残念すぎる男
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姉は早速両親に伝令を飛ばし、義兄は件の友人を呼んだ。友人と言ったが侯爵家の影である。家を継ぐ者だけが知る事が出来る秘密である。パルシュを徹底的に調査をさせた。
影が持ってきた書類がパルシュの裏切りを証明していた。
その女は最初は道に迷ったふりをして近づいたらしい。次がお礼という自分で焼いたと称するクッキーを公園で待ち合わせして手渡していた。クッキーのお礼がパルシュからのカフェでのお茶だった。段々親しくなり街で偶然出会ったふりをして雑貨屋に誘いリボンで喜ぶ少女を演じて心を掴んだ。
公園に誘い手を繋いで歩き焼いてきたと称するクッキーを食べさせる。公園で軽いキスに始まりだんだん蕩けるようなキスに持ち込んで、欲望をギリギリまで高めさせ我慢ギリギリのところまで追い詰め連れ込み宿に誘った。
報告を目にした姉夫婦は目眩がした。男の扱いに慣れすぎている。バックに大物貴族がいるのではないかと調べさせることにした。女がこれからどういう動きをするのか注視しなくてはいけなくなった。外国からの国家転覆のためのハニトラ要員ではないのかというのが心配事項だった。
馬鹿なのか宿泊帳にも名前がしっかり書かれていた。数回は利用している。パルシュは伯爵家の次男だ。継ぐ爵位がないから婿養子に入るはずだった。
上手く取り入っても愛人にしかなれないだろう。女の名はロミー、驚いたことに貴族学院の生徒で男爵家の娘だった。
出先から両親が急いで帰ってきた。証拠の書類を見て呆然としていたが。直ぐにロザムンドに謝ってくれた。
「私達に見る目がなかったばかりに辛い目に遭わせた。結婚はしなくていいからのんびり暮らしなさい」
表情のない娘の顔を見て事の大きさに気付いた両親は、直ぐにパルシュの家へ行き相手有責の婚約破棄と慰謝料を取れるだけ取ってきた。
まさか息子が浮気をしているとは思っていなかった彼の両親は慌ててパルシュを呼びつけ事実を問いただした。
「僕はロザムンドとは結婚はするけどロミーと別れるつもりはない。貴族の結婚ってそんなものだろう?」
「世間ではそう言われているかもしれないが結婚もしてないのに何を言ってるんだ。婿に行く分際で既に愛人がいるお前に何の価値がある?縁を切ってやるからその女と何処へでも行くが良い。お前の顔など二度と見たくもない、出て行け」
「父さん何故?皆やってるじゃないか」
「あんなに可愛いロザムンド嬢を傷つけて平気なお前など息子とは思わない」
「ロザムンドに謝って許して貰えば元に戻るのか・・・」
「許すわけがないだろう、公園での行為を見られていたんだ。馬鹿すぎて話にならん。直ぐ出て行け。出ていかないなら摘み出すぞ」
やっと理解したパルシュはフラフラとした足取りで出て行った。自分の部屋に入り数枚の着替えとお金を詰め込み金になりそうなアクセサリーを鞄に詰め込んだ。取り敢えずロミーの所へ行こう。ロザムンドとは別れたって言おう。きっと喜んでくれるに違いないとこの時のパルシュは愚かにも考えていた。
ロミーの家に行ったパルシュは思ったよりも大きな家であることに驚いた。これなら婿入しても苦労せずに暮らせるかも知れない。玄関を思い切ってノックした。執事らしき男が出てきたので
「先触れもなく申し訳ないのですが、ロミー嬢はいらっしゃいますでしょうか」
「お嬢様はお出かけです。お約束はないのですよね」
「約束はしていないのですが僕達は親しい仲なので、パルシュが来たとお伝え願えませんでしょうか」
「貴方がお嬢様を誘惑して傷物扱いされる原因になった男性ですか、よくものこのこと顔が出せましたね」
「誘惑してなどいない、ロミーから近づいて来たし真実の愛に気がついただけだ。使用人にそこまで言われる筋合いはない」
「もう家から縁を切られた平民で無職ですよね、お嬢様に近づくなんてどこまで図々しいんだ。しつこいと警邏を呼びますよ。お帰りはあちらです」
僕達のことがばれてロミーは酷い目に遭っているんじゃないのか、僕が助けてあげるからね。この時もまだ現実が見えていないパルシュだった。
もちろんロミーはパルシュに興味を失った。あれは練習相手だったのだから。
パルシュを落として自信をつけたロミーは次のターゲットに狙いをつけていた。次は侯爵令息だ。自慢のクッキーとメリハリのある身体と可愛い顔がある。丁度良く目の前でコケるのも良いかも知れない。
ロザムンドはだんだん冷静さを取り戻してきた。元婚約者など好きでもなかったのに、何故あれほど動揺したのだろう。多分存在を否定された気がしたからだ。長年それなりに仲良く付き合ってきた相手に袖にされるのは気持ちの良いものではないからだと結論付けた。するとなんだか怒りが湧いてきた。関わりにならずに相手を懲らしめる方法がないものかと考え始めた。顔は見たくないが何とかやり返したい。記録の中にはクッキーを頻繁に渡していたと記述があった。
もしかしたら禁止薬物でも入れていた?
元婚約者は家を出されたらしい。ではあの女は?学院に登校してみると平気な顔で侯爵令息に粉をかけていた。あの女にも慰謝料の請求は行ったはずだ。誰かが立て替えた?義兄に頼んで調べてもらうことにした。
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