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フルアーマー ・クロスドレス  作者: 夢一
1章 女装英雄
3/55

巨大ババロン

<スタートロイ…マモリの家>


「…母さん、今何か凄い音しなかった?」

「ん~…ドラゴンでも暴れてるんじゃないの?」

 アイリは夕飯の用意をしながらマモリを適当にあしらった。


「この辺にドラゴンはいないだろ…」

 マモリは腑に落ちないと感じつつも、とりあえず気にしないようにした。


「それよりマモリ~、ちょっと卵買ってきてよ!」

 手がはなせないからと言うようにマモリに頼む。ずっと2人暮らしをしているため、こういう時のお使いくらいはマモリにとって当たり前だった。


「わかった。ちょっと待ってて!」

 マモリはそういいながらパッと準備して家を出た。


「……うわぁぁ!!!」

 突然大きな声をあげるマモリにアイリも駆けつける。

「マモリ!どうしたの!?」


 そこには見たことない大きさのババロンの姿があり、今にも街を襲わんとしていた。


「何あれ!?」

「ババロンだよ!あんな大きさ…見たことないけど…。オレ行ってくる!」

 信じられない巨大さのババロンに驚きつつも、マモリは急いで街の方に走った。


「マモリ!母さんも行くわ!」

 異常事態だと確信したのか、アイリもマモリを追って街に向かった。


「母さん…危ないから家にいなよ!」

「何言ってるの?私だって魔法使いとしては有能な方なのよ!」

「知ってるけど…!」


**********


<スタートロイ…城下町>


 突如として現れた巨大ババロンにより、街はパニックになっていた。

 王国兵士を筆頭に戦える者は前に出て巨大ババロンを攻撃している。巨大ババロンも大きな傷はつかないものの、動きづらいようだ。


「なんて大きさだ…」

「怯むな!足を狙え!」

「戦えない者は早く城の中に!」

「魔法が使える者は動きを止めてくれ~!」


 小王国スタートロイは、近隣そう強い魔物もおらず、貴重な資源もない小さな国だった。それゆえ戦争などに巻き込まれることもなく、長年平和を維持していた。

 だからこのような大型の魔物など相手は不慣れなのだ。


 上空からその様子を見る黒ローブの老人。

「ふぇふぇふぇ…町が危ないぞ…フルアーマーの少年よ…早く助けにこんか……そしてまたあの魔法を見せてくれ。」


**********


<スタートロイ城>


「ええい!どうにかならんのか!?」

 そう吠えているのはこの小王国を統治する痩せた体に髭をはやした男、スタートロイ王だ。


「国民のほとんどは場内に避難しました。ですがあの魔物自体はどうしようも…」

「この国の戦力はあのような大型の魔物に対応していませんから…」


「言われんでもわかっておるわ!…それでもどうにかせんと国が滅ぶだろう!」


「しかし…」

「…あのフルアーマーの少年…マモリが来れば…!」

 常に王のそばで知恵を貸しているはずの大臣も今回は弱気だった。

 マモリはこの国で最も強い力をもっている。そのため国の人間はどうしてもマモリを頼りにしてしまう。


「バカ者!一人の少年に頼るな!ここはおまえたちの国でもあるんだぞ!!?」


**********


<スタートロイ…城下町>


 マモリたちが巨大ババロンの足元についたとき、兵士や街の人たちは傷だらけになりながら城に逃げて行くところだった。


「母さん!オレは空から一気にやるから足元で注意を引いて!」

「わかったわ」


 巨大ババロンも2人の存在に気付いたようで、その大きな翼を羽ばたかせ、地面を蹴った。

 強い突風が起き、2人はよろける。


「く…フルアーマー・滅竜剣!」


 マモリが呪文を唱えると、今度は黄色に輝き、先刻の鎧とは別の鎧を身につけた。

 全身に爪のような装飾、紫に輝くその鎧はどんな衝撃にも耐えれそうだ。一番の特徴は、ドラゴンのような翼がついていたことだった。剣は巨大なのこぎりのような形をしている。


 マモリはその背中の翼で空に向かう巨大ババロンを追いかけた。

 巨大ババロンは追ってくるマモリを迎撃しようと、手を大きく振り下ろす。

 それをぎりぎりのところでかわすマモリ。


「アローレイ!!…マモリ!気をつけて!」

 アイリは自分の息子に攻撃が当たらないように魔法の矢を打った。

 光の矢がまっすぐ空中の巨大ババロンに向かっていく。

 アイリのの打った矢は見事に巨大ババロンの目をとらえた。


「ギァァ!」


 巨大ババロンは体制を崩して高度を下げた。

 そのままマモリはその巨体を抜き去り、頭の上で剣を構える。


「ハァァァァ!」


 マモリは剣を構えたまま急降下し、巨大ババロンの首を切り落とした。


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