交差2 悠也
ガタンゴトン…
俺は今日も学校へ向かうため満員電車に揺られている。
スーツ姿のハゲたオッサン、ヘッドホンをつけてノっている若い兄ちゃん、キョロキョロと周りを警戒している女性、キティちゃんのキーホルダーをカバンに付けてボーっとしている女子高生。
電車にはいろんな人達が乗っている。
この人達はどんな今日を過ごすのだろうか。
それぞれ今の生活に満足しているのだろうか。
俺は時々、そんなことを思う。
何でかは分からないが。
恐らく今の生活が楽しくないからなのかも知れない。
「おう、悠也、おはよう」
「あ、公一、おはよう」
俺に声をかけてきたのは、宮本 公一だ。こいつが電車に乗っていると言うことは、降りる駅は近い。
…ダルい。
俺は自分で言うのも何だが、クラスでは人気のある方だ。
男女関係なく友達も多いし、多分みんなからも慕われてると思う。
でも俺はみんなを友達だと思ってない。
『良い人』を演じてるだけなんだ。
正直自分の価値を上げるための道具にしか過ぎない。
…宮本もその1人だ。
「なぁ悠也、俺昨日友達から女紹介されたんだけど、メッチャキモいんだよね」
…来た。公一の女の話。
こいつはいつも俺に女の話をする。
正直ウザい。
「マジで!?ちょっと写メ見せてよ!!」
…見たかねぇよ、お前の紹介された女なんて。
「うわ!!なんだよこれ!!マジなくねぇ!?」
でもこいつのノリに合わせる。自分のために。
「だろ!?マジねぇよな!!…あ、着いたぞ。行こうぜ」
降りる駅に着いた。
今日も『良い人』を演じるだろう。
正直疲れる。
「あ…」
「ん?どうした?悠也」
「あ、いや、何でもない。早く行こうぜ」
駅のホームにキティちゃんのキーホルダーを付けた女子高生がいた。
ま、ただそれだけのこと。俺には関係ない。