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交差点  作者: ケリッド
18/19

交差18 出会い

真希編

 昼休みか…。


 私は教室で母親が作ってくれたお弁当を食べていた。


『さっさと来い!!小僧!!』

『何!?』


 廊下側で男子が騒いでいる。そしてやがて教室を出ていった。

 私はさほど気にせずお弁当を食べていた。

「…多い」

 そう言って私はお弁当を半分ほど残し、カバンにしまった。

 いつも私はお弁当を残してしまう。

 私は他の人よりやや小食で、家族で外食するときも余計に注文しない。

 母親もそれを知っているのだが、料理がとても好きなのでいつも余計に多く作ってしまう。

 でももう私はそれに慣れた。

 それに残して帰っても圭介が食べてくれるから何の問題もない。


 私はふと窓から外を見た。

 グラウンドが見える。

 グラウンドには次の時間は体育であろう、ジャージ姿でサッカーをやっている人たちがいる。

「元気な人たち…」

 私は何気なくそんなことを漏らした。


 私は窓から目を離し、今日も出された数学の宿題をやろうと、机の中からプリントを出した。

 別に家に帰ってからでも、明日までには出来るのだが、昼休みだしやることがないので、私はやろうと思った。


 その時だった。

「真希、ちょっと来てくれない?」

 同じクラスの女子に声をかけられた。

「え?」

 あまり話したことのない女子だったので、なぜ声をかけられたか分からなかった。

でも大体予想はついている。

 こうやって話したことのない人から話しかけられるときは“利用される”ときが多い。だから恐らくそうだ。

「あたしの友達が数学で分かんないところがあって、あたしも分かんないから真希に見てもらおうと思って。ダメ?」


 …やっぱりそうだ。


 また“利用”される。


「いや、別に良いよ。クラスの人?」

 “利用”されるのはウンザリだ。でもそれを口に出して言えなかった。と言うより勇気がない。

 亀のように甲羅の中に隠れて身を守っているように。

 人間というものは1人では生きていけない。生きていれば必ず人間関係というものが生まれる。

私は一時の感情に左右され、それを崩すくらいなら“利用”される方がマシだ。

 言っていることは矛盾しているのは分かっている。


 私は…、臆病なんだ。


「んとね、6組の子だよ」

「分かった。それじゃあ行こっか」

「ありがとう真希。それといつもごめんね」

 私たちは6組の教室に向かった。



 うちの学校は1学年8組まである。


私のクラスは1組。6組までは一直線だがかなり距離がある。

 …長い。


「朋子〜、呼んできたよ」

 ようやく6組に着き、女子生徒は友達を呼んだ。

 この子の友達ってトモコって名前なんだ。

「あ、美沙(みさ)ありがとう」

 一応紹介しとくね。うちのクラスの女子の名前は松本 美沙ね。

「あなたが学年トップの小泉 真希ちゃんね。あたし冴島 朋子、よろしくね」

「よろしく…」

 私は人見知りが激しく、初対面の人を前にすると緊張しまう体質なのだ。

 しかも綺麗な人だし。同じ人間とは思えない。


「真希ちゃん、さっそくで悪いんだけど、これ数学のプリント。んで分かんないのがこことここ。あ、あとこれも」

「えっとね、これは…」

 私は朋子が分からないところを一つひとつ教えてあげた。


 しかし、私は朋子はすごいと思った。

 私とは初対面なのに、まるで私のことを友達のように接してくれる。

 人見知りの私には考えられなかった。

 恐らく朋子は友達がたくさんいるだろう。

 私は朋子が羨ましくなった。


「ありがとう〜、真希ちゃん。ホント助かったよ」

 朋子は私に笑顔でお礼を言ってくれた。

「いや、大したことないですよ。それより私の教え方で冴島さんが理解できたかどうか…」

「超分かりやすかったよ!!さすが真希ちゃんだね!!」

「でしょ?この美沙様が連れてきた助っ人に狂いなしだよ」

 美沙が胸を張って言った。

「美沙は何もやってないでしょお」

「ヒドい!!朋子ヒドいわぁ!!」

「あはは、美沙おもしろーい」


 何かこういう関係って羨ましい。お互いを信頼して、こうやって冗談言って、思いっきり笑い合って。

 私にはそんな人なんていない…。


「それじゃあ私そろそろ戻りますね」

 この場の雰囲気に耐えられず、逃げるように教室を出ようとした。

「待ってよ真希ちゃん、ちょっとあたしノド乾いたから美沙と一緒にジュース買いに行かない?」


 え?私今誘われてる?この私が?


「いいの…?」

「良いに決まってんじゃん。それに勉強教えてもらったし。ね?」

「うん!!」


 初めて誘われた。

 今までこうやって何かに誘われたりしたことがなかった。

 ただ“一緒にジュース買いに行く”という小さな誘いでも、私はすごく嬉しかった。


 私と朋子と美沙でジュースを買いに1階に向かった。



「何で真希ちゃんそんな頭いいの?」

 ジュースを買い、3階に向かってる最中に朋子に聞かれた。

「え?う〜ん、家に帰っても勉強してるから、ですかね」

「さすが真希ちゃんだね。てゆうかさ、真希ちゃん敬語なんてやめてタメ口で良いよ。タメなんだし」

「真希って律儀だもんね」

「そう…?」

「そうだよ。あたしたち初対面だからってそんな堅くならないでさ」

「うん!!分かった」


 そうこうしてるうちに私たちは3階に着いた。

「朋子、あたしちょっとトイレ行ってくるわ」

 3階に着き、美沙がそう朋子に言った後、トイレに向かっていった。

「美沙とは同じクラスだけど、美沙って何か面白いね」

 私は自然に朋子に話しかけていた。

「あはは、そうだよね〜。ていうかアドレス教えてよ」


 私がアドレスを聞かれてる…。

「え!?あ、うん!!いいよ!!」

 私は本当に嬉しかった。久しぶりに“人”として生きている気がした。

 冴島 朋子。

 私はあなたに会えて本当によかった。


 私たちはアドレスを交換してそれぞれの教室に戻った。


《ドン》

「キャッ」

「うおっ」 教室に入ろうとしたとき、誰かとぶつかった。

 私はぶつかった衝撃で尻餅をついてしまった。

 見上げると小紅くんがいた。


「ちょっと小紅くん、気を付けてよ」

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