二人だけの放課後
放課後の校舎は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。私は机の上に教科書を置き、心の中で少し緊張していた。今日もまた、偶然ではなく、少し特別な理由でSと二人きりになる。胸の奥で、甘くざわめく感情が止まらない。
「A、ちょっとここで待ってて」
Sの声に振り返ると、昨日の柔らかい笑顔とは少し違い、ちょっと照れくさい表情を浮かべたSが立っている。私は自然と頷き、少し胸の奥で高鳴る鼓動を感じながら、その場に立つ。
Sは机の下から何かを取り出すと、私の前に差し出した。見ると、折り紙で作られた小さな花。
「……これ、昨日のこと、ちょっと謝りたくて」
Sの声は少し恥ずかしそうで、それが胸に刺さる。思わず手を伸ばして花を受け取ると、指先がSの手とわずかに触れた。偶然のようで必然のようなその瞬間、胸が甘く締め付けられ、鼓動は止まらない。
「ありがとう……S」
私は微笑みながら、胸の奥でじんわりと温かいものを感じる。Sも少し顔を赤らめながら、私の目を見つめ返す。その視線に、心がぎゅっとなる。触れられない距離でも、確実に心は近づいている——その実感が胸に響いた。
「せっかくだから、一緒に少し歩かない?」
Sの提案に、私はすぐに頷いた。廊下を並んで歩くと、偶然とは思えない微妙な距離感が心地よく、胸の奥が甘く痛む。風が二人の髪を揺らし、夕陽が長く伸びる影を二人の足元に作る。
歩きながら、Sがふと小さく笑った。
「昨日のこと、気にしてた?」
その問いに、私は少し息を呑む。胸の奥で、昨日の誤解やすれ違いを思い返す。しかし、今の距離とこの瞬間の温かさで、すべてが柔らかく溶けていく。
「うん、でも……今は大丈夫」
私は正直に答え、Sの目を見つめる。Sも小さく頷き、微笑む。触れられない距離なのに、心は確実に手を取り合っている感覚があった。
放課後のわずかな時間の中で、Sとの距離は昨日よりも確実に縮まった。偶然の触れ合い、ささいな言葉、そして互いの心の気配——それらすべてが胸に甘く、切ない余韻を残す。
夜、布団に潜り込み、天井を見つめながら、私はそっとつぶやく。
「Sのそばにいると……心が甘く揺れる。明日も、もっと近くにいたい」
甘く切ない二人だけの放課後が、胸の奥で熱を帯び、恋心をさらに深めていくのを感じていく。




