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真夜中の訪問者

お読みいただきありがとうございます。なかなかデートまで行かず、ようやく文章の下の方に書くことが出来ました。

 湯船に浸かり侍女達に磨かれてゆっくり疲れを癒したロザムンドはベッドに入り気持ちよく眠ろうとしていた。

窓に何かがコツコツ当たる音がした。屋敷の周りは護衛が見回りに立っているはず、風の音かしらと窓の近くに行って見ると愛しの王子様がバルコニーに立っていた。


「シメオン様どうしてもこんな所におられるのですか?本物ですか?」

「魔術師に頼んで転移させて貰った。酷いよ、もっと一緒にいたかったのに帰ってしまうんだから」

「取り敢えず中にお入りください、見つかったら大変です」

「それより何か羽織って、薄い寝巻きは刺激が強いよ」

「こんな時間に来られるからです、寝ようと思っていましたので」

「今日は頑張ってくれてありがとう。ロザムンドを見ただけで満足したから帰るね」

「もう帰ってしまわれるのですか?」

「歯止めが効かなくなりそうだから我慢する。でも抱きしめさせて」

ぎゅっと抱きしめるとお休みのキスを頬にして

「お休み良い夢を。明日は馬車で来るから」

と言って姿をふっと消した。



ロザムンドはふわふわしたりドキドキしたりして眠れそうもなかった。あんな事をされたら深みにどんどん落ちてしまう。これで裏切られたらもう生きてはいけないに違いない。

自分の恋心が苦しくなってしまった。



以前占ってもらった時に今度出会う相手が本物の相手だと魔女さんが言っていたではないか、信じよう、それしかないとロザムンドは目を閉じる事にした。



朝になったらあれほど不安だった気持ちが消えていた。ロザムンドの為に公爵位を賜ってくださったシメオン様を信じられないなんて酷すぎるのではないかと自己嫌悪が生まれていた。夜に考え事をするのは止めようと自分を戒めることにした。



シメオンは昨夜のロザムンドの姿を思い浮かべながら朝の内に一仕事終わらせていた。ドレスも良かったが寝間着姿はそそられるものがあった。あれより扇情的な物はどこで買えるのだろう。義兄となるサニーに聞いてみようかと思った。


離宮は王宮から馬車で一時間ほど離れたところにある。そこでロザムンドを愛でるつもりでいる。


離宮の使用人は王子宮から連れていくつもりだった。自分の事をよく理解しているはずだ。だが誰に下心があるのかわかっていない。自分にだけいい顔をしている者もいるはずだ。ロザムンドに歯向かう者がいれば容赦なく切り捨てるつもりだ。

あの姉のことだ、確実に侯爵家からもよりすぐりの者を送り込んでくるに違いない。



護衛は勿論だが、特別手当を出して王宮魔術師に結界を張ってもらうのも良いかも知れない。悪意を持った者が入り込めないようにするためだ。シメオンは自分がこんなに過保護になるとは思っていなかった。ロザムンドは七歳下で清楚な美人だ。



上の二人が派手目の美人なので自分のことは普通だと思っているところがある。

これから愛を沢山囁いて自信をつけさせるつもりだ。


色々と考えている内にロザムンドを迎えに行く時間になった。今日のデートはいつか行った王家の別荘だ。二人の時間がたっぷりあると思うとシメオンは楽しみで仕方がない。



侯爵家ではロザムンドの支度に余念がなかった。薔薇の香りのする湯船に浸かり

髪も薔薇のシャンプーで洗われオイルで仕上げをされた。マッサージはもちろん欠かさない。

「昨夜も遅くまで仕事をさせてしまったのにごめんなさいね」

「お嬢様をお美しくすることが楽しいのですから、お礼など言われなくても良いのですよ」

「せめて休憩はゆっくり取ってもらえるようにお姉様にお願いしておくから」

「お嬢様は昔からお優しいんですから」

「普通だと思うんだけど」

「今日のドレスはどれになさいますか?昼間のデートですから白地に赤い縁取りのある可愛い系で攻められますか?」

「そうね、それにするわ」

「ではお化粧と髪を纏めますので鏡の前にお座りくださいませ」

「お嬢様は清楚な美少女です。尊いです」

侍女たちの尊いという意味がわからない。だって私は普通なのだから。


その時玄関が騒がしくなった。家令が

「お嬢様、殿下がお出でになりました」

と告げに来た。ロザムンドは慌てないようにでも急いで玄関まで降りて行った。


黒いジャケットとパンツで脚の長さが強調されていた。

「今日は妖精のようだ、僕のロザムンド」

「シメオン様もとても格好良いです」

「さあ出かけようか、ああ、義姉殿ロザムンドをお借りします」

「傷一つ無いようお守りくださいね」

「もちろん、では」


馬車に乗ると

「やっとロザムンドを一人占め出来る。今日はいつか行った王家の別荘だよ。食事も用意するように言ってあるし近くを散歩しても楽しいと思うんだ」

「はい、シメオン様となら何処でも楽しいです」

「可愛い、今日は街歩きではないけどロザと呼んで良い?ロザはいつもいい香りがする」

「肌を磨かれる時のオイルの香りでしょうか」


シメオンは熱のこもった目でロザムンドを見つめ髪を撫でキスをした。キスは髪にとどまらず額や頬に唇に降ってきた。膝に乗せられ耳や首筋にもされ

「この前はこれで気を失ったけど少しは慣れた?」

と色気の漏れる声で言われたので、こくこくと頷くだけのロザムンドだった。


誤字報告有難うございます。

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