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表現練習

作者: 荻雅 康一

 大きな籠だった。あの子が最後に目撃された部屋の中にその籠はあった。

 絵の具の独特のにおいが部屋の中に充満していてついさっきまで絵を描いていたのかと思わせるような新鮮さだった。

 その絵は大きくサイズでいえば、Sの120号――194センチ四方のキャンバスに描かれていたものでどうやら油絵のようで特有の塗りが目に飛び込んで来る。中心には丸い外郭で座って居る人を包み込むように設計された椅子に白い女の子が描かれていた。そしてその子の後ろには、大きな三枚の木の格子が入った窓があり、外には森が描かれているように思えた。外の風景は、中央の窓には赤い模様が入れられていて、夕日を思わせる。

 中央の女の子は椅子に座りっているのが分かるが、女の子自身には、色が塗られておらず、勢いのあるタッチで白色の絵の具を塗り妙に神秘的な演出をしていた。

 床や天井は、様々な色を重ねているのが見受けられ濃い緑色に染まっている。それはまるで少女を取り囲む木々の鎖のように思えた。それが第一印象で「籠」を連想させたのだった。その鎖は人の顔に見える筋となって彼女の周りに壁となっているのだ。

 

 引き込まれるようにその絵を見ているとあることに気が付いた。

 中央に描かれている白色の少女の周りに赤色でアクセントとしてか、色が塗られていたのだ。そのことに気が付き、よく見ようと顔をキャンバスに顔を近づけるとそれは、絵の具ではなかった。


 ――瞬間。白い少女の顔の口があろう部分に三日月を横に倒したような形が浮かんで……。



 部屋には、強い絵の具のにおいが充満していた。


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