第三十三話 ぼっちと陽キャ⑬
ただ、俺が言ったことはあながち嘘というわけでもない。
昨日は頑張ると言っていたが、そもそもアリスは眞城と仲良くなることにあまり積極的じゃないのだ。
今の眞城にそんなことを言ったら泣き崩れてしまうかもしれないので言えないが、首の皮一枚でつながっているという認識は持った方がいい。
ただでさえ眞城はアリスからしてみれば誤解を与えやすい言動をしてるんだから、慎重すぎて丁度いいくらいのはずだ。
「……ていうか、あんたはどうやってあいつと友達になったわけ?」
「俺はあいつの友達じゃない」
ぎろりと眞城が睨んでくる。俺もその睨むだけで人を黙らせられる能力欲しい。
「じゃあなんで一緒にいんの?ストーカー?」
「誤解を生むようなことを言うのはやめろ」
なんなら、家を特定したり待ち伏せしたり大量のメッセージ送ってきたりストーカーみたいなことをしているのはアリスの方だ。
眞城は俺の答えを待っているのかじっとこちらを睨んだまま黙っている。
眞城にとっては捨て置けない疑問らしい。
俺がアリスと一緒にいる理由は、突き詰めればアリスに付き纏われないようにするためという一言に尽きるわけだが、それをアリスとお近づきになりたい眞城に説明する勇気はなかった。
「成り行きで」
「あんたみたいな根暗陰キャが成り行きなんかであいつと仲良くなれるわけないでしょ」
ばっさり切られる。辛辣すぎて泣きそう。
まぁそのとおりなんだけどね!
別に嘘を言っているつもりはないが、眞城としては納得できないらしい。
アリスの本性を知っているか知らないかでアリスに対する認識がかなり違うので仕方ないかもしれない。
でもこの話題が出たのはいい機会だ。
反論がてら聞こうと思っていたことを聞いてみる。
「お前こそ、どうしてそうまでしてアリスと友達になりたいんだ?」
「なんであんたにそんなこと言わなきゃなんないのよ」
「お前な……仮にも俺はお前に協力しようとしてる身だぞ。動機を知る権利くらいあるだろ」
少し卑怯かもしれないが、確実に知っておきたい情報でもあるので仕方ない。
大丈夫だろうとは思っているが、もしも眞城がアリスのことを愛玩マスコットにしたいだとか、男を近づけさせるための旗印にしたいだとか言い始めたら眞城との関わり方を考えなければならない。
ここは強引にでも聞いておくべきだろう。
眞城は憎々し気に俺を睨みつけていたが、観念したのか視線を外してぼそりと呟く。
「……か、可愛いから」
「外見だけってことか?」
それだとアリスが感じていたとおりになってしまうわけだが……。
胡乱気な目で見ていると、眞城は吐き出すように言った。
「あとは、その……なんとなく、そう思ったのよ」
「というと?」
「うまく説明できないけど、友達になりたいって思ったのよ。なんか文句あんの?」
そう言って紅茶を持ち上げてぐびぐび飲み始めた眞城の耳はすこしだけ赤くなっていた。
眞城の答えを聞いて正直ほっとしていた。
まさに奈々衣の言っていた『友達になるための一歩』というものを、眞城はアリスに感じたということだから。
余計な心配だったようだ。
「聞いたんだから、ちゃんと協力しなさいよ。もしあんたのせいで仲良くなれなかったら、ぶん殴って校庭に埋めたあと自転車で轢いてやるから」
そう言う眞城の言葉も顔も相変らず恐ろしいものに違いなかったが、なぜか悪い気はしなかった。
照れ隠しだとわかったからだろう。照れ隠しだよね?
「わかったよ。じゃあまずは……」
そうして、眞城のアリスちゃん攻略作戦が幕を開けたのだが――。




