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交差点  作者: ケリッド
17/19

交差17 声

光寿編。

ずいぶん遅れました。それではどうぞ。

「みっつー、購買行こうぜ」

「まぁ、待て。今君に与えられた選択肢は『待つ』だ」

「じゃあ君に与えられた選択肢は『購買に行く』だ」

「何!?」

「さっさと来い!!小僧!!」


 今は昼休み。

 いつも通り昼休みになるとたっちゃんがこうして俺を購買に誘う。

 そしていつもこうしてくだらない会話を交わす。

 ま、いつものことだぜぇ。


「ヘイ購買のババァ、さっさとカレーパンよこしな!!」

 …たっちゃん、なんだその態度は。

「ヘイボーイ、てめぇに売るカレーパンはねぇぜ!!さっさと帰ってママのおっぱいでも吸ってな」

 …ババァ、君はなんて格好いいんだ。

「上等だババァァァ!!!」


ーーーーーー


「あのババァ、なかなかやるぜ…」

 グチャグチャになったカレーパンを頬張りながらたっちゃんは言った。

「たっちゃんさぁ、普通に金払えば普通の状態のカレーパンが『こんにちは』してくれると思うんだが」

 あの後、たっちゃんは購買のババァとの勝負を繰り広げた。

 口げんかから始まり、ジャンケン、にらめっこ、トランプ、格闘ゲーム、レースゲームといつの間にかプレステを持ち込んでの勝負になっていた。

 たっちゃんは勝負をすることに惨敗し、たっちゃんのイライラはMAXになった。

 たっちゃんは購買のババァに1円玉105枚を1枚ずつ投げてカレーパンを奪って逃げようとしたが、ババァもそれを予測してたかの如く、たっちゃんの持ったカレーパンに掴みかかった。

 2人はしばらくカレーパンを引っ張り合ってたが、たっちゃんの一言が決め手となった。

『あ、ぺ・ヨンジュン』

『嘘!?どこどこ!?…あ!!あのクソガキぃ!!!』


 たっちゃんWIN。

 戦利品、グチャグチャのカレーパン。


「たっちゃん、何故君は敵意むき出し殺る(やるき)100%でババァに挑んだんた?」

 俺は口の周りにカレーを付けているたっちゃんに疑問をぶつけた。

「んあ?教えてやろう兄弟」

 また兄弟になってしまった。

「ちなみにたっちゃん、俺兄か?それとも弟か?」

「君は姉だ」

 たっちゃんはついに俺を男と認識しなくなったな。

「あのババァ、俺の夢に出てきたムカつく野郎に似ていたんだ」

「夢…?」

「ああ、そうだ。ああ、そうとも!!俺は夢の中で鳥になったんだ。鳥だぜ!?翼を持たない俺らにとっては最高のドリームだよ。でもあのババァは電線で休んでいた俺をなんやかんやで捕まえて焼き鳥にして食ったんだ!!」

 オー!!夢イズ ファンタジー!!


 たっちゃんはなんてファンタジックな夢を見てたんだ。

 俺なんて今は無き智子の夢なんて見てるのにさ。

「おい!!みっつ泣いてるぞ!?何でだよ!!」

「ヘイマイフレンド、心配してくれるのかい?」

「当たり前だろ!?はいこれ」

 こ、これは…。

「これ食って元気出せよ相棒」

 ありがとう。とても嬉しい、そしてその君の優しさに感動した。

 パンとは何だと言わんばかりに握りつぶした茶色い小麦粉の物体をくれる君の優しさに。

 しかも食いかけ…。


『…だよね〜、ていうかアドレス教えてよ』

 ん!?この声は…。

「朋子!!」

「どーしたみっつ!!おぉ!!なんだこのカレー臭い物体は!!」

 たっちゃん、それやったの自分だよ?

 そんなこたぁどうでもいい!!廊下には朋子がいる!!

 俺は豪快に廊下に出ようとした。

「きゃっ!!」

「うおっ!!」

 やべ、誰かとぶつかってしまったぜ。

「ちょっと小紅くん、気を付けてよ」

 俺とぶつかったのは委員長だった。

「あ、おう…。わりぃ…」

 委員長はぶつかった拍子に、ずれたメガネを直している。

「委員長大丈夫か?」

「あ、うん。でも今度から気を付けてよね」

「わりぃな、じゃあ」

 委員長に一言残して、俺は再び豪快に廊下に出た。

「…いねぇ」

 廊下には男子、女子がたくさんいたが、その中に朋子の姿はなかった。

「あれは確かに朋子の声だった…」

 何度も聞いた声。俺が聞き間違えることはない。

 でも今廊下には朋子の姿はない。

「今更、会って何を話せばいいんだろう」

 はは、俺はバカだ。

 朋子はもう俺のことは好きではない。

 会って話したところで何も変わらない。

 あの時の幸せはもう戻って来ないんだ。


 俺は教室に戻った。

「ぐべぇ!!」

 顔面に何か気持ち悪い感触があった。

「うおぉぉぉ!!カレーくせぇ!!!!」

「へっへ〜、みっつぅ〜。俺のカレーパンを…」

「たっちゃ○☆△※◇&@∈〒∀!!」

「よくもこんなグチャグチャにしてくれたなぁ!!覚悟しろぉぉ!!小僧ぉぉぉ!!!!」


 たっちゃん、自分でやったんだよ…。

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