# 1. 不要
「ーーよって、阿部一行を《魔法界永久追放》とする。」
冷えきった大広間に響いた、淡々とした宣告。
王座に座る長老達はこちらを1度も見ようとしない。
まるで最初から存在していないかのようだ。
「ちょっ…ちょっと待ってください!永久追放なんて…冗談ですよね!?」
真っ先に声を上げたのは、STELLAこと星科 芹。
この魔法界では、他人のことは本名と異なる異名で呼ぶ決まりがある。
永宮琉那はSTAR、霜月雅はMOON、阿部佑亜はMETEOR、そして星科芹がSTELLA。
異名は人によって異なるが、階級によって文字数に制限がかかる。
優秀な勇者一行は「異次元の流星」や「革命の焔」など洒落た名前を名乗る人が多い。
芹に返ってきたのは、ため息混じりの失笑だった。
「冗談だと?まさか、君達は魔法界の恥だ。」
「勇者パーティーでありながら功績はゼロ、魔力値も低く戦力も平凡。存在価値のないパーティーだ。」
否定に留まらず次々と言葉が浴びせられる。
(功績が、ゼロ…?)
確かにとどめを刺すのはいつも先輩パーティーだった。
だが、状況判断や回復、攻撃力のバフなど戦闘における全ての面を担っていたのは自分たちだった。
強力な一撃でとどめを刺す優秀なパーティーだけが賞賛され、自分達のことは誰一人として評価してくれなかった。
「私達が、弱かったから…?」
雅が震える声で静かに零した。
「弱いのではありません、」
「不要なのです。」
座っていた長老のひとりが立ち上がって告げた。
彼らの話を黙って聞いていた琉那が、その瞬間に1歩前に出た。
「ふざけないで。」
いつもよりも低く、はっきりとした声。
「私達は確かに目立たなかった。それでも、私達がいなかったら勝てなかった戦いもあったはずよ。」
「私達は、彼らと一緒に戦った、勝った。その活躍を無かったことにするつもりなの!?」
誰一人として、琉那の必死な訴えに耳を貸そうとしない。
その代わりに床に魔法陣が現れ、眩い光で琉那らを下から照らす。
「ちょっと!何をする気!?」
「ほんとに永久追放するんじゃないだろうな…!?」
動揺する琉那と佑亜に、長老が言った。
「永久追放とは、”二度と魔法界に戻れない”という意味だ。送信先は現実世界。」
その言葉を最後に、魔法陣が輝きを増し、全員の姿を覆い隠す。
「…っ!?」
「いやぁ…!!」
意識が朦朧とする。足元が崩れ、宙に浮いているかのような感覚。
4人の意識は、完全に魔法界から引き剥がされた。
目が覚めると、琉那は足元の固い感覚を感じた。
空は雲ひとつない快晴で、辺りを見渡しても、見慣れない形の高層ビルが並ぶばかりだ。
目の前を通り過ぎるのは、魔物でも勇者でもない、車や自転車。
「ここは……」
「現実世界、見たいだね…」
琉那の独り言に真っ先に反応したのは芹だ。
どうやら全員同じ場所に送信されたようだ。
少し後ろをむくと、雅が立ち上がってスカートに着いた汚れを払い、佑亜は着たことのない服に驚き、手元を何度も確認している。
とりあえず進もう。そう思い歩き出した瞬間、何かを踏みつけた。
固い機械のような形状のものだ。
恐る恐る手に取ると、それは魔法のスマホだった。
「ねぇみんな、魔法が残ってる。」




