父の遺品
大臣が持ってきたのは小さな箱だった。中心に大きな宝石が埋め込まれており、そこから四方に溝が掘られている。。
「うむ。それをマモリに。」
大臣はマモリの姿に少し驚いたようだったが、その件には触れず、静かにマモリに箱を渡した。
マモリはその箱を持った瞬間、不思議な感覚にとらわれる。
まるでこの中に引きずり困れるような。
でも怖くはない、優しさに満ちた。
この箱を手にするのをずっと待っていたみたいだった。
「マモリ…その箱に魔力を込めて、フルアーマーを唱えなさい。それの名前は…ガメイラよ。」
「ガメイラ…」
マモリはこんな箱でフルアーマーが使えるのかと疑問に思いながら、魔力をこめる。
すると箱の中央の宝石が光だす。
マモリはさっきの感覚を思い出し、フルアーマーを唱えた。
「うん…フルアーマー・ガメイラ!」
箱の宝石がより強く光だし、その光が四方の溝に走る。
箱全体が光、蓋の部分が宝石と一緒に消えていく。
と思ったら勢いよく中から何か飛び出し、マモリの首に巻きついた。
その物体は少しずつ形を整えていき、ペンダントの形になってマモリの胸元に落ち着いた。
「…これは?」
「それは人格魔導具、ガメイラ。これからあなたを助けてくれるわ。」
「人格…魔導具…?」
「ええ、今はまだ眠っているみたいだけど、じきに目を覚ますわ。」
「目を覚ま…え…?」
その様子を見て安心したように国王も口を開く。
「それはお主の父が戦いに行くとき、私に預けて行った物だ。もしもマモリがこの国を出て行くことがあれば、渡してほしいと。」
聖剣イージスに続き、またしても父の遺品。マモリは胸元のペンダントを見つめ、さっきの感覚は父の魔力が残っていたのだと思った。
「それで…これってどういう物なの?」
「ガメイラが目を覚ました時に、きっと教えてくれるわ。ただ一つだけ言っておくと…そのガメイラは知識と記憶の塊のようなもの。」
そういった母の目には少し涙が溜まっていた。それが珍しかったのか、マモリはどうしていいかわからず、黙ってしまう。
「マモリよ…すぐに行くのか?」
国王の言葉ではっとする。
「え?ああ…そのつもりだよ?じゃないと追い付けないかもしれないから。」
「な!本気か、マモリ!?外は危険が…」
「ジード!!!」
慌てる王子様を国王が静止する。
「お前の気持ちもわかる。だがこれも運命なのだ。」
そんな大袈裟な…。
マモリはそう思いながらも回りの事の運びに圧倒されてつっこめなかった。
マモリは軽くあの老人を捕まえて、呪いをといてすぐ帰るつもりなのだから当然である。
今度は侍女がきらびやかなドレス等、たくさんの服を持って来た。
「持って行くがよい。フルアーマーの魔空間に入れておけばいくらでも持っていけるのだろう?」
「え!…いらないよ!すぐに戻って来るんだし…」
「まあいいじゃない。もらっておきなさいよ、マモリ!もし本当に要らなくなったら私が貰うから。」
そう言ってアイリは勝手に服を受け取った。
「…わかったよ。」
マモリも仕方なくフルアーマーの魔空間を開き、その中に服を入れていく。