第三十四話 ぼっちと陽キャ⑭
結果だけ言うと、作戦は大失敗に終わった。
作戦会議をした翌日の放課後の帰り道。
俺の隣を歩いているアリスは、挙動不審に辺りを警戒しながら、何かに怯えるように身を縮こまらせている。
何に怯えているのかは言うまでもない。
「先輩。あたし、明日からしばらく学校休もうと思います……」
アリスは立ち直れないくらい深刻な精神的ダメージを負ってしまったらしい。
その原因となった眞城のアリスちゃん攻略作戦はある意味俺との相談の結果なので若干の罪悪感が湧かないでもないが、こんなにこんがらがったのは間違いなく眞城のせいだった。
「で、でもまぁ、眞城も悪気があって突っかかってきたわけじゃないと思うぞ」
実際そのとおりなのだが、アリスはジトっとした目で俺を見てくる。
「……先輩、喫茶店で眞城さんたちと話した後からやたらと肩を持つようなこと言ってますけど、ほんとに何もなかったんですか?」
どちらに肩入れしているというつもりはないのだが、アリスには眞城側に寄っているように見えているらしい。
「まさか先輩、何か弱みを握られて……!?」
見当違いも甚だしい勘違いを始めるアリス。眞城はどんだけ信用されていないんだろう。
さすがにあらぬ疑いをかけられて評判を落とされるのは可哀そうなので、フォローしておく。
「違う。まぁ何もないと言ったら嘘になるけど、お前に話したところでなぁ……」
「何ですか。言ってみてくださいよ」
そこまで言うのならと、俺は真実を口にした。
「眞城から、お前と仲良くなるためにはどうすればいいかって相談されてるんだよ」
「その冗談はさすがに面白くないです」
真顔で言われた。
わかってはいたことだが全く信じていない。
「別に冗談じゃ……」
するとアリスは、それまでため込んでいたものを爆発させるかのように一気にまくしたてた。
「今日あたしが眞城さんに何をされたか知ってるでしょ!?朝から因縁を付けられ、昼には嫌味、授業中は丸めた紙を投げつけてきて嫌がらせ!トイレに行けば出待ちされるし、さっきなんてお金をたかってきたんですよ!?きっとあたしが嫌いって言ったことを根に持ってるんだ!だからこんな嫌がらせを……そうだ、そうに決まってる!」
今日一日、眞城の行動に対してアリスがどう思っていたのかが赤裸々に明かされていた。
ちなみに、
因縁→挨拶しようとしただけ
嫌味→雑談しようとしただけ
紙→手紙を渡そうとしただけ(授業中に小さく丸めた紙を回すアレ)
出待ち→話す機会をうかがっていただけ
金をたかる→一緒に寄り道しようとしただけ(「あんた、金ある?」と聞いたせい)
案の定どれもこれも完全に裏目に出ていた。頭が痛くなってくるなぁ……。
「でも、お前もお前だぞ。眞城が絡んできたってことは、それだけ謝るチャンスがあったってことなのに、何も言わなかったんだから」
「そ、それは……」
一応アリスなりに頑張ろうとしていたのは知っているが、まともな会話はできていなかった。
やはり眞城を前にするとどうしても苦手意識が出てしまうらしい。
眞城のアプローチの仕方が酷すぎたというのも確かにそうだが、それを押しのけて言葉にすることもできないわけではなかったはずだ。
それはアリスもわかっているのだろう。
ぐぬぬと唸った後、行き場をなくした無念さを晴らすように、キーキーと喚く。
「せ、先輩は一体どっちの味方なんですか!」
「お前な……そんなことも言わなきゃわからないのか?」
「あ……す、すみません。ちょっと感情的になっちゃいました。そうですよね。あたしのために色々考えてくれてるのに、疑うなんて……」
「そんなの、眞城に決まってるだろ」
「ってあたしじゃねぇのかよ!?え、なんで!?なんであたしじゃないの!?WHY!?」
「そりゃお前……」
「いや、やっぱりいいです!やめて!聞きたくない!聞きたくなぁい!」
眞城とアリスの仲が修復される日はまだまだ遠いようだった。




