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ソウル・パンツァー!  作者: しんとき
フーガ団アジト編
15/26

必殺技を作ろう!

調査部隊からの連絡を待つ間、俺たちは修行の日々をこなし続けた。

午前中はゲンヤと剣術と基礎体力の訓練、

午後はゲンヤとハルカそれぞれとのソウル・パンツァーでの実戦練習だ。

ハードな特訓ではあるが、いつも孤独に過ごしていた俺にとって

仲間と共に切磋琢磨する時間は楽しいものだった。

夕食後は意識してフリモアとのコミュニケーションも行っていた。

フーガから詳しく聞いたところ、ソウル・パンツァーには感情の好みというものがあるらしい。

個々のソウル・パンツァーが万人に扱えないのはそういった理由があるかららしい。

自分の好みの感情が強い人間を選んでいるんだそうだ。

好みの感情が分かれば、ソウル・パンツァーの力を引き出しやすくなるとも言っていた。

というわけで、親睦を深めるついでにフリモアの好みの感情を聞き出そうとしているのだが...

「マスターの感情であれば、なんでも受け止めます」

と理解ある恋人のようなことを言われた。

言葉のままに受け止めてしまっていいものだろうか。

確かにフリモアに好き嫌いみたいなものがあるかは疑問だ。

それは普段の食事もそうで、フリモアは何でも美味しそうに平らげる。

人間と同じく複雑な感情があるかどうかは分からないが、

本人がそう言っている以上、今はそれ以外の答えは出せないだろう。

感情の好き嫌いを把握して強くなる作戦は一旦保留だ。

そうなると他の案が必要になってくる。

修行後の晩飯時にフーガに何か妙案はないかと尋ねてみると、こんな返答をされた。

「必殺技を作るんだ!」

「必殺技っていうと、ゲンヤの壱の型...みたいなやつか?」

確かにゲンヤのあの技は強かった。

ゲンヤとの模擬戦闘はあれから何回もしているが、

未だにあの技は防ぐことが出来ていない。

一定時間静止することで強化されるガリュウの能力、

それによって生まれる瞬発力と攻撃力は必殺わざと呼ぶにふさわしい。

「自分の戦闘スタイルやソウル・パンツァーの能力に合わせた必殺技を作れば、

 いざという時に必ず頼りになるぞ」

雨の森での戦闘時のフーガの最後の一撃も見事なものだった。

あれも必殺技だったのかもしれない。

「でも必殺技ってなんだか子どもっぽくないか?」

「何を言う!そもそもソウル・パンツァーはイメージで動き感情がエネルギーとなる。

 イメージが固定された必殺技を名前を叫びテンションを上げながら発動することは

 どのパンツァー乗りでもやってることだぞ!」

もの凄い力説をされた。言ってることは一理ある。

必殺技の名前を叫ぶところは置いておいて、

自分の技のイメージを固めておくことは確かに大事かもしれない。

その日の晩、俺はフリモアとともに必殺技を考えることにした。

そもそもの話だが、フリモアの能力は現状、腕から剣や銃を出す能力ということになっている。

後は背中から光のエネルギーを噴出して高速移動したり、

高く跳び上がるのもフリモア独特の技といってもいいかもしれない。

「ちなみに他に何か出来ることがあったりするか?」

「申し訳ありません。フリモアのスペックについては何も思い出すことが出来ていません」

記憶喪失のフリモアにあれこれ尋ねるのは忍びない。

今できると分かっていることから必殺技を考えていこう。

まずは過去の戦闘をおさらいだ。

初めての戦闘は砂漠で戦ったサソリ型兵器のモルピウスだ。

今でもぞっとするほど恐ろしい敵だった。

身体は黒い金属に覆われており、通常の攻撃では一切傷をつけられないほどだった。

あの時は確か剣を突き出しながら猛スピードで回転しながら攻撃することで、

なんとか貫くことが出来たんだったな。

あの時は無我夢中だったが、もしかしたら今まで行った攻撃の中で、

一番強い攻撃だったと言えるかもしれない。

しかし回転しながら突っ込む都合上、自分自身への負担が激しい。

あの時は初めての戦闘勝つ精神力を使い果たしたこともあって、

そのまま気を失ってしまった。

いや、気を失った原因は別にあったような...

「マスター、少し顔がにやけていますが、

 何か良いことでも思い出しましたか?」

俺は頭の中に思い浮かべていた、色々な意味で純白のフリモアの姿を

ブンブンと頭を振ってかき消した。

人間状態のフリモアは俺の心を読むことはないが、

俺の感情の機微に対しては結構鋭いようだ。気をつけねば。

回転しながらの突撃は捨て身の一撃としてはありだが、

いつでも誰かが助けてくれる状況とは限らない。

そんな技を必殺技にするのはリスキーなので、これは一旦没だ。

次の戦いは雨の止まない森の中だった。

あの時は空を飛ぶジェリースカイと黒いソウル・パンツァーが敵だった。

どちらも素早い動きで翻弄するタイプで攻撃を当てるのに苦労した。

銃を使用したのはあの戦いが初めてだった。

攻撃力だけでなく、命中力を高めた必殺技があってもいいかもしれない。

だが当面の仮想敵はガリュウとライトリッヒだ。

今はとりあえず威力を重視した技を完成させたいところだ。

となると、初めてガリュウと戦闘した時のようなデカい弾を放つ路線もいいだろう。

ただデカい弾を放つだけでは味気ないので、何とか一工夫したいところだ

ベッドに横たわり天井を見つめる。

ヒントになりそうなアイデアはいくつか出たが、

実戦で色々試さないことには始まらない。

ここ数日の修行で基本的な動きは良くなったように思うが、

ライゾウやゲンヤのような実力者に一人で勝てるビジョンが全然浮かばない。

せめて必殺技だけでも早く完成させたいものだが...

黙り込む俺を心配してか、フリモアが顔を覗き込む。

白く長いまつ毛に囲まれた無垢な瞳がジッと俺を見つめている。

「悩まないでください、マスター。

 どんな技でも、私が実現して見せます」

フリモアはそう言ってくれるが、世の中には出来る事と出来ない事がある。

「困ったのなら全部混ぜちゃえばいいのです」

「全部混ぜる?」

今日思い出した戦いの数々をもう一度振り返る。

それぞれの戦いで上手くいった部分、上手くいかなった部分がそれぞれある。

それらを良い感じに組み合わせれば...

「ありがとうフリモア!なんか掴めた気がする!」

「マスターが喜んでくれて、私も嬉しいです」

この日考案した技はゲンヤとハルカの協力もあり、

その後の修行の中でついに必殺技として完成させることになる。


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