交差14 夢の中
光寿編。
今回はガラリと雰囲気が変わっています。
俺は夢を見た。
そこは俺の部屋だった。
窓の外は暗く、正直夢なのか現実なのか分からなかった。
いや、これはやはり、夢の中だ。
隣には別れたはずの朋子がいる。
付き合っていた頃の、俺とのお揃いの指輪をしている。
別れを告げられたときは付けてなかったお揃いの指輪。
一緒に買いに行った頃が懐かしい。
部屋の電気が付いておらず、月明かりだけが俺たちを照らしている。
「朋子…?」
俺は朋子に声をかけてみる。
「ん?なに?」
朋子は普通に返す。
「いや、何でもない」
俺がそう言って会話を止めてしまう。
「そっか」
…沈黙が続く。
俺自身何を話したらいいか分からない。
夢の中だが、目の前には彼女がいる。
もう手の届かない所にいるはずの彼女がいる。
だからこそ何を話していいのか分からない。
なぜこういう夢を見るんだろう。
俺自身朋子のことを諦め切れてないから?
もう二度と会うことの出来ない朋子との時間をせめて夢の中で楽しめと言うのか?
「!」
朋子は俺の手に手を重ね、俺にもたれ掛かってきた。
手と手が重なる時、指輪と指輪がぶつかる。
「あたし達、ずっと一緒かなぁ?」
「え…?あ、うん。当たり前だろ?」
“ずっと一緒かなぁ?”
俺は思わず嘘を言ってしまう。
ずっと一緒にはいられない。
現実が、もうそうだから。
「あたしは光寿のこと好きだよ?」
俺は黙って外を見る。
「前も、今もこの先もずっと」
外はいつの間にか、雨が降っていた。
「だから…、別れる時も好きだったよ。ホントは別れたくなかった」
「え…?」
なぜか雨は強くなる。
「あの時は、もう好きじゃないって言ってゴメンね」
「じゃあ何で!?」
「光寿、今もあなたのことが好きよ。さよなら…、またね…」
「朋子!!」 もうそこは夢の夜では無く、現実の朝だった。
当然部屋には俺1人しかいなかった。
いつもの孤独の朝。
でもなぜか手には朋子のぬくもりがあるような気がした。
俺はテーブルを見る。
テーブルの上にあるお揃いの指輪。
夢の中でぶつかったのを思い出す。
「俺は…」
俺はまだ君の隣にいることが出来ますか?