交差15 名前
芽衣編
今日うちのクラスは1時間目から世界史の授業。
世界史の授業では必ず前回の復習を出席番号順で決めて行う。
あたしは先週行ったので当分まわってこない。
今日は誰だっけ?
ま、いっか。
あたしは勉強道具を用意し、ケータイをいじっていた。
「やべーよ、今日の復習俺だよ。誰か教えて!!」
クラスの男子が騒いでいる。
今日の復習の男子か。
そんなことを思いながらあたしはケータイをいじっていた。
昨日里美からメールが来なかったな。なんか忙しいのかな。
あたしは少し残念だった。
でもだからってこっちからメールすれば里美にうざがられるかもしれないので、あたしからはしない。
それに最近ずっとあたしからメールしてたからな。
「誰か教えてくれよ!!」
まだ、騒いでいる。
誰か教えてやればいいのに。
そう思ってるとその男子からいきなり話しかけられた。
「なぁ、柚木!!お前世界史得意だったよな!?俺に教えてくれないか!?俺復習当たるんだよ!!な!?頼む!!」
「え…?」
…なぜあたし?
「お願い!!この通り!!」
その男子は両手を重ね、お辞儀をしてきた。
「え…、あ、うん…」
あたしはちょっと戸惑いながら頷いた。
「マジ!?サンキュー!!助かるわ」
そう言って男子は持っていたノートを開き、どうゆうところが出そうか聞いてきた。
あたしは重要なところが恐らく出ると思い、その箇所を教えた。
結局その男子は復習でちゃんと答えられず、間違えてしまった。
「柚木、教えてくれてありがとな。俺間違えちゃったけど」
世界史の授業が終わり、あたしはその男子に話しかけられた。
「あ、ごめん…。ちゃんと教えれなくて…」
あたしは申し訳ない気持ちより、戸惑いの気持ちの方が大きかった。
「あ、なんもいいよ。気にすんな。頭悪い俺が悪いんだから」
男子は笑いながら言った。
あたしは何も言わずうつむいてしまった。
どうしていきなり話しかけられたんだろう。
この人と1度も喋ったことがないのに。
「ねぇ…」
あたしはその疑問を男子にぶつけた。
「何であたしに聞いたの?他に教えてくれる人いなかったの?」
「え?いや、だって柚木世界史得意だからさ」
ごく当たり前な答え。
「あ、そう…」
「それに…」
「それに?」
男子は少し恥ずかしそうに言った。
「その、柚木と話してみたかった…」
は?
「え…?話してみたかったって…」
あたしは驚いた。
あたしと?
なぜ?
「あ、あの…、友達に…」
「え!?」
あたしはさっきよりもっと驚いた。
それになぜか告白されてるように感じる。
「や、やっぱ何でもない!!じゃ、じゃあな!!」
男子はいてもたってもいれなくなって逃げるように教室を出ようとした。
「待って!!」
あたしの口からとっさにそんな言葉が出てきた。
「何…?」
男子は立ち止まり、ゆっくりとこちらを向いた。
照れているのか、目は合わせなかったが。
「名前、教えて」