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フルアーマー ・クロスドレス  作者: 夢一
1章 女装英雄
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呪われたマモリ

<暗い部屋>


 スタートロイから数百キロの地点。とある場所のとある部屋。

 部屋を暗くし、ベッドの中で話す怪しい男女。


「あのジジイ、大丈夫かしら?」

「心配ないさ。ああ見えても呪術師としては一流だし、頭もきれる。ただ心配なのは…変態だってことだ。」

「ふふ、アレス様だって…変態ですものね。」


 蠟燭の灯に照らされて、2人は唇を合わせる。


「あの力…フルアーマーだけは…放っておけんからな…」



**********


<スタートロイ…城下町>


 首を切られた巨大ババロンは、地面に落ちるかと思ったら黒い泡のようになって消えていった。


「これは…作られた命だったのね…」

 アイリはこの魔法について知っているようだ。


「母さん、知ってるの?」

「ええ、これは黒魔法よ。きっとこのあたりのババロン全てを合成させたんだと思う…。」

「そんな…誰がそんなことを!!?」


「は~可愛い顔してすごい力を持っているのぅ…」

 2人の会話に割って入ってきたのは逃げ遅れた様子のおじいさんだった。


「な!大丈夫ですか!?」

 怪我をしているらしく、動けないようだったので、マモリが急いで駆けつけると…

 母アイリが声を上げる。


「マモリ!待って!!」


「え?」

 母の声を聞いたときマモリはその老人に肩を貸そうとするところだった。


「ほほほ、ありがとう。お嬢ちゃん。」

 マモリのことをお嬢ちゃんと呼んだその老人は、マモリの腕をつかみブツブツと聞こえない声で何かを囁きだす。

「おじいちゃん…オレ男なんだけど…」


「マモリ!離れてっ!!」


…ドクン!!


 心臓が跳ね上がるような感覚をマモリは感じた。

 そう感じた瞬間、マモリの来ていた服が全て弾けとび、マモリは全裸になってしまった。


「…え?」

 訳がわからず、あっけにとられるマモリ。

 老人はあっけにとられるマモリを置き去りにし、平然と立ち上がる。どこからか杖を取り出し、杖の上にスケートボードのように乗って宙に浮いた。


「うまくいったわい。呪いは直接体に触れなければかけられんからのぅ…。」

 さっきまでの弱々しい雰囲気とはまるで別人だった。楽しそうに、また不気味に喋る。

「呪い…?」

「そうじゃ…フルアーマーの魔導師よ。貴様の中に眠るゼウの武具。それらを全て使えなくする呪いじゃよ。」


「え…?」

 マモリは信じられないことを言われ、理解するのに時間がかかっていた。

 マモリにとってフルアーマーの魔法とその武器や防具は父の形見でもあったため、その衝撃は大きかった。


「貴様は気づいていたみたいだな。女よ…」

 老人はカイリの方に意識を向け、細い目をさらに細める。

「…今この街でマモリの存在や魔法を知らない人はいないのよ。それにあなたからはまだ魔力が感じられるわ。さっきの巨大ババロンもあなたの仕業ね?」


 アイリは最初から違和感を感じていながらも、息子のマモリをみすみす老人に近づけてしまった悔しさにいらだっていた。


「その通りじゃよ。まああれはフルアーマーの力を見るための余興にすぎん。」


「余興?あんなことしておいて…よくもそんな!」


「ふふ…今はそんなこと言ってる場合かのぅ?」


 そう言われてアイリははっとしたようにマモリのもとに駆け寄る。

「…マモリ?」


「フルアーマー・真空剣!」

 その呪文でマモリは一瞬緑色に輝く。しかし輝きがおさまってもマモリは全裸のままだった。


「フルアーマー・滅龍剣!」

 さっきと同様体は光る。しかし鎧を装備することはできなかった。


「フルアーマー・破邪の槍!」

 魔除けの武器を召喚しようとしても結果は同じ。


「…そんな…」

 茫然とするマモリ。

「…どういうこと!?フルアーマーはあの人がマモリに与えた絶対魔法のはずよ。呪いなんかでどうにかなるわけがないわ!!」

 アイリも信じられないというように、またマモリの気持ちを代弁するように、老人を問いただす。


「わしの呪術をもってすれば、いくら英雄ゼウの魔法であろうと呪える…と言いたいところじゃが、それは無理じゃ。なのでその少年自身を呪わせてもらった。」


「マモリを…?どういうこと!!?」


「ふふふ…それはの……男物を装備できなくなる呪いじゃよ。今あのフルアーマーで呼び出せる強力な武具のすべては英雄ゼウのものであろう?ゼウは男…しからばその装備は全て男物ということになるであろう?」

 老人の言葉はまるで変質者のようで、不気味な笑いが混ざっていた。


 その言葉にあっけにとられるアイリ。

「…なにそれ?じゃあマモリは男の子の服が着れなくなっちゃったの!?」

 それは間違いなく、わが子のかつてないピンチだった。


「そういうことじゃ。」


「そんな…変態か!」

 さっきまで全裸で呆然としていたはずのマモリが大きな声をあげる。

 悔しさよりもありえなさに対するつっこみのようだった。


「変態じゃ。」


「返せよ!魔法も装備も全部父さんの形見なんだぞ!?」

 後から悔しさが増してきたのか、涙目になっている。


「別に奪ったわけではないぞ。魔法も装備もお主の中に残っておるからのぅ。」


「う…じゃあこれから一生…冬でも全裸で過ごせっていうのかよ!!?」


「わしも鬼じゃないからのぅ…そうならずに取り計らってやったんじゃ。」


「…は?」

 それがどういう意味かもわかっていながら、信じたくないという気持ちで問い詰めてしまう。


「女子の物なら着れるということじゃ。…これからは少女として生きていくがよい。フルアーマー…ゼウの子よ」


 突きつけられた現実に、マモリはショックを隠しきれなかった。


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