(7.5)アイビー視点
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「……お前があいつと一緒に暮らしてる理由、ちょっとわかった」
……ひと通りの訓練を終えての休憩のさなか、アイビーに近づいてきたルークはやにわにそんなことを言う。
それは、ほとんど独りごとに近いようなつぶやきにも聞こえたが、一応はアイビーに聞かせるつもりで言ったらしい。
どちらかと言えば頑固な跳ね返りという印象のあるルークの、珍しくしおらしい態度にアイビーは思わず笑ってしまう。
「浮気?」
ルークが恋人と長く付き合い、どうにか彼女の家族を説得して同棲に漕ぎつけた経緯を知っているアイビーは、彼に浮気願望などないことを知りつつも、悪戯っぽく茶化した。
「そんな気はない」
案の定、ルークからはバッサリと切り捨てられたが、アイビーは意に介した様子はない。
「けど……あんまりにお人好しすぎて心配にはなる」
「誤解がとけたようでよかった」
アイビーがそう返せば、ルークは気まずそうな顔を作った。
ふたりの話題に上がっているのは、もちろん乃々花のことである。
乃々花と同棲――ほぼ同居のていだが――しているアイビーは、したり顔にも似た表情でルークを見る。
「なんだか誤解されやすいんだよね、あの子。まああの子の本当の姿を知っているのは私だけでいいという気持ちと……みんなにもちゃんと知ってもらいたい気持ちと、二つの心があって困るんだけど」
ルークはわかりやすく「やだなあ」という顔になる。
「……あいつには、同情する……」
「どういう意味かな?」