イメージを力に
フリモアの剣で体を拘束しているアーム部分を破壊する。
クラゲのような見た目のロボットは空中へと逃げ、距離をとった。
敵は全部で3体、俺たちも3人。それぞれが目の前の敵と戦う形となった。
しかし、フーガの相手になる黒いソウル・パンツァーは中々の強敵だ。
フーガの実力の程は分からないが、出来れば早めに加勢したい。
「あんたじゃ私のジェリースカイは倒せないよ!」
再びロボットから女性の声が聞こえる。
ソウル・パンツァーに乗って戦うのは2度目だ。場数では完全に劣る。
まずは目の前の敵に集中しなければ。
「フリモア、まだ行けるか?」
「マスターが負けを認めない限り私は戦い続けます」
ジェリースカイとやらのアームの真ん中、タコで言う口の部分からレーザーが発射される。
横ステップでそれを回避し、そのまま空中のジェリースカイ目掛けてジャンプする。
フリモアの背中から溢れる光がブースターのようになり空中で加速するが、
ジェリースカイは空中を泳ぐようにするりとそれを回避する。
「そんな攻撃じゃ当たらないよっ!」
空中で方向転換できないフリモアに向けて、再びレーザー攻撃が放たれる。
ソウル・パンツァーでなければこれでやられてたかもしれない。
攻撃をバリアで防ぎ、そのまま地面へ着陸する。
敵の方が機動力が高い。闇雲に跳ぶのは危険だ。
しかし空中に飛ばなければ攻撃をすることができない。
何か遠距離攻撃出来る武器があれば別だが...
悩んでる間にもジェリースカイのレーザー攻撃は放たれる。
反撃が出来ないまま少しずつバリアを削られていく。
このままではジリ貧だ。いつかバリアを割られてしまう。
そうなれば、フリモア自身がダメージを受けてしまう。
ふと思った。ソウル・パンツァーのフリモアが傷ついたら、人の姿のフリモアはどうなるのだろうか。
ソウル・パンツァーの状態で受けた傷はそのまま残ってしまうんだろうか。
俺は頭の中で女の子のフリモアが傷ついていく姿を想像してしまう。
フリモアの本体がどちらなのかは分からないが、今となれば女の子の姿の方が共にした時間は長い。
俺はもうフリモアを1人の人間として扱っている。彼女が傷つくところは見たくない。
「そんなことはさせない!」
俺の声に呼応するように、フリモアの全身から光が溢れ出す。
「マスターの強い想い、伝わってきます」
ソウル・パンツァーは人の感情を力に変える。そういえばそうだったな。
フリモアの右腕に光が集まる。装甲から伸びた剣は光に包まれ、銃身へと形を変えた。
俺のやりたいことに合わせてフリモアが武器を形作ってくれる。
もしかして、これがフリモアの能力なのか?
考えるのは後だ。俺はただイメージするだけでいい。
あのジェリースカイを撃ち落とすイメージを。
相手はこちらの動きを警戒しているのか、攻撃の手を止め観察に徹していた。
手の内を探られていない最初の攻撃がチャンスだ。長期戦になればこちらが不利になる。
相手に考える隙を与えたくない。俺はすぐに右腕の銃身をジェリースカイへと向ける。
銃身の先からは弾丸の代わりに白いエネルギーの塊のようなものが発射された。
塊は俺の意志通り、まっすぐに敵へと向かっていく。
「当たらないねぇ!」
しかし完全に警戒されていたのか、ジェリースカイはすぐさま回避行動をとる。
白い弾丸はジェリースカイにかすり傷だけを残し、空中で霧散した。
だがこれで終わりじゃない。
俺とフリモアは背中から放出されるエネルギーを限界まで溜めていた。
相手の回避する方向を見定め、ジェリースカイ目掛けて一気に急加速する。
ジェリースカイの機動性は高い。攻撃を直撃させるためには、
こちらの攻撃を避けて油断している今しかない。
ジェリースカイとの距離は瞬く間に縮み、剣の間合いへと入る。
俺は左腕の剣に溢れる光のエネルギーをすべて集中させる。
対してジェリースカイは迫るこちらに驚きながらも冷静に後ろに下がりながらレーザーを放つ。
放たれたレーザーをフリモアのバリアで防ぐ。そのレーザーに少しだけフリモアの勢いが削られる。
俺たちはは勢い任せに体を捻りそのまま剣を振るうが、
先ほどのレーザーの影響でこのままでは直撃を避けられてしまう。
ここで外せば二度とチャンスは来ない。負ければフリモアは連れていかれるだろう。
フリモアがどんな目に遭うか分からない。そんなことはさせない。
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
剣に集まる光が輝きを増していく。フリモアを想う気持ちが力となる。
白い光は根元から剣先に向けて吹き出すように伸びていき、ジェリースカイとの距離を埋めた。
巨大化した白い光の刃がジェリースカイの胴体部分を真っ二つに切り裂く。
二つに裂かれたジェリースカイは空中で制御を失い、くるくると宙を舞いながらそのまま爆発した。
地面に着地し辺りを伺う。これで終わりではない。ハルカとフーガはまだ戦闘中のようだ。
今回はこちらの事情に2人を巻き込んでいる形だ。これで2人に何かあれば申し訳が立たない。
「フリモア、まだ行けるか?」
「もちろんです、マスター」
フリモアと一緒なら何とか出来る気がする。
俺は急ぎ2人の応援に向かった。