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初恋

読んでいただき有難うございます。純情甘々展開が始まります。

誤字報告ありがとうございました!

早速直させていただきました。

 シメオン王子は女性を口説いたことがない。立場上愛のない政略結婚は仕方がないと思っていたし、女性の方から言い寄られるばかりだったからだ。それを上手く躱しながら過して来た。



早速両親に婚約を認めて貰うよう働きかけることにした。外国の王女と婚約でもさせられたら身動きが取れなくなる。



幸い魅了の件でロザムンドの株は国王夫妻の中で爆上がりだった。婚約を結んでも良いと令嬢が言ったら連れて来いと言われた。


ヒギンズ侯爵家へ先触れを出し訪れたほうが良いのだろうか、それとも宮殿に呼び出したほうがいいのか頭を悩ませた。よく考え後者を取ることにした。

宮殿の庭園には花が咲き誇ってるので来てもらって案内をしながら、婚約を申し込んでしまおうと思った。ワクワクした気持ちが止められなくなった。



誰にも渡したくない、自分の物にして側にいてもらいたい。白い肌に唇に口付けをしたい。シメオンは今まで感じたことのない欲を持て余していた。

理性的な男だと自分も周りも思っていた。これからも兄を助け国を良くしていきたいと思っている。そのためには婚姻は手段の一つだとさえ考えていた。

しかし彼女と会ってから自分の中で何かが変わった。




王宮からお茶会への招待状がロザムンドに届き侯爵家は大騒ぎになった。それを諌めたのは姉夫婦である。義兄が第二王子の側近なのだから当たり前なのだが、鶴の一声で使用人はやるべき事を思い出したように動き始めた。



お嬢様を最高に綺麗にしなくてはと侍女たちは燃えていた。

「夜会ではないのだからそんなに気合を入れなくてもいいのよ」

「何をおっしゃいます。お嬢様を最高に綺麗にしなくては侍女の名が廃ります、お任せくださいませ」

このところ出かけることのなかったロザムンドは抵抗するのを止めた。お姉様を綺麗にすることで満たされていると思っていたのだが間違えていたのだろうと自分を納得させた。


それにお出かけ先は宮殿なのだ。いくら失礼の無いようにしてもやりすぎることはないだろう。帰りはお義兄様と帰りたいなとぼんやり考えていた。



着せられたのは水色のシフォンが何層も重なった可愛らしいアフタヌーンドレスだった。小さめのダイヤのネックレスとイヤリングを着け薄く化粧をされた。


驚いたことに第二王子が馬車で迎えに来た。

「ヒギンズ侯爵家令嬢、とても美しい。まるで水色の蝶々のようだ、飛んでいってしまわないか心配になる」

「わざわざのお迎えありがとうございます。殿下も素敵です」

「さあ行こうか」


エスコートをされ馬車に乗り込むとシメオン殿下の瞳が穏やかで安心することができた。

「お顔をじっと見るなど不躾なことをいたしまして申し訳ございません。ですが何故か安心するのです。神がかったご尊顔ですのにどうしてでしょうか」

「君はこの顔が好きかい?」

「はい、殿下のご尊顔を嫌いな女性などいないと思いますが」

「君に気に入られるのならこの顔で良かったかな。色々不快な思いもしてきたのでね」

「美しすぎるのも悩みがお有りになるのですね。勉強になりました」

「やっぱり君は面白い考え方をするようだね。今日は僕とのお茶会だ、気楽にしてもらいたい」

「良かったです。尊い方々に囲まれたらどうしようかと思っておりました。殿下は勿論尊いお方ですがお話がしやすくて落ち着きますので」

「それは良かった。宮殿に着いたよ。花が綺麗に咲いてるんだ。少し散歩をしてからお茶にしようか」

「はい、宜しくお願いします」



庭園にはラナンキュラスが色とりどりに咲いていたりダリアが見事な群生に植えてあったりと息を呑むような美しさだったが、温室に咲いていた王家の薔薇は他の追随を許さないほど見事なものだった。むせ返るような香りと花びらの美しさで見る者を圧倒していた。王妃様が管理していらっしゃるそうだ。



かなり歩いて喉が渇いたと思っていたら殿下が東屋にお茶の用意を命じてくださった。

「疲れただろうからスイーツも沢山用意させた。お茶も気に入ってもらえるといいのだが」

「宮殿のスイーツとお茶を気にいらないなんてあるはずがございませんわ」

「それは嬉しいがお茶だけでなく私のことも気に入ってもらえたらいいのだがどうかな」

ロザムンドは甘い言葉にタジタジになってしまった。




王宮侍女たちが手際よくお菓子やお茶を淹れて去って行った。流石だわ、無駄がない。侯爵家も負けてはいないけど。

「さあ、お茶をいただこう、甘いものをどうぞ」

「では遠慮なく頂きます。流石に美味しいです。お茶も最高級品ですね。濃いのに苦みが全く無くて美味しいです」


「気に入ってもらえて良かった。僕は君が好きだ、婚約をしてくれませんか?」


目の前で跪いた神がかったご尊顔の王子様がいつの間にか薔薇の花束を差し出してプロポーズをしてくださっていた。今日のお茶会はこのため?魔女さんが言っていた次の人って王子様?いやいや夢でしょう、いくらなんでも都合の良すぎる夢よ。ロザムンドしっかりするのよ。



「夢ではないよ、僕は本当にロザムンド、貴女に恋い焦がれている」

「恋い焦がれているのですか?」

「そうだ、僕は君を街で見かけた。クズと出会ったときだよ。君の切り捨て方や使用人に対する愛情を見てこの人だと思った。あの時から僕の心はロザムンドでいっぱいだ。だから僕の気持ちを受け取ってほしい」

「私でいいのでしょうか?自信がありません。この通り平凡ですし特に優秀でもありません」

「どうしてそんなに自信がないの?あのクズに馬鹿にされたとか?」

「いえ、二人の姉が美人すぎて優秀ですので、ひっそりと生きていくのがいいのかなと思っていただけです」

「ロザムンドは綺麗だよ、姉上達に負けないくらい。これから僕が自信をつけさせるから、覚悟して。受けてくれるね、申し込み」

「はい、私でいいとおっしゃるなら。でも取りやめはもう嫌です」

「やめたりしないよ、ひたすら口説くから覚悟をしてね」



ロザムンドを優しく抱きしめたシメオンは踊りだしそうな気持ちを何とか抑えつけ額に口付けをした。ロザムンドはそれだけで真っ赤になったのだった。

気持ちが抑えられなくなった初恋殿下です。

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