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フルアーマー ・クロスドレス  作者: 夢一
2章 武闘大会
12/55

使用禁止

 少女が言うには今回の大会の賞金は100万マネィらしい。ちなみにマネィというのはこの世界の通貨だ。

 それはもう、治療費を払ってもお釣りが来る額。


「武闘大会か…ってこれ、武器の使用禁止じゃん!!」

 闘技場に貼ってあるチラシを見て、マモリはがっかりする。内容は拳や脚、自分の肉体だけを使ってバトルする武闘大会だった。

 元々マモリには格闘する力も技術もないし、戦闘力が上がる装備も今はイージスだけだ。


「大丈夫、あなた強いでしょ?さっきの動き、凄かったもの。それに女の子なんだからきっとみんな油断するわよ!」

「ははは…(女の子じゃないんだけど…てか生身じゃすごく弱いし…)」

 実際は女の子ではないのだが、ミニスカートで自分は男だと言っても変態扱いされるだけだと思い、この場は黙っていた。

 それはその少女が可愛らしい子だったためでもある。

 そんな感じで、結局明日の武闘大会に参加することになってしまった。


「私はラミア。じゃあ明日この場所で会いましょう。」

 ラミアと名乗った少女はそのまま走り去ってしまった。


 残されたマモリは大きな溜め息をつく。

 もともと黒ローブの老人を追って来ただけだったマモリは、これだけ面倒なことに巻き込まれるなんて思っていなかったのだ。


「…はぁ、何でこんなことに…」


***********


<ウォーロッセオ・武器防具店>


 闘技場で有名な町だけあって、店には結構お客さんが入っていた。


「えぇ、ないの!?」

「ごめんね。でも女の子でも装備できる格闘用のグローブなんて聞いたことないからねぇ。」


 明日の武闘大会は武器の使用禁止。そのためマモリは素手と認定される武器を探さなければならなかった。

 格闘用の武器でフルアーマーを使えば、マモリは格闘の達人になれるからだ。

 むしろそうしないとマモリに勝ち目はない。


「うぅ、これじゃ大会に出れないよ…」

「そもそも出る必要ないと思うけどね。マモリちゃんは人が良すぎよ。…それに確かに素手の女性用なんてなかなかないわよ。少なくとも武器やとかには…」


 半べそかきながら店を出ようとすると、ガタイの良い青年にぶつかった。


「あ、すみません!」

「…いや。」


 マモリは小さくお辞儀して店を出て行った。


 マモリとぶつかった青年は不思議そうにマモリが出て行く様を見送った。


「(…可愛い子だな…あんな子がなんでこんな所に…?)」


「ジャン!例の物仕上がってるぞ!」

「あぁ!サンキュー!!」

 ジャンと呼ばれた青年は店長から頼んでいた品物を受け取った。


 店長が青年をジャンと呼んだ途端、周りがざわめきだす。

「…おい、ジャンだ…」

「本当だ…やっぱり明日の大会の…」

「こりゃ明日が楽しみだぜ…」

「あぁ、特にジャンとブライのカードは絶対見逃せねえ!」


 店内で自分のことでざわめきが起こるが、ジャンはそれを気にも留めず店長との会話を進める。


「衝撃吸収ボディスーツ!打撃ダメージを和らげる他に耐火性・保温性にも優れておるぞ!」

「ああ!さすがだな!これで明日は思いっきりやれる!…ところで店長、さっきの女の子…明日の大会に出るみたいなこと言ってたけど…なんなんだ?」

「あ~、なんでも明日の武闘大会に出たいそうでな、女性用の素手装備品を探してたんだ…。うちにはそんな物のないって言ったら出て行ったよ。まああんな娘が大会に出るなんて無茶だ……出ても予選ですぐ落とされるだろうしな。」

「…ふ~ん…あんな可愛い子がねぇ…」


 ジャンはもう一度、マモリの出ていった方向に目を向けた。


**********


<ウォーロッセオ・武器防具店外の小道>


「…どうしよう…フルアーマー使わずに出たら俺なんて一瞬でやられちゃうよ…きっと首ねっこ掴まれてキュッっとかいってそのまま捻り殺されちゃうんだ…」


 涙目になってとぼとぼとアテもなく歩く。軽い男なら確実に声をかけているだろう。


「大丈夫よ。あそこの大会は今は殺しご法度のはずだから。」

「昔だったら殺されてたかもってこと!!?」

「まぁ、それにその場合は予選で落とされて終わりだから。もう諦めたら?」

「う~…でもあのラミアっていう女の子と約束しちゃったし…母さんも女の子との約束は絶対守れって言ってたからなぁ…」

「(…アイリなら言いそうね…)でもそんな格好で出たら、屈強な男たちに慰みものにされるわよ?」

「なぐさっ!!それだけは嫌だ~!!」


 すっかり弱気なマモリをからかうガメイラ。

 そこにさっき出てきた店から男が追って来た。


「おーい、お嬢ちゃん!」

「…」

「…マモリちゃん、あなたのことだと思うわよ?」

「え?」

 ガメイラに言われるまで、その呼び掛けが自分のことだと気づかなかった。


「…何か用?」

「あぁ、君、女の子用の格闘グローブなんかを探してるんだろ?さっき店で店長と話してるの聞いちゃったんだ!」


 結局男に声をかけられてしまうのだが、その男はとても優しそうな顔立ちをしていた。


「それならこの通りの先にあるリキュールって酒場に行くといいよ。そこの女マスターが格闘オタクでさ、何か持ってるかもしれないよ?」

「え!?本当に!?」

「ああ、日が暮れたら店開くから、行ってみなよ。」

「はぁぁ、ありがとうお兄さん!」

マモリは目をキラキラさせ、男に抱きつきそうになった。


**********


<ウォーロッセオ・酒場リキュール>


 日が暮れた頃、マモリは言われた酒場へ来てみた。


 その酒場は町の中心部からはかなり離れた所にあり、人通りもほとんどない場所にあった。


 マモリはまだ16歳。お酒を飲める年齢ではないし、酒場なんて場所もスタートロイで母に付き合わされて行ったことがある程度。

 一人で入るのは初めてだった。


「ここか…なんか緊張するな…」

「マモリちゃんが…明日を待たずして野蛮な男たちの慰みものに…」

「変なこと言うな!!」


 ガメイラに突っ込みを入れつつ、その存在が一緒にいてくれると思うと、マモリは安心できた。


 そして酒場リキュールの扉を開く。


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