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夜会 2

お読みいただきありがとうございます。楽しんでいただけていればいいのですが。

 義兄が戻って来てヒギンズ侯爵家が揃った。扉の前には護衛が四人立っている。両親、姉夫婦の順で入場して行った。

控室にシメオン殿下が迎えに来られた。

「もう少し早く来るつもりだったんだけど、ごめん持たせたね、僕の女神、今日は特別美しい。僕の色のドレスが良く似合っている、思ったとおりだ。緊張しないで、側にいるから」

「シメオン様も素敵です」



ご尊顔を見ただけで安心ができた。この方の隣は居心地がいい。家族に守られていても場所が場所だけに緊張していたのだろう、肩の力が抜けるのがわかった。

「さあ行こうか。今日はずっと離れないから安心して」


そうして光り輝く場所へ入っていった。思った通り会場は光の洪水だった。色々なドレスが咲き乱れていた。決して侮られないようすっと前を向いた。

隣には愛しいシメオン様がいるのだ。そしてエスコートされているのは私ロザムンドなのだから。


痛いほどの注目が集まっているのが分かる。

陛下が声をお上げになった。良く通る声だった。

「皆のもの、今日はよく集まってくれた。知らせたいことがある。我が王家の第二王子シメオンに公爵位を授ける。そしてその婚約者にロザムンド・ヒギンズ侯爵令嬢を迎える。これは本人同士と王である私が決めたことだ。二人とも私の側に来るように」


静々と陛下の前に出た二人に婚約の証明書が渡された。これで貴族社会に恋愛と王命の結婚が周知されたことになった。

ロザムンドがそっと隣を見るとしてやったりという顔をしたシメオンが見えた。


会場は拍手が渦巻いた。収まった頃にシメオンたちがダンスを披露することになった。

シメオンは流石に踊り慣れていてリードが上手だった。一曲踊った後に国王夫妻、王太子夫妻と続き、それからは自由に踊っていいことになった。


「色々動いてくださって有難うございます」

「当然だよ、ロザムンドと早く結婚したいのだから」

そう言って頬にキスをされた途端会場からきゃあと言う悲鳴が聞こえた。


「色々言ってくる馬鹿なやつがもしかしたらいるかも知れないけど、僕だけを見ていて、ロザムンドを裏切ったりしない。愛するのは君だけだ」

「はい、わたくしもお慕いしております」

「はあ、可愛い。このまま部屋に連れ去りたいけど、仲の良いところを見せつけておかないと面倒がおきそうだから我慢して」

「シメオン様のためなら頑張れます」

「早く結婚したいよ。じゃあひと頑張りしようか」



王族の前には長い挨拶の列が出来ていた。挨拶の後はまたダンスが始まるようだ。挨拶の邪魔にならない静かな音楽が流れていた。

この人数をいつもアルカイックスマイルで受けている王族の方って凄いわと改めてロザムンドは感じ入った。列の始めの方に家族を見つけた時には思わず笑みが溢れた。


「控室で待っているから頑張りなさい」

姉が言ってくれた言葉が力になった。

「ヒギンズ侯爵家に泥を塗らないように精一杯務めます」

「殿下のそばで笑っていればいいのよ。幸せなところを見せつけてやりなさい」

そう姉が言うと家族は去って行った。



中だるみしそうなところに下の姉夫婦が来てくれた。相変わらず妖艶な姉は色気が半端ない。中身は真面目な伯爵夫人だが周りがそういう目で見てくるので、逆手に取って利用しているところがある。義兄がキリッとした顔で周りを威圧している。思わず応援したくなるロザムンドだ。



「殿下、この度はおめでとうございます。どうかロザムンドをよろしくお願いします。末っ子で甘えん坊なので危なっかしいところがありますの。たまに公爵家の方にも伺わせていただいてもよろしいでしょうか」

「もちろんだ、顔を見せてやって欲しい」

「ありがとうございます。では今度は結婚式の時かしら、ではね」

「お義兄様もお姉様もお身体にお気を付けてくださいませ」



長い挨拶がようやく終わりを告げた。ロザムンドはくたくただった。

殿下の腕に掴まっていたとしても長くヒールの高い靴で立っていたし、喉もカラカラだった。

「お疲れ様、僕の部屋でゆっくりしようか、飲み物を用意させるから」

「そうしたいのですが家族が心配して待っていると言っておりましたのでこのまま帰らせていただきたいのです」

「僕が帰って欲しくないんだ。話がしたいだけだから泊まってくれると嬉しい」

「家族が許可をくれるのであれば構いませんが」

「ではこれから説得に行こうか」



話し合いは難航した。家族は殿下を警戒するというより婚約者の立場のロザムンドの身の安全を心配していた。安全対策が万全なら構わないと思ったが今日は人の出入りが多い。王族の居住区域だと言っても安全ではないと断固突っぱねた。


不敬ではないかしらと思ったが疲れて眠くなったロザムンドはどうでも良くなっていた。

「今日は帰ります。殿下さえ宜しければ、また明日登城致しますのでお許しくださいませ」

「ではデートをしよう。迎えに行くからそのつもりで。護衛は腕の立つ者を数人を連れて行くので安心して欲しい」



王子の執着に家族は呆れ気味だったがこれで連れて帰れると胸を撫で下ろした。

侯爵家の護衛もかなりの強さを誇っているが王家の騎士団長でも連れて来るつもりなのだろう。ヒギンズ侯爵家の四人は遠い目になった。









語字報告ありがとうございます。お楽しみいただけたらと思います。

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