決勝戦…?
<闘技場・本戦リング上>
「さあさあ!間髪入れずにいきますよ!続いて準決勝2回戦!開始!!」
リングの上にいる男の一人はジャンだ。
試合が始まるなり対戦相手に指を指している。
「おいお前!さっきの一回戦は見ていたか?」
ジャンの対戦相手は体が3メートルは越えているだろう大男だ。その筋肉は牛一匹を片手で持ち上げられそうなほどだった。
そんな男がジャンの質問に答えている。
「あ?おぉ、見ていたぞ?」
「あの試合で勝利したマモリというのは、俺の大事な人だ(強さを求める意味で)!」
「は?ああ…そうなのな…?」
突然何を言ってるんだと、会場が静まりかえっている。
「俺は早く…あの子とやりたい(闘いたいという意味で)!!」
「はぁ!!?…や、やりたいのか(性的な意味で)!!?」
会場だけでなく、審判も開いた口が塞がらず、また実況するのもわすれてしまっている。
「だから…」
「…だから?」
「お前は邪魔だっ!!!」
「なんで!!?」
大男がその言葉を言い終える前にジャンは大男の首を絡めとり、その太いのど元に膝を3発打ち込んだ。そのまま背後に回り、足の付け根を思いっきり突く。
最初の攻撃で意識が飛びそうになった大男はなすすべなく後ろに仰け反る。
ジャンは最後に仰け反った大男の額にとびきりのかかと落としをおみまいした。
そのまま倒れて意識を失う大男。
「…っあ…ジ、ジャン選手の勝利です!!!
最初の発言から最後のかかと落としまでぶっ飛びすぎていて、私もついていけませんでした!!ジャン選手、決勝戦侵出です!!」
オォォォオ!!
<闘技場・観客席>
「お前…どっちが勝つと思う?」
「そりゃあジャンだろう!さっきの勝負見たか?あの圧倒的強さ!」
「お…俺はあのマモリって子を応援する…!」
「俺もだ…何だろう、この気持ち…可愛いからとは違う…」
「わかるぞ!これはそう…萌えだ!」
「ジャン様ー!絶対優勝よー!」
「でもあのマモリって子も結構可愛いかも…。私あの子応援しようかな?」
「はぁ!?ジャン様をたぶらかすイモ女じゃない!」
「あれ…?そう言えばブライはどこ行ったんだ…?」
「そう言えば予選の映像にも映ってなかったな…」
「そうだ!俺はジャンとブライの対戦が見たかったのに!!」
観客席では決勝戦が始まるまでの間、観客たちがざわめき続けていた。
「ふふふ。楽しみだわ!」
「ラミアよ…お主はこの大会をどうしたいのじゃ?」
「別に、ただせっかくこんなに人が集まってるのよ?もっと盛り上げなくっちゃ…」
**********
<闘技場・リング上>
「お待たせしましたぁぁ!!!それでは本日のメインイベント!言うなればここまではただの余興!!武闘大会決勝戦をぉぉぉぉ始めまぁぁす!!!!!」
オォォォオ!
「その拳の強さは鬼神のごとし!心技体を備えた男!おっと心の方は大丈夫か?先の試合で大胆告白してくれた…この大会の優勝候補!ジャン選手ぅぅぅ!!」
ジャンが大きく跳び、リングに派手に登場する。観声も凄かった。
その様子から、このリングに何度も立ってきたことがわかる。
「そして突然現れたスーパールーキー!この美少女が決勝まで来ると誰が予想していたか!?できるなら私と付き合って下さい!!マモリ選手ぅぅぅ!!」
マモリは普通にリングに上がった。
相変わらずの大袈裟な紹介で恥ずかしくなり、顔を上げられないでいる。
「さあ…この2人、どちらご強いのか!?いや、それよりこの2人、どんな関係なのか!!?それでは決勝戦…始めぇぇ!!」
会場全体が興奮状態になる。
だがマモリとジャンの雰囲気だけは興奮状態とはいえず、静かすぎるくらいだった。
「やっとおまえと闘える時が来たな、マモリ!」
「…オレはあんたとは闘いたくなかったんだけど…できれば楽に優勝してさっさと終わらせたかった…」
「何っ!!?マモリは俺と闘いたかったんじゃないのか!??」
「オレはただ賞金が必要なだけだよ…」
「そうなのか…まあどっちでもいいさ!」
ジャンは少し落ち込んだようだったが、すぐに気を取り直した。
そして高く…それはもう高く高くジャンプした。自分の身長5人分くらいはジャンプした。
「俺を倒さないと賞金はもらえないんだからな!!」
「キターーー!!ジャン選手お得意の空中殺法だぁぁぁ!」
マモリは上空を見上げジャンの攻撃に備える。
その時だった…
ドゴォォォン!
「キャア!!」
「おわあぁ!」
突如マモリの入場してきた方の入口から爆発音が聞こえた。
いや、本当に爆発したのだった。
その近くに座っていた観客の何人が爆発に巻き込まれたようだった。
「な!!?これはいったい何が起ったのでしょか!!?」
審判にも想定外の出来事だったようで、かなり慌てている。
慌てているのはもちろん審判だけではない、他のスタッフ、観客たちも大慌てだった。
当然ジャンは着地して動きを止め、爆発した方を見る。マモリもそうだった。
爆煙が少しずつ晴れていき、一部粉砕している闘技場の石造りの中から大きな影が現れた。
次第にその影ははっきりとその姿を確認できるようになっていく。
「…何…あれ…!?」
マモリはその影の正体がはっきり見えても、それがなんなのかわからないでいる。
それは人間のような形をしていた。
頭があり、顔があり、髪があり、その下には首、体、足があった。
しかし腕は4本あり、肘の部分から紫色になっている。足はあるのだが、明らかに体の大きさに比べて大きすぎる。筋肉が発達しているというレベルではなかった。
一応、布を、巻いたように服は着ているようだ。
「きゃーー!!」
「魔物だぁ!!?」
会場が一気に混乱する。
確かに魔物と言えなくもないが、それはあまりにも人間に近すぎる姿をしている。
その生々しさが、さらに恐怖を煽っていた。
会場から逃げ出す者もいた。
「なななななな何だあれはーーー!!こんなのが出るなんて私聞いておりません!!」
人間のような何かは上を向き、大きく口をあけた。まるでうがいでもしているかのように。
次の瞬間、そいつは前を向き、口から光線を出した。
マモリとジャンの間を通って反対側の客席に当たる。と同時に、その客席で大きな爆発が起きた。
「っ!!!」
「ビーーームだぁぁぁ!口からビーーーム!!信じられません!この会場内にあんな化け物の侵入を許してしまうなんて!!どうなっているんだぁぁ!!?」
さらに混乱が大きくなる。ほとんどの観客が自分の身に危険を感じ、会場から避難しようと出口に向かっている。
そのため出口はつかえ、観客たちは団子状態だ。
そいつはその団子に標準を向け、またうがいの体勢に入ろうとしていた。
「まずい!またっ!!」
「マモリちゃん、これはかなりマズイわよ!?私の知識の中にもあんな魔物の情報はないわ!!」
「それって…」
「とにかく止めなくちゃ!」
「…わかってる…あんたも手伝ってくれ!!」
マモリはジャンの力が必須だと思い呼びかけた。だがジャンはそいつを見て固まっている。
「…ブ…ライ…?」