表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウル・パンツァー!  作者: しんとき
雨の森編
7/26

炎のライトリッヒ

ジェリースカイを倒した俺とフリモアは、ハルカとフーガの援護に向かうため土砂降りの森を急ぐ。

「マスター、先ほどの戦闘で体力を消耗しています。

 これ以上の激しい戦闘にはお気を付けください」

ソウル・パンツァーは人の精神をエネルギーとする。

俺が無理をすれば困るのはフリモアだ。そこは気を付けないと。

「私のことを考えてくださってありがとうございます」

「...もしかして、頭の中で考えてること、全部伝わってる?」

「はい」

ソウル・パンツァーは頭の中のイメージで操作する。

それはつまりフリモアに頭の中を見られているということだ。

先ほどの戦闘では結構恥ずかしいことを頭の中で考えていた気がする。

とたんに恥ずかしくなり顔が赤くなる。

「恥ずかしがる必要はありませんマスター。

 フリモアは嬉しかったですよ」

「う、うるさい!とにかく急ぐぞ!」

こちらの感情がフリモアの力になる以上、戦闘中に無心でいるわけにもいかない。

つまりこれから戦闘の度にフリモアに心の中を見られてしまうのか...

これからのことに思い悩みながら、俺は道を急いだ。



戦車型ロボットの装甲から出現した機関銃がライトリッヒとハルカを襲う。

ライトリッヒは機動力が高いタイプではない。

そのため全ての弾を避けきることは出来なかった。

しかし、バリアを使うまでもなくライトリッヒの厚い装甲を弾が貫通することはなかった。

「そんな旧式の武器じゃライトリッヒは傷一つ付かないわよ!」

ソウル・パンツァーには様々な能力を持つものがあるが、

機体そのものの性能は大きく分けて4つに分類される。

フリモアのように様々な戦闘に対応できるバランスタイプ。

シルバーファングのように速さで敵を翻弄するスピードタイプ。

機体性能は低いが、凄まじい固有能力をもつ能力特化タイプなんてのもある。

ライトリッヒは重装甲タイプ。

スピードを犠牲に高いパワーと防御力を兼ね備えている。

そこいらの一般的な武器では、ダメージを与えることすら難しい。

しかし、敵の戦車型ロボットもまた装甲が厚く、こちらの攻撃で対したダメージを与えられていない。

このまま殴り続けるだけでは埒が明かない。ハルカは焦りを覚えていた。

フーガと黒いソウル・パンツァーの戦闘はここからでも少しだけ様子を伺うことが出来る。

暗くてよくは見えないが、先ほどからフーガが一方的に攻撃を受けているのだ。

それどころか敵の姿が先ほどからまったく見えなくなっている。

自分の師匠であるフーガが負けるなんて考えられないが、万が一がある。

「おーい、ハルカ!大丈夫か!」

そこへフリモアに乗ったジンが現れた。

既に敵を倒したのだろうか。

まだ戦闘経験が浅いはずなのに流石である。

「こっちは大丈夫だからフーガをお願い!」

「分かった!気をつけろよ!」

フーガの元へと向かうジンを見送る。

「そうはさせないぜぇいっ!」

走り去るフリモアの背中を戦車型兵器の主砲が狙う。

「させないはこっちのセリフよっ!」

ライトリッヒのショルダータックルが戦車型ロボットの横っ面にぶつかり、

主砲の照準をずらすことに成功する。

妨害を予想していた敵が再び主砲を高速で回転させライトリッヒへ打ち込もうとするが、

ハルカもその攻撃を予想していたため、なんなく回避する。

「そんな面白攻撃、何回もくらうわけないでしょ!」

「俺様の主砲バットを面白攻撃だと⁉

 目に物を見せてくれるっ!」

男は再び主砲をその場で回転させる。主砲の回転は徐々にスピードを増していき、

戦車型ロボットは高速スピンするコマのようになり、真っ直ぐライトリッヒに向かって進んでいく。

「さらに面白攻撃になってるじゃないのよ!」

ハルカはとっさに近くにあった大きな木の後ろに隠れる。

しかし、ゴリゴリと削れる音がしたかと思うと、

目の前にあった木の幹は回転する主砲に削られ吹き飛んでしまった。

そのまま直進してくる高速スピン状態の主砲がライトリッヒの身体を大きく弾き飛ばす。

「どうだ!俺様の必殺技、主砲スピナーの威力は!」

見た目の面白さ以上に強力な技だ。

今の攻撃でバリアエネルギーの半分以上を持ってかれた。

バリアが消えてもソウル・パンツァーは戦える。

しかし、バリアの消失は精神エネルギーの枯渇を意味する。

ソウル・パンツァーの能力を使えないのはもちろん、出力も大幅に低下する。

ライトリッヒの装甲がいかに厚いといえども、バリアが消えれば辛い戦いを強いられる。

「次で止めを刺してやるぜ!」

再び主砲スピナーがライトリッヒを襲う。

戦車型ロボット自体直線のスピードは遅くなく、横への回避は不可能だ。

「いつまでも、情けないところ見せられないのよ!」

ライトリッヒから赤色の光が溢れ出す。

ハルカは実戦経験はほとんどない。

しかし、ソウル・パンツァを操る訓練はフーガの指導の下、それなりにやってきたつもりだ。

なのにアファング砂漠ではモルピウスにやられ、今も旧型のロボット相手に手こずっている。

ソウル・パンツァーに乗って数日のジンには助けられるばかりだ。

ソウル・パンツァー乗りの先輩として不甲斐ない姿はもう見せたくない。

赤い光が足元へと収束していく。

「跳びなさい!ライトリッヒ!」

ライトリッヒの足の裏から高出力の炎がジェットのように吹き出す。

その推進力を利用してライトリッヒは重装甲にも関わらず、空高くジャンプする。

そのままあっけにとられている戦車型ロボットの中心部、

一番回転の影響が少ないところを目掛けて全重量を乗せた跳び蹴りをくらわせる。

「うぉぉぉぉぉ!」

スピンの中心部ではライトリッヒの蹴りを弾くことは出来ず、

重装甲に包まれていた戦車型ロボットの上半分はメリメリと音を立ててへこんだ。

「まだ生きてるかしら?」

他に手がなかったとはいえ、少しやり過ぎてしまったかもしれない。

相手がこちらの命を狙っているとしても、出来れば殺しはしたくなかった。

「嬢ちゃん、中々やるじゃねぇの!」

へこんだ戦車型ロボットの中から声が聞こえる。

どうやら無事だったようだ。

「だがまだ終わりじゃねぇぜ!俺はアニキのところへ行く!」

主砲も根元が折れてしまい使い物にならないというのに、それでも男は仲間の援護に向かおうとしていた。

心意気は立派だが、行かせるわけにはいかない。

ハルカはライトリッヒで戦車型ロボットを抱きしめると、再び赤い光を少しだけ溢れ出させた。

ライトリッヒは身体から微弱な炎を出し戦車型ロボットを包み込む。

戦車型ロボットの内部温度は少しずつ上昇していく。

「降参して早く出てこないと蒸し焼きになっちゃうよ?」

男はしばらくダンマリを続けていたが、命の危機を感じると

ハッチから飛び出すように這い出てきた。

「嬢ちゃん、中々エグイことするじゃねぇの...」

「見逃してあげるからとっとと逃げなさい!」

スキンヘッドの男は戦車型ロボットを置いてトボトボと森の中に消えていった。

初勝利を喜んでいる暇はない。

フーガとジンは無事だろうか?

念のため戦車型ロボットのコックピットにグーパンチをお見舞いしてから、

ハルカは2人の元へと急いだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ