交差11 紙コップ
悠也編
学校が終わり、俺と公一と恭輔で駅前にいた。
この時間帯になると、駅前には人が多くなる。
その大部分が学校帰りの高校生で、ゲーセンに行ったり、デパートで買い物したりして、溜まったストレスを自分なりに解消している。
ちなみに俺達はマックにいる。
学校帰りにはよくマックへ寄り、他愛もない話をしながら小腹を満たす。だから夕食はあまり入らないことが多い。
「はぁ…、柚木、何してるかな」
恭輔はコーラを飲みながらボソッと呟いた。
「お前どんだけ!?」
公一がハンバーガーにかじりつきながら言った。
確かにどんだけだ。
人間とは人を見るだけで恋心が芽生えると聞いたが、まさかこれほどとは。
「悠也、公一、俺マジやばいかも」
恭輔はもう中身が入ってないのにも関わらず、ストローで吸っている。
「もう告っちまえば?」
「え!?無理無理無理無理!!だって俺柚木と話したことないしさ!!…あ!!」
公一の言葉に動揺したのか、恭輔は紙コップを落としてしまった。
あぁ、汚ねぇな。全く…。
俺はその落ちた紙コップを拾おうとして、手を伸ばした。
その時、見覚えのある物が目に飛び込んできた。
「キティちゃんのキーホルダー…」
「は?」
俺は無意識にそう口に出していた。
俺の目の前に、朝駅のホームで見た女子高生がいた。
キティちゃんのキーホルダーが少し揺れている。
「あの…」
その女子高生は、俺が手を伸ばしているせいで道が遮られ、戸惑っている。
「あ!!すいません!!」
すぐに俺は落ちた紙コップを拾った。
「すいません…」
俺は申し訳なさそうに謝った。
「いえ、別に…」
女子高生は少し頭を下げて行こうとした。
「あれぇ?若菜そんなとこでなにやってんの?」
彼女の友達であろう、後ろにも女子高生がいた。
「あ、なんでもないよ」
彼女はその友達にそう言った後、俺の方を向いた。
「それじゃあ友達がいますので行きますね」
「あ、はい」
そう言って彼女と彼女の友達は2階に行った。
へぇ、あんな娘だったんだな。
髪は少し茶色がかかったショート、ちょうどいい感じに目がクリッとしていて、スタイルもやや細身。
公一あたりがタイプの女子だろう。
「おい悠也!!何でもっと話そうとしないの!?もしかしたら仲良くなれたかも知んなかったんだぞ!?勿体ねぇな」
コーラを飲みながら公一が言った。
「いやいやいや、初対面つうか、知らない人だから。それに俺あんまりそういうナンパみたいなことできねぇんだよ」
ホントは女なんてどうでも良かったんだが。
「でも同じ高校だよな?制服が同じだったから」
ようやく柚木のことを考えるのをやめた恭輔が言ってきた。
「あ、そう言えばそうだな」
「ちなみに俺らとタメだよ。学年のバッチが俺らと同じだったから」
「…恭輔、おまえ意外にちゃんと見てるんだな」
公一が少し驚いた様子で言った。
その意見には俺も同感だった。
「当たり前だろ?俺だって男なんだから」
そう言いながら恭輔はケータイを取り出し、1人の世界に入ってしまった。
「そっか、俺らとタメか。今度探してみようかな」
「なに、おまえも一目惚れか?」
男という生き物はホント愚かだな。俺も男だが。
「一目惚れではないけど、俺のタイプに近かったからちょっと仲良くなりてぇなって」
それってほとんど一目惚れじゃねぇか。