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ソウル・パンツァー!  作者: しんとき
フーガ団アジト編
12/26

アンドロイドはお酒の夢を見るのか

ゲンヤと2人、アジト近くの林まで足を運ぶ。

ハルカとフリモアはアジトの掃除をするというのでアジトで別れた。

フリモアは俺から離れるのを心配そうにしていたが、

危険なことはしないからと説得した。

いつも俺に付きっきりにさせるのもなんだか悪い。

フリモアにはもっと自分の時間を大切にして欲しいのだ。

でもよくよく考えたら、じめじめじ捜索のときは離れることに躊躇しなかった。

食い意地が優先されるロボットってのは中々珍しいじゃなかろうか。

「はっきりと聞かせてもらうが、お前はフリモアちゃんのことが好きなのか?」

黙って歩いていたと思ったら、ゲンヤが突然、妙な質問をぶつけてきた。

「好きってのはどういう意味でだ?」

「恋愛感情があるかってことだよ!」

突然そんなことを聞かれても困る。

確かにフリモアは命の恩人で大切な人ではある。

だが出会って数日しか経っておらず、お互いのこともよく知らない。

強いて言えば、美しい白い髪や、線の細いシルエットは好みではあるし、

膝枕されたときはわりとドキドキしたが。

これって好きってことなんだろうか?

「まぁ大切に思ってるてのは間違いないかな」

大前提としてフリモアはソウル・パンツァー...つまりロボットである。

もちろん、人間扱いしないわけではないが、

彼女は俺のことを、守るべき操縦者ぐらいにしか思っていないだろう。

だからフリモアに対して恋愛感情があるかどうか、考えても仕方のないことなのだ。

「そうかそうか、俺は応援してるからな」

何故こいつ応援されなければならんのだ。

そもそもなんでこいつは急に恋愛話など始めたのだろうか。

恋バナが好きって感じでもなさそうだが。

それにさっきまで怒っていたのに、急に態度が軟化しているのも変だ。

「俺もフーガ団の皆は家族として大切に思っている

 特にハルカとは物心つく前から一緒だったからな」

今度は自分語りときた。剣術の教えてくれる話はどこに行ったのだろうか。

「ハルカとは仲がいいのか?」

「も、もちろんだ。兄弟のように育ったからな!」

ゲンヤは照れているのか大きな声で話す。

「ま、まぁハルカがどう思っているかは分からんが、

 お前とフリモアのように大切な人というかなんというか...」

徐々に顔を赤らめて口ごもっていく。

なんとなく察してきたぞ。

急に恋愛の話になったことにも納得がいく。

「お前、ハルカのことが好きなのか?」

「!?」

ゲンヤは驚いた表情で口をパクパクさせている。

なるほど、これですべてに合点がいった。

ゲンヤが俺に対して怒っていたのはハルカと親しげに話していたからだ。

初めは恋のライバルとして認識していたが、こいつが好きなのはフリモアなんじゃね?となり、

そこから態度が柔らかくなっていったというわけか。青春してるなぁ。

「ま、応援してるから頑張れよ」

俺はゲンヤの肩をポンポン叩いて言ってやった。


その後、照れ隠しに木刀を振りかざすゲンヤと剣術の修行を始めた。

生まれてこの方、剣や刀など握ったことはない。

使ったことのある武器と言えば、モルピウスに使用した電撃銃ぐらいのものだ。

何度か木刀をゲンヤに打ち込むが、

それだけで腕の筋力が持っていかれそうだ。

「何故剣術を習おうと思ったんだ?」

冷静になったゲンヤから質問を投げかけられる。

「俺のソウル・パンツァーの武装に剣がある。

 今後また強敵が現れた

ときのために、やれることはやっておきたい」

森で出会ったライゾウと黒いソウル・パンツァー。

もしも1対1で戦っていたら、とても勝ち目はなかった。

俺が剣術を習うことにどこまで意味があるかは分からないが、

少しでも意味があるのならやっておきたい。

「そういえばお前もパンツァー乗りだと聞いていたな。

 ブレスレッドがないから忘れていた」

非戦闘時のソウル・パンツァーは通常、ブレスレッドとなり腕に巻き付いている。

やはりブレスレッドの有無でパンツァー乗りかどうか判別するものなのか」

「お前もってことは、ゲンヤもパンツァー乗りなのか?」

そう聞くとゲンヤは上着の袖をめくって腕を見せる。

そこには緑色のブレスレッドが巻き付いていた。

「お前もパンツァー乗りならば、不足の事態に備えて、

 常にソウル・パンツァーを携帯しておけ」

俺のソウル・パンツァーはフリモアだ。

初めから女の子ではなくブレスレッドになっていればこんな気苦労はしていない。

というかその辺の事情はまだ説明されてないのだろうか?

ゲンヤに説明しようかとも思ったが、単純にめんどくさいのでやめた。

「パンツァー乗りなら覚えておくといい。

 ソウル・パンツァーは自分のイメージしたままに動く。

 それはつまり、イメージ出来ない動きは出来ないということだ」

当たり前のことを言っているような気もするが、含蓄のある言葉でもある。

つまり、戦いのイメージが出来るように己自信を鍛える必要があるということだ。

「ソウル・パンツァー同士の戦いは精神力の戦いでもある。

 肉体や精神を鍛えればそれだけでアドバンテージになる」

今までパンツァー乗りの心得みたいのを聞いたことがなかったので、

ゲンヤの意見は非常に参考になる。

剣術もなんだかんだ教えてくれるし、

もしかしてこいつ、結構良い奴なのか?

互いに初対面の出来事が嘘のように意気投合した俺たちは、そのまま木刀を振り合った。

と言っても初回なので、指導してもらいながら木刀を振るうだけだ。

それでも辺りが暗くなるころには、俺の身体中が悲鳴を上げていた。


痛みを抑えながらアジトへと帰ると、アジトの車庫にフーガ号が停まっているのを見つけた。

アジトの中からは楽しそうな話声が聞こえてくる。

どうやらフーガが帰ってきているようだ。

ゲンヤと共にアジトの中に入り、皆のいる場所を探す。

賑やかな声は食堂から聞こえてくるようだ。

食堂からは美味しそうな料理の臭いも漂ってくる。

もう晩御飯を食べているのだろうか。

俺は急ぎ、食堂の扉を開ける。そこには...

「お~2人とも!やっと帰って来たか!」

そこには、両手に扇子を持ち、謎の踊りを裸で披露するフーガの姿があった。

そして横でそれを見ているリョーコは1人で大爆笑しており、

フリモアはその光景を眺めながら、静かに飲み物を飲んでいた。

唖然とする俺の元へハルカが近づき、こっそりと耳打ちしてくる。

「私は今日は止めとこうって言ったんだけどね...」

そう言うハルカの指さす先には、空になったお酒の瓶がいくつも転がっていた。

「団長、またお酒飲んじゃったんですか」

ゲンヤはやれやれという感じでフーガの方へと歩いていく。

2人の雰囲気から察するに、こうなることは今までも何回かあったようだ。

フーガはともかく、リョーコもよく分からないテンションになっている。

一応ルケルス共和国の法律では15歳からお酒を飲めるが、俺はまだ飲んだことがない。

大人のああいう醜態をみると、飲む気持ちも湧かなくなるってもんだ。

「遠征中は酒断ちしてるから、アジトに帰ってくるとフーガはいつもあんな感じなのよ」

それを考えればこのぐらいの醜態は受け入れてもいいのかもしれない。

実際女性陣も大して気にしていないようだし。

「じゃ、私も戻るわね」

そう言ってハルカはみんなの元へフラフラしながら戻っていった。

まさかハルカも一杯やってるのか⁉

ベロンベロンになりながらフラフラと不思議な踊りをするフーガ。

それを慌てて支えるゲンヤ。

そんな2人を見て爆笑しているリョーコ、そしてハルカ。

まともなのはゲンヤだけか。

今日1日だけで、ゲンヤへの好感度が急上昇している気がする。

なんとなく身内乗りの輪に入りづらかった俺は、

テーブルの隅に座るフリモアの横へ腰かけた。

「フリモア、大丈夫だったか?変な宴会芸とかに巻き込まれたりしていないか?」

まぁ、そんなことはされてないだろうが、念のため聞いておく。

「マスター、こちらの飲み物、すごく美味しいですよ。

 是非マスターも飲んでみてくださいよぉ」

なんかいつもと口調が違くないか?

呂律も怪しい気がする。ソウル・パンツァーなのに。

フリモアはおぼつかない手つきで俺に飲み物を手渡す。これは...

「フリモア!これお酒だぞ!飲んで大丈夫なのか⁉」

足元をよくよく見ると大量の酒瓶が転がっている。この量を1人で?

フリモアはソウル・パンツァーだからもの凄い昔に作られたはずだ。

ってことは年齢的には問題ないのだろうか?

しかし見た目は同い年ぐらいの華奢な女の子だ。

こんな量のお酒を飲んで問題ないとは思えない。

「あれ、マスターが2人、3人...どんどん増えていきます...」

どうも目の焦点が合ってなさそうな感じだ。どう見ても酔っぱらっている。

突然フリモアは俺の両頬を両手で抑え、じっくりと顔を覗きこんでくる。

「よかった、マスターは1人でした!」

フリモアの頬は少し赤みを帯び、口調も見た目相応の女の子みたいだ。

ゲンヤとあんな話をしていたせいだろうか。自分の心拍数が急激に上昇していくのを感じる。

目の前にいる1人の女の子から目が離せない。

「これからもマスターのことをお守りしますぅ...」

そのまま、フリモアは眠りに落ちていった。

正直やばかった。もう少しフリモアが起きていたらどうなっていたか分からん。

ふと視線を感じ横を見ると、先ほどまで騒いでいた4人組が

ニマニマと笑みを浮かべながらこちらを見つめていた。

「こっち見んな!」

俺は恥ずかしくなりその場から逃げようとしたが、

酔いつぶれたフリモアをそのままにしておくわけにはいかない。

せめてベッドまで運ぼうとフリモアを背負い食堂を出る。

扉越しに「お持ち帰りかー?」と茶化すフーガの声が聞こえてくる。

俺は今後も絶対に酒は飲まないと心に誓った。



それにしても華奢なやつだ。背負っている感覚がほとんどないくらいだ。

これでソウル・パンツァーに変身するのだから古代の物理法則は

どうなっていたのか是非ご教授願いたいものだ。

背中越しにフリモアの体温が伝わってくる。耳元で繰り返される浅い呼吸音に心が揺れる。

先ほどのフリモアはいったいなんだったんだろうか?

ロボットは酔うと口調が変わるものなのか?

フリモアの存在自体が謎なのに、そんなことまで分かるはずない。

明日フリモアが起きたら、少し聞いてみよう。

そんなことを考えながら廊下を歩くと、いつの間にかフリモアの部屋の前まで来ていた。

扉を開け、中に入る。家具の配置は俺の部屋と同じみたいだ。

フリモアをベッドに寝かせ、布団をかける。

そういえばフリモアの寝顔を見るのは初めてだ。

いつもは俺が先に寝るか、それとも気絶しているかだし、朝はフリモアの方が早く起きる。

実際はロボットだから睡眠は必要なかったりするのだろうか。

ベットで眠るフリモアの寝顔を見つめる。

月明かりに照らされ、なんだか儚げな雰囲気だ。

眠ってる姿だと、余計にソウル・パンツァーだとは思えない。

年相応のあどけない寝顔にしか見えない。

俺はしばらく寝顔を見つめていたが、なんだか変態っぽいなと思い部屋を出ることにした。

「おやすみ、フリモア」

そういえば晩御飯をまだ食べていない。今から食堂に戻るのも気まずいが、

戻らない方が明日何言われるか分かったもんじゃない。

フリモアと別れ、皆のいる食堂へと俺は移動した。

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