交差13 虚しき夜空
真希編
私は今数学の宿題をやっている。
それはやるべきものでもあり、今ある信用を維持するためでもある。
うちのクラスは真面目な人が少ない。
宿題をちゃんとやる人なんてごく少数。
みんなやってる人の宿題を写してるだけだ。
それが数学となれば尚更だ。
数学が好きな人なんてそんなにいない。
私も特に数学は嫌いだ。
でもやらなければならない。
数学のプリントは1枚しかなく、もうそろそろ終わるところだ。
なぜ数学のプリントは最後の方になると難しくなるんだろう。
基礎だけを習わせて、応用問題はそんなに説明しないし例題も少ないのに、テストになると応用問題が結構出る。
ま、私はわかるから別にいいんだけど。
「あ〜、終わった」
私はシャープを置いて、大きく伸びをした。
時計を見た。もう10時を回っている。
やることがなくなり、私はベッドで横になった。
“コンコン”
部屋にノックの音が鳴り響く。
どうせ弟の圭介だろう。
「は〜い」
ドアが開いた先には予想通り圭介がいた。
「姉ちゃん宿題終わったの?」
「終わったよ。あんた何しに来たの?」
「暇つぶし」
「暇つぶしで私を使うな」
圭介は普段は自分の部屋にこもってケータイをいじったり、ゲームしたりであまり部屋から出ない。でも極限にやることがなくなったら私の部屋に来る。
圭介は私の2つ下で、今は中学3年生。
勉強は普通くらいのレベルだが、運動神経が良く、部活の陸上で全国大会に出場するくらいのレベルである。
そのため推薦で高校行くと言い、勉強を全くしてないバカ野郎である。
「姉ちゃんさ、彼氏作んないの?」
「何でさ」
「だって、何か姉ちゃんの人生は勉強ってかんじだもん」
「私だって好きで勉強してるんじゃない」
そう。私だって好きで勉強してるんじゃない。
勉強なんてしないで、友達と毎日遊んだり、彼氏を作ったりしたい。
「ふ〜ん」
圭介は適当に返事をした。
「あんたずいぶん適当な返事ね」
「俺は部活以外全部適当なの」
「あっそ。じゃあその真面目に取り組んでる部活の朝練に遅刻しないように早く寝ろ」
「わかったよ〜」
そう言って圭介は部屋を出ていった。
私は窓から空を眺めた。
星が点々と輝いている。
地上では虫が鳴いている。
「圭介が羨ましい…」
空は星が輝いて綺麗なのに、私の心のように虚しかった。