交差16 作戦と娯楽
悠也編
「いいかみんな、恭輔が教えろって言っても教えるなよ」
俺はクラス全員を集めて指示を出した。
柚木を外して。
「そして恭輔、何人かに話しかけたら最後に柚木に話しかけろ」
俺は恭輔に向かって言った。
「で、でもなんて話しかければいいかわかんねぇよ」
恭輔は自信なさげに言う。
「確か柚木さんって世界史得意だよ」
クラスの女子が恭輔に向かって言った。
「よし、じゃあこう言え。『柚木世界史得意なんだろ?頼む、教えてくれ』って」
「お、おう…」
恭輔はやっぱり自信なさげに言う。
「その後は恭輔次第だな。頑張れよ」
俺は恭輔の肩をポンと叩いた。
ーーーーーー
「ありがとう悠也。おかげで休み時間柚木と話が出来たよ」
授業中に隣の席の恭輔が小さく話しかけてきた。
「お、やったじゃん。どうだった?」
「なんか柚木俺の名前知らなかったんだって」
「お前、残念だな」
俺は恭輔をバカにするように言った。
「うるせぇ」
「それで?その後は?」
俺はなぜか興味津々だった。
「それで、結構いろいろ話したよ。住んでいたところはどんなところかとか、こっちの生活はどうかとか」
恭輔は楽しそうに話した。
「へぇ、なんかいい感じじゃん」
「まだ、完全に打ち解けてるわけじゃねぇよ。俺緊張しまくりだったし」
「お前女と話すのそんなに慣れてねぇもんな」
俺はまたバカにするように言った。
「うるせぇ」
「はは、わりぃわりぃ。ま、作戦が成功してよかったな」
そう。
これは作戦だった。
俺は柚木を抜かしたクラス全員に、恭輔をシカトさせ、恭輔が柚木に話しかけるよう仕向けたものだった。
作戦自体は単純だが、結果は見事成功。
世界史が終わった後の休み時間、恭輔はずっと柚木と話してたらしい。
じゃあなぜ俺は恭輔のためにこの作戦を考えたか。
周りからしたら、友達の恋の手伝い。
だが、実際は単なる俺の暇つぶし。
俺は別に恭輔の恋なんてどうでもいい。
この作戦が成功し、これから恭輔が柚木に対してどうするのかを楽しむ。
それかこの作戦が失敗し、恭輔をバカにして楽しむ。
どっちにしたって俺の暇つぶしになる。
「なぁ、恭輔」
「あ?」
俺はいつの間にか寝ていた恭輔に話しかけた。
「お前これからどうすんの?」
「何が?」
「柚木のことだよ」
「ばっ、お前声デカい!!」
恭輔は静かに怒鳴った。
「わりぃわりぃ、で、どうすんだ?」
俺がそう言うと恭輔は小さく何か言った。
「………てくれ」
「は?」
声小さくて聞こえねぇから。
「協力してくれ」
恭輔は少し恥ずかしながら言った。
「当たり前だ。俺ら友達だからな」
俺は少し笑顔で言った。
「悠也、サンキュー」
「ああ」
楽しくなってきた。
これからどうなるのか、予想は完全についていないが、確実に暇つぶしになる。
俺を楽しませてくれよ。
「さっきからあんたらうるさいんだけど」
「「すいませーん」」
先生に怒られた。