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ソウル・パンツァー!  作者: しんとき
フーガ団アジト編
10/26

アジト到着!

腹が減った。時計は夜の10時を指している。

研究に没頭するあまり、晩飯を食べるのを忘れていたようだ。

溢れるアイデアを全て書き留めるにはとてもじゃないが時間が足りない。

しかし食事による栄養補給が大事であることも忘れてはいけない。

昔は食事など栄養さえとれればいいと思っていたが、彼女と過ごす内にその考えは改めた。

美しい料理は食欲をそそり、美味しい料理は心を躍らせる。

その瞬間を大切な人と共有することは何物にも代えられない宝となる。

急に彼女が恋しくなった僕は生活スペースに戻ることにした。

この時間、彼女はもう寝てしまっているだろうか。

だが寝顔を見るだけでも生きる活力が沸いてくるというものだ。

エレベーターで上の階に上がり、家の扉にカードキーをかざす。

「あれっ?電気が付けっぱなしだ」

マメな彼女が電気を消し忘れることはほぼない。

もしかして彼女の身に何かあったのではないか。

はやる気持ちを抑え、俺はリビングの扉を開ける。そこには...

「ハッピーバースデー、トゥーユー!」

パンッとクラッカーの音が鳴り響く。

リビングの中では、パーティー帽子を被った彼女が

満面の笑みで俺を迎えていた。

困惑する俺を彼女はテーブルへと連れていく。

「君、自分の誕生日のこと、また忘れてたでしょ?」

彼女はいたずらな笑顔を浮かべる。

テーブルの上にはチキンやケーキなどが所狭しと並んでいた。

「チキン温めなおすから、座って待ってて」

彼女はそう言い、チキンの皿を持ってキッチンへと向かって行った。

壁にかかるカレンダーを見ると、今日の日付に赤い丸が付けられていた。

自分の誕生日を忘れていたわけではなかった。

ただ彼女と会うまでは、誕生日が特別なものだという考えを持っていなかったのだ。

その価値観を彼女が変えてくれた。

僕にとって誕生日とは、自分の誕生を祝う日ではなく、彼女に祝われるのを喜ぶ日だ。

嬉しい気持ちと同時に罪悪感が僕を襲う。

彼女を長時間待たせてしまったからだ。

彼女の健康面を考えれば、大分無理をさせてしまっただろう。

何かお返しをしないといけないな。

そうだ、今度の彼女の誕生日には僕が料理をご馳走しよう。

料理を作ったことはないけれど、料理は科学なんて言葉もあるし、何とかなるだろう。

食べるのが大好きな彼女を喜ばせるのにそれ以上の手はない。

チキンを温めなおし、満面の笑みで戻ってくる彼女を見つめながら、僕は強く決心した。

次の彼女の誕生日は、とびきりステキな1日にしてやるぞ!



フーガ号がガタンと揺れ、俺は目を覚ました。

どうやらまた夢を見ていたようだ。

とても幸せな夢だった気がするのに、何故か心は悲しい気持ちになっていた。

どうしてなのか考えても答えは出せない。

夢の内容もぼんやりとしか思い出すことは出来なかった。

「マスター、どこか調子が優れないのですか?」

隣のベッドで寝ていたフリモアが目を開けこちらをじっと見つめている。

「大丈夫だよ。ありがとう」

フリモアに話しかけられ、悲しい気持ちはどこかに飛んでいった。

何故だか、フリモアの声でひどく安心する自分がいる。

「ジン!フリモア!そろそろ着くわよ!」

運転席側からハルカの元気な声が聞こえてくる。

相変わらず早起きな奴だ。

寝ぼけ眼を擦りながら、座席のあるスペースへと移動する。

そこには運転席側に身を乗り出しながら楽しそうにはしゃぐハルカの姿があった。

「見えてきたわよ!我らがフーガ団アジトが!」

ハルカの横に並び、運転席の窓から外を見る。

森の木々を抜けた先に建物が見える。

それほど大きい建物ではないが、思ってたより外観は綺麗だ。

程よく木々に隠れており、隠れアジトという感じだ。

フーガは入り口で俺たちを降ろすと、

「ハルカ、アジトを案内してやってくれ」

と言いフーガ号と共に去っていった。

「この辺には私たちみたいなトレジャーハンターのアジトがいくつかあって、

 お互い得意分野で助け合いながら生きてるのよ」

どうやらフーガは知り合いのトレジャーハンターのところへ

フーガ号の修理に出かけたようだ。

「おいっ!そこのお前!」

声のする方を向くと、同い年ぐらいの少年が木刀を2本持ってそこに立っていた。

少年は俺の顔を見るなり舌打ちをし、片方の木刀をこちらに向かって投げた。

「拾え、そして俺と闘え」

「ゲンヤ!あんた何やってるの!」

ハルカの知り合い...ということはフーガ団の1人だろうか。

表情を見るに、何故だか分からないが、とても怒っているようだ。

とりあえず木刀を拾う。しかし剣術なんてやったこともない。

何故怒ってるのかは分からないが、とりあえず言葉で分かり合うところから始めようじゃないか。

「すまんが俺は木刀なんで握ったこと...うわぉっ!」

こいつ、話してる途中で急に切りかかってきやがった!

とっさに拾った木刀で防ぐが、その衝撃に腕が痺れる。

「ふんっ、構えも面構えも素人そのものだな」

自分の心の奥からふつふつと湧き上がってくるものを感じた。

そう、これは怒りの感情だ。

腹を蹴りつけ、相手を引きはがす。

そのまま相手に向かって走り、木刀で切りかかる。

闇雲に何度も木刀を振るうが、その全てを軽くいなされる。

いきなり木刀で喧嘩を吹っかけてくるだけあって、中々の剣捌きだ。

などと感心していたら、相手はこちらの一撃を軽く受け止め、挑発するかのように鼻で笑ってきた。

ここまでムカつく奴も中々いない。

絶対に一撃当ててやる。

ゲンヤと呼ばれた少年は一度距離をとり、両手で剣を握りしめたまま構えをとると、そのまま静止した。

どこからでも攻撃してみろと言わんばかりだ。

挑発に乗った俺は木刀を上に掲げながら突っ込む。

そして、そのまま切りかかると見せかけ木刀を下げ、突きの構えをとる。

突きならば簡単には捌けまい。

そんな俺の必死で浅はかなフェイントはあっさりと見破られた。

身を翻して攻撃を避けたゲンヤはそのまま俺の脳天に一撃をお見舞いする。

悔しい。こいつに一撃くらわせてやりたかった。

そのまま世界は暗転し、俺は意識を失った。


目を覚ますと、視界に知らない天井が移る。

どうやら気絶した後、どこかに運ばれたようだ。

頭の下に生暖かく柔らかい感触があることに気付く。

似たような構図に覚えがある。今回もフリモアが膝枕をしてくれているのか。

しばし、膝枕の感触を楽しむ。2回目ともなれば、そのくらいの余裕も生まれる。

膝枕の経験は少ないが、程よく弾力があり、安定感もあっていい感じだ。

しかし、フリモアの脚はこんなに太かっただろうか?

「坊主、目覚めたかい?」

聞き覚えのない声が聞こえ、急いで起き上がる。

膝枕をしていた主は、年上の見知らぬお姉さんであった。

「あ、あなたはいったい?」

緊張して声が上ずる。

「フーガ団副リーダーのリョーコさんです」

横で立っていたフリモアが俺に教えてくれる。

「着いて早々、うちの馬鹿がすまなかったねぇ。

 悪い奴じゃないんだ。私の方でお灸は据えておいたから、仲良くしてやってくれ」

「わ、分かりました...」

嫌だ!と断りたかったが、なんとなくこの人からは逆らっちゃいけない人のオーラが出ている気がした。

どの道、これからここでお世話になるのだ。なるべく問題は起こしたくない。

「よしっ、改めてこれからよろしくね!」

「はい!よろしくお願いします!」

そのままリョーコさんに連れられてアジトの中を案内される。

まず俺が寝ていた場所が医務室だった。

それから食堂、浴室、大広間に作戦室など、普通のアジトという感じの部屋割りであった。

アジトなんて見るのは初めてなので、普通のアジトがどんなものかは知らないが。

最後に個室を案内された。団員全員に個室が割り当てられているようだ。

「じゃ、私は飯の用意してくるから。少しゆっくりしてな」

リョーコはそう言い残してこの場を去っていった。

俺の部屋はフリモアの部屋の隣だ。

隣にいるフリモアをちらりと見る。

フリモアは部屋に入らずにこちらも見つめている。

「フリモア...なんか怒ってる?」

表情から感情を読み取ることは出来ない。

しかし、なんというか、こう...全体的にプリプリしている気がする。

「怒っていません、マスター」

フリモアはプイッと顔を背けながら話した。

...絶対に怒っている!

さて、俺は何かフリモアを怒らせるようなことをしただろうか。

フリモアが起こっている気がするのは医務室で目が覚めてからだ。

ゲンヤに不甲斐なく負けたことに腹を立てているのだろうか?

いや、もしかしたらお腹が空いてイライラしているだけ、なんてこともあるかもしれない。

「と、とりあえず部屋の確認をしよっか」

考えても分からないので、俺は問題を放棄した。

自分に割り当てられた個室の中に入り、中を確認する。

中にある家具はベッド、机、椅子、いたってシンプルだ。

質素ではあるが、自分の部屋があるというだけでも嬉しいものだ。

孤児院で暮らしてたころは一つの部屋で何人も寝泊まりしていたものだ。

それを考えれば、むしろ豪華と言えるだろう。

さて、まだ時間はあるようだから少しベッドで休もうか。

木刀で殴られたところがまだヒリヒリする。

ベッドに横たわり目を閉じると、ガチャリと扉の開く音がした。

飯の時間だろうか?意外と早かったな。

もう少しゆっくりしたかったが。

起き上がろうとしたとき、部屋に入ってきた主に声を掛けられる。

「マスター、ケガは傷みませんか?」

目を開けると、そこにはフリモアがいた。

「自分の部屋はもういいのか?」

「私はいつでもマスターの傍にいます」

フリモアが傍にいるのはいつものことのはずなのに、

個室という2人きりの空間だからだろうか。なんだかとてもドキドキする。

フリモアからはもう怒っている雰囲気は感じられない。

どちらかというと俺を心配してくれているような感じだ。

フリモアが俺の寝るベッドに深く腰を掛ける。何故だかそれだけで俺の心拍数は上昇する。

「マスター、頭をこちらへ」

フリモアに促されるまま太ももの上に頭を乗せる。

今までいつの間にか膝枕をされていたことはあったが、

自分からされに行くのは初めてだ。

めちゃめちゃ恥ずかしいな、これ。

フリモアは自分の脚に乗せた俺の頭を優しく撫でる。

俺の中には恥ずかしさと安心する気持ちが同居していて、なんだかよく分からなくなっていた。

嬉しいは嬉しい。だがこんな姿を他の人に見せるわけにはいかない。

「ジン!ご飯が出来たわよ!」

部屋の扉が勢いよく開かれ、ハルカが俺とフリモアの顔を交互に見る。

「ハルカ、ありがとうございます」

ハルカは無表情でお礼を言うが、ハルカはワナワナと震え始めた。

「な、なにやってんのよ!あんたたち!」

ハルカに掴み上げられ、そのまま廊下を引きずるように連れていかれる。

ハルカがそんなに怒ることでもないと思うのだが...

反対に俺たちの後ろをついてくるフリモアはなんとなく上機嫌になっているようだった。

まったくロボット...いや、女の子の考えていることは分からん。

結局フリモアは何に怒っていたんだろうか?

答えが出せないまま、俺は考えるポーズのまま、廊下を引きずられていくのであった。


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