその景色から、校庭に目を移した。
何人もの生徒が校門を通り、玄関へ向かっている。
皆、それぞれ違った表情で歩いている。
ダルそうに歩いている生徒や、友達と楽しそう話している生徒、なぜか暗い表情で歩いている生徒もいた。
あたしは頭の中で自分の姿をその中に入れてみる。
一体どんな表情をして登校してるんだろう。
明るい?
暗い?
もしくは無い…?
いや、恐らく無いだろう。
この学校に楽しみなんて無い。
楽しく話す相手もいない。ただこうやって空を見るだけ。
前の学校まで繋がっているこの空を見るだけ。
転校なんてしたくなかった。
友達と別れたくなかった。
前の学校にいた頃は学校に行くことが楽しみだった。友達と授業中に騒いで先生に怒られたり、昼休みはお弁当食べながらバカ話したり、帰りはカラオケや買い物行ったりしてた。
あそこがあたしの居場所だった。
今はもう居場所はない。
あの頃に戻りたい…。
ケータイを開いてメール受信履歴を見る。
『芽衣、新しい学校はどう?楽しい?こっちは芽衣がいなくて寂しいよ。夏休みは遊びにきなよ!!待ってるからね。それじゃあバイバイ』
里美からのメール。あたしの1番の友達。
里美とは恐らく1番一緒にいた時間が長い。学校にいる時も、帰る時も、遊ぶ時も必ず隣には里美がいた。
だから転校することを告げるのは、本当に辛かった。
でも里美は笑顔で
「離れてもずっと友達だからね」って言ってくれた。
あの時程、嬉しかった時はなかった。
…里美、今何してるかな?
夜またメールしてみよう。
そろそろホームルームが始まる。
あたしはまた孤独の世界へと向かった。