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隣のアリスちゃん  作者: sazamisoV2
第一章
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第三十八話 ぼっちと体育祭④

 そして迎えた放課後。


「それじゃあ余った織羽志くんと國乃さんがペアと言うことで」


 百メートル走に立候補した俺は見事にジャンケンに敗れ、他の競技でも全敗し、余っていた二人三脚になった挙句、これまた余っていたアリスとペアを組むことになった。

 担任が発した対ボッチ特攻魔法『ジャアク・ミタイヒ・トトクンデ』が発動してしまったのでもはやどうしようもなかった。なんでこうなるんですかね。


 結果的に思惑通りに事が進み、精々してやったりといった顔でもしているんだろうと思ってアリスを見てみると、青ざめた顔で目を瞑りながら口を真一文字に結んでいた。

 反省するくらいなら最初からしなきゃいいだろうに、人の良さが抜けきらない奴だ。

 まぁ許さないけど。


 しかし、一番の問題はクラス対抗リレーの出場者を決める際に起こった。 


 クラス対抗リレーは、その名のとおりクラスの代表という看板を背負って走るため、大抵足の速い奴らの中から選ばれる。


 一番に名前が挙がったのは眞城だった。


 今のギャルギャルしい見た目からは想像もできないが、眞城は中学の時に陸上部に所属しており、短距離で全国大会にも出場したことがある。

 それだけ輝かしい実績があるにもかかわらずなぜ高校で帰宅部なのかはわからないが、少なくともこのクラスで一番速いのは間違いない。


 その次に野球部でも足の速い牧村、さらに眞城のグループから吉原と佐伯(どちらも男で陽キャ)が選出される。

 眞城と牧村以外の二人はそんなに速くはないらしいが、リレーはチームワークも大事なので、気心が知れているという意味ではベストな組み合わせと言えるだろう。


 誰も文句は言わなかったし、順当な選出だと思った。


 だが……。


「ちょっと待って」


 そう言ってまとまりかけた意見に待ったをかける人物がいた。


 眞城だ。


 何を言い出すんだろうとクラスメイト達の視線が眞城に集中する。


「リレー、推薦したい奴がいんだけど」


 その発言に教室内がざわめく。


 さっきまで行われていた選手の選出について眞城は一切口を挟んでいなかった。

 眞城の名前を挙げたのは取り巻きだし、牧村や他二人の名前を挙げたのも取り巻きだった。

 どうやら当の本人はそれでは納得していなかったらしい。


 しかし、クラスの中心であり、かつ足が一番速い眞城が推薦したい奴がいるといえば一度決まったものを覆しても誰も異議は唱えない。


 じゃあそいつは一体誰なんだと一気に教室内が盛り上がったところで、眞城は一つの席を指さした。


 俺の、隣の席を。


「國乃。あんたよ」


「…………え?」


 アリスが困惑の声を上げる。

 しかしそれはアリスだけのものではなかった。


 なぜ國乃なのかという疑問が教室のあちらこちらから上がっていた。

 そしてそれは俺も同じだ。


 クラス対抗リレーは注目の度合いも盛り上がり方もまるで違う。

 場合によってはクラスが優勝するかしないかを争う重要な局面にだってなりうる。プレッシャーだって相当なものだ。

 そんな大一番をアリスが耐えられるとは思えない。


 それに、アリスは眞城と仲違いしたという噂で距離を取られているうえ、その容姿を妬んで悪く言っている奴らも少なくない。

 そんな場でアリスが失敗でもしようものなら、周囲からどんな目を向けられるかわかったものじゃない。

 そうなったら友達を作るどころの話じゃなくなってしまう。


 当のアリスはクラス全員からの注目を浴びて完全に思考停止してしまっていた。

 たかだか三十人程度に見られただけでこんな風になっているのだから、全校生徒の注目を浴びながら走れるわけがない。


 止めなければならない。そう思った。


 だが、そうこうしているうちにも教室内の空気はアリスを選手にする方向で進んでいく。

 あの眞城が言うんだから速いんだろうとか、國乃が出ると盛り上がりそうだとか、そんな無責任な言葉が飛び交い始めると、もはや収拾なんてつけられそうになかった。


 そもそも、普段から碌に発言もしていない俺が突然やめろと言い出したところで誰も聞きはしない。

 クラスメイトがどんな反応をするのかなんて容易に想像できる。何やってんのあいつと冷たい目線を寄越されるだけだ。


 それに、眞城には何か考えがあるのかもしれない。

 アリスのことをずっと気にかけてきたのだから、まさか陥れるような真似はしないはずだ。


 何もしないのが正しい。

 ボッチはボッチらしく、黙っているべきだろう。

 そう結論付けて、俺はため息をついた。


 すると、『ガタン!』と、机と椅子とがぶつかる大きな音が教室内に響く。


 ざわついていた場が急に静まり返り、クラスメイト達が何事かと音の出どころを注視する。


「…………先輩?」


 気が付けば俺は立ち上がっていた。

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