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反撃 2

お立ち寄りいただきありがとうございます。

 我ながら突飛な考えだとロザムンドも思った。魅了魔法なんて本の中でしか見たことがないし、それも大昔に禁止された筈だ。精神干渉魔法は大罪だ。ただの男好きだと考えるのが普通だ。しかしどうにも引っかかる。



男爵家が慰謝料を払ったのに普通にしていることと未だにあの女が学院に通っていることが、何か大きな力が働いているようで気味が悪くなったロザムンドは急いで屋敷に帰ることにした。



屋敷に帰り着替えを済ませ姉のいる執務室に入り、その胸に飛び込んだ。

「まあ、どうしたの。甘えん坊になって」

「お姉様、あの女の新しいターゲットの婚約者様に会ってきましたの。お話ししているうちに魅了という言葉が頭から離れなくなって怖くなってしまいましたの。大昔に禁止された精神干渉魔法ですわ。奴の調書によく出てきたクッキーを手に入れてくださいとお願いしました。同じ手で落とそうとしているかもしれませんもの」

「そうね、手に入れば分析が出来ると思うわ」

「どうしてまだ学院に通えているのかも納得できませんの」

「こんなに震えて、潰しておけばよかったわ」

「お姉様、何かおっしゃいました?よく聞こえませんでした」

「大丈夫よ、男爵家は徹底的に調べ直すわ。安心なさい。魅了魔法ね、そんなものが存在していたら国家反逆罪だわ。また夕食の時にね、ほら息を吸って、吐いて。もう大丈夫だから」

「ぎゅーっとしてください、お姉様の胸大きくて柔らかくていい香りがする」

「いつまでも子供みたいなんだから」

「安心できるんです」

「仕方のない子ね、甘えん坊なんだから。ほらまた後でね」




リリエルは夫のサニーが仕事から帰って来た時にロザムンドの言っていた事を話した。

「今度は侯爵令息か、何かありそうだ。あの手管だ。落ちるのは時間の問題かもしれないな。婚約者を大事に思っていると良いが」

「令嬢が何とかしてクッキーを手に入れてくれると薬物が入っているかどうか分かると思うのよね」

「殿下には話しておこう、きな臭くなってきた」

「そうね、男爵家も気に入らないのよ、潰しておけば良かったわ」

「君が言うと冗談じゃ無くなるから怖いよ」

「まあ酷いわ、可愛い妻になんてことを言うのかしらこの人は」

「愛してるよ、君だけだ」

「私もよ」

「今夜も君に溺れても?」

笑顔で夫を受け入れたのは言うまでも無い。




メアリーはクッキーを手に入れて来た。婚約者がそれを持って歩いていた所に、何食わぬ顔をしてぶつかっていったそうだ。袋から飛び出したクッキーを片付けたのは一緒にいた侍女だった。


「御免なさい、前をよく見てなくて。中身を零してしまったわ。もう食べられないわね。友だちからのプレゼントかしら。貴方がクッキーを好きだとは知らなかったわ、婚約者なのに。お詫びに私からもクッキーを贈らせてね」

「あ、ああ、怪我はなかった?」

「見えるところにはないと思うわ。本当にごめんなさいね。駄目にしてしまって」

「いや、大丈夫。また」

「また何?」

「い、いや、またお茶会で」

「お茶会にクッキーを用意しておくわね。甘いものは苦手と思っていてごめんなさい。では御機嫌よう」

「ああ、気を付けて」



アルフレッドはまた作ってもらうから良いと思わず言いかけて、相手が自分の婚約者だということを既のところで気が付いて言い逃れできたことにほっとしていた。


あの娘からクッキーを貰ったのは二度目だ。何にもない所で転びかけていたのを助けたのが知り合ったきっかけだった。可愛い娘だった。

どこかへ出かけた訳でもないので、自分達の事が噂になっているとは気が付いていなかった。

何処にでも目があるという事を忘れてしまっていた。



助けてもらったお礼にとクッキーを渡された。お礼のお礼ってしなくては駄目なのか帰って執事に聞いてみようとぼんやりと公園のベンチに腰掛けていたらクッキーは野良犬に取られてしまった。


何も返さないほうが良いです、と言い切られてそうなのかと思いながら廊下を歩いていたらあの娘がにこにこしながら

「この間のクッキーのお味は如何でした?」と聞いてきたので、犬に取られたとも言えず「美味しかったよ」と答えておいた。



高位貴族が手作りの物を直ぐに食べるわけもないのにおかしなことを言うものだと顔を見つめると、熱の籠もったような目で見られていた。そう言うことかと通り過ぎようと思ったら腕に絡み付いて又クッキーを渡してきた。腕を払い


「こういう事はしないで欲しい、僕には婚約者がいるんだ」

「好きなんです」

と言ってクッキーを渡し走り去って行った。



屋敷に帰ってから捨てようと思っていたら婚約者がぶつかってきた。前をよく見ていなかったらしい。怪我がなさそうで安心した。


婚約者は清楚で大人しかった。今日はいつになくはきはきしていたような気がした。もしかしてクッキーを渡されるところを見られていたのか。

冷や汗が出た。



クッキーが好きだったのですねと言われたのを思い出した。

大変だ、誤解を早く解かなくては。

明日花束を持って訪問するようにしなくてはならない。

一時でも婚約者以外を可愛いなどと思った自分を恥じた。









メアリーちゃんなかなかの演技力です。危ないところで留まった婚約者君も頼りないですが良い子です。

誤字報告を有難うございます。色々な方にしていただき感謝しかありません。

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