英雄の息子マモリ
男の娘主人公で本格的な冒険ファンタジーを書いてみたいと思って書いています。
結構長いので、しおり挟んだりしながら読んでくれたらいいかと思います。
読んでくれた方、感想・意見・評価などくれると、すごく嬉しいです。
15年前、世界は一度魔物に支配されかかった。
だが一人の男が命をかけてそれを阻止した。
男は最強の魔法『フルアーマー』を駆使し、邪神アスモデウスを倒した。
世界に平和がおとずれた。
そして現在…
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<小王国・スタートロイ>
「きゃーー!!!」
きぬを裂くようなありきたりな悲鳴が小さな城下町に響く。
街中をいつものように歩いていたその女性は、突然空から現れた人でも動物でもない生き物に驚いたのだ。
「ババロンだ!」
「またか!最近多いな!」
「と、とにかくあの娘を助けないと!」
近くにいた大の大人たちがしどろもどろになりながら空から現れた存在を威嚇する。威嚇と言っても石を投げたり程度だが。
ババロンと呼ばれたそれは、さながらプテラノドンのような姿をしていた。
大の男より一回り大きく、槍のように尖った口と牙。翼には羽毛などはなく、薄い皮だけ。足には鋭い鍵爪。プテラノドンと違うのは、翼の他にも人間のような手が生えていることだ。
これが近頃スタートロイの街を騒がせてる魔物である。
「早くしないとあの娘が!」
魔物に立ち向かうのに躊躇する大の大人たち。
そこに…
「…まあ待ちなよ」
ピンク色セミロングの髪をなびかせ、余裕の笑みを見せながらいかにもケンカに弱そうな線の細い少年が男たちの前に出た。
はっきり言って少女にしか見えない。そんな少年が。
無地のTシャツにハーフパンツ。少年さながらのその格好でババロンを見据える。
「おお!マモリ!」
「マモリちゃん!」
「いいところに来てくれた!」
「いつものあれ頼むよ!」
「わかってるよ!…待っててよ、そこのお姉さん!」
言うなり少年は生身のままババロンに向かって駆けていった。
「フルアーマー・真空剣!!」
そう叫んだ、いや、唱えたマモリの姿は、一瞬緑色に輝いた。次の瞬間には胸元から肩にかけて贅沢な装飾のあしらわれた強そうな鎧。肩からはマント。
マモリは西洋の甲冑を豪華にしたよな鎧を身に纏ってさらに勢いを増してババロンに突っ込んでいく。
そして、その手にはさっきまでなかったはずの大剣が握られていた。
どれもマモリという少女じみた少年には全く似つかわしくない装備である。
当然扱えるはずがない、動くことさえできないだろうと思ってしまうくらいの、大した装備だ。
「ギギッ!」
危険を察知したババロンはすぐに女性を諦め飛び立った。
「逃がさないよ!次またいつ襲いに来るかわかないからな!」
マモリはその手の剣を大きく振り上げ…
「ハァーーー!!!」
振りおろした。
ビュゥゥゥン――――――――
降り下ろされた剣から真空波が生じ、直線軌道でそのままババロンの体を真っ二つにしてしまった。
切断されたババロンの体はそのまま森の方へ落ちていく。
なんともむごいことだが、魔物は動物よりも強大で、平気で人間を襲う。やらなくてはやられてしまうのだ。後にその肉は森の動物や魔物によって食べられるのだろう。
「…ふう」
「おおおお!」
「やったー!さすがマモリ!」
「風の剣だ!かっこいい!!」
「いやぁ…最強の魔法フルアーマー、いつ見てもゾクゾクするな」
「あの変身っぷりもすごいけど、すごいのはやっぱりあの武器と鎧さ!」
「ああ!英雄ゼウが残した天下無双の武具だからな!」
「いやいや…それをああして自在に操るマモリが結局一番凄いんだって!」
当人のマモリを差し置いて勝手に盛り上がる一部始終を見ていた街人たち。マモリはそんな光景に慣れっこだった。
「マモリ…ありがとう。」
「え!?いや、いいよそんなの!」
お礼を言う女性に対して照れ隠しで答えるマモリ。見た目がどうであれ、心は思春期の少年。女性からそう言われてうれしいのは当たり前。
「それより怪我とかない?」
照れ隠しである。
「ええ、大丈夫よ。お陰様で。それより本当にすごい魔法ね。世界中のどんな装備でも使いこなせちゃうんでしょ?伝説の武器だって…」
「うん。ていっても父さんが魔法と一緒に残してくれたやつだけだけどね。」
「それでも十分よ。マモリは十分すぎるくらいこの街と私たちを守ってくれてるわ。」
「やめてよ!…照れる。」
照れが隠しきれなかった。
さっきまでの自信はどこにいったのか、真っ赤になるマモリ。
英雄ゼウ。つまりマモリの父の活躍により世界が魔物に支配される危機は去った。
だがまだ魔物は統制を失っただけで、人の驚異としては存在しつづけている。
マモリは父から授かった魔法『フルアーマー』の力で、微弱ながらもこの国を守っていたのだ。それは特に誰かに命令されたからでも、兵士にとして働いているからでもない。父の意志を継いでいるつもりでの行為なのだ。
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「やはりここじゃったか…フルアーマーの魔法…」
褒められ喜ぶマモリと、またそれを見て嬉しくなる街の人々。
そんな光景を上空から見届け、不適に笑う影があることに、まだ誰も気付いていなかった。
そしてこのあと、マモリの男として人生を変えてしまうようなことが起きてしまうことも。
誰も気づかなかった。
とりあえず1話でした。どうでしたでしょうか。
といっても、まだ女装もしてないし、大した敵も出てきてないじゃんって感じですよね。
まあそれもすぐに出てくるので、気長に読んでみて下さい。