むし
夜、私が勉強をしていると訪れる者たちがいる。
それは、小さな虫たちだ。
虫たちは、私の勉強を邪魔しながらも、色々な感情を私に湧き起こさせる。楽しさ、幸せ、喜び、悲しみ、嫉妬、恐怖、怒り、苛立ち……。
ある者は虫の心体の不思議を考えさせ、ある者は虫の生き様を見せつけ、ある者は私をあざ笑い、ある者は世の理を見せ、ある者は私を弄ぶ。
そんな様々な虫たちの多くは、私のそばで死んでゆく。
どうして死んでゆくの、あなたたちは人の温もりと、光を求めてここへ来たのでしょう。ならばなぜ、あなたは仰向けなのか。飛べなくなるのか。力尽きるのか。私は何もしていないのに。
でもごめんなさい。
私、毎日一、ニ人の訪問者は殺してしまうの。
おいたをした子にゃ罰をなさん。
ああ、どうかお慈悲を。
虫たちと心を通わさして欲しい。
私にあの猛烈なアピールをしてくる子の気持ちを受け取りたい。返事もさせて欲しい。
私は、あなたのダンスに心を奪われてしまった。お陰で私は、ダンスを踊れなくなってしまった。
またもう一度お会いして、ぜひ見せて欲しい。あの私を見つめながら動く情熱的なダンスを。
一年前のあなたのこと、誰よりも覚えています。再会が不可能ならば、せめて私の心の中で生き続けて。
あなたたちは私に感情を与える。
私はあなたたちに光と熱を共有する。
でも どうか 私に勉強をさせて。