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隣のアリスちゃん  作者: sazamisoV2
第一章
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第二十六話 ぼっちと陽キャ⑤

「……と、いうわけなんだ」


 牧村の説明自体は十分もかからずに終わった。

 ポテトの最後の一本を取って咀嚼しながら、俺は牧村に言われたことを頭の中で反芻する。


 結論から言うと、眞城はアリスのことを嫌ってはいなかった。嫌っていないどころか、むしろ好きと言ってもいいくらい気に入っていた。


 当然ながら、そんなことを急に言われたところで信じられるわけがないと俺は言った。


 だが、そういう想いがずっと眞城にあったと仮定して思い返してみると、なるほど、牧村が言っていた『ましろは不器用』という言葉も妙に腑に落ちるのも確かだった。


 以下、牧村が語った眞城の本音の一部である。


―――――


 アリスが転入してきたとき、友達になりたいと思って真っ先に声をかけた。


 だが、形式上は友達になれたものの、何を話せばいいのかわからず自分からはうまく話しかけられなかった。


 アリスが男子からの告白を断って落ち込んだとき、これを機に仲良くなろうと勇んで慰めようとしたら逆に怒られて(例の『気安く触るんじゃねぇぶっ殺すぞ』の事)酷く落ち込んだ。

 アリスが怒った理由は自分の下心を見透かされたからだと思い、距離を取ることにした。


 だが、逆に距離を取ったことでアリスが眞城の逆鱗に触れたと周りが勘違いをし、意図せずアリスの悪い噂が流れ始めた。


 眞城はその噂を誤解だと伝えようとしたのだが、口下手のためことごとく誰にも伝わらず、何とかしたいと思っていたがどうにもできなかった。


 校舎裏に俺を呼び出したのは、俺が最近アリスと仲が良さげに見えたため、告白事件のときの謝罪の場と、仲を取り持ってもらおうとしたから。

 そこで最近のアリスがどう思っているのかを俺から聞き、誤解だったとわかって、感極まって泣いてしまった。


 ちなみに『ムカつく、絶対に許せない』発言はアリスにではなく、アリスがそこまで思いつめるようなことをしてしまった自分に対して言っていた。等々――。


―――――


「どうだ?理解できたか?」


「それは、まぁ、一応」


「あぁよかった。ぶっちゃけうまく伝えられるかどうか不安だったんだ。織羽志の理解力が高くて助かったぜ」


 牧村は、ふぅと大きく息を吐くと背もたれに寄りかかり、一仕事終えたような清々しい顔をした。


 しかしながら、正直未だに頭が混乱している。

 この後「実はドッキリでした!ひっかかったなボケ!」とどこからともなくプラカードを取り出されるんじゃないかと邪推してしまう。どちらかというとそっちの方が現実的だとすら思えた。


 でも、牧村が説明している途中から俯いてぽろぽろと涙を流しはじめた眞城を見て、それが嘘でないと信じざるを得なかった。

 その反応はとても人を欺こうとしている奴がするものとは思えなかったから。


 そして、そういった諸々の経緯があってからの『協力しろ』だったというわけだ。


「牧村が言いたいことはわかったし、眞城の気持ちもわかった」


 俺がそう言うと、牧村はニッと笑い、眞城は表情を固くさせる。


 協力するのか、しないのか。


 そんなもの、考えるまでもなく決まっている。


「協力する。全力でな」


 右手を差し出すと、牧村は爽やかな笑顔を浮かべながら同じように右手を差し出し、俺達は力強い握手を交わした。

 その場の流れで眞城にも握手を求めたのだが、排水溝を見るような嫌そうな顔をされたのですぐに引っ込めた。眞城さん俺の事やっぱり嫌いですよね。


 しかしながら、これはもはや勝ったと言っても過言ではないのではなかろうか。


 眞城がアリスを嫌っているというのが誤解だったとわかった今、アリスを呼び出して説明してやれば全ての問題が解決する。

 頑張ってきたアリスには悪いが謝罪なんてあってないようなものだ。むしろ状況をややこしくしないためにもないほうがいいまである。


 そうしてめでたく二人は仲直り。

 ましろはアリスと仲直り出来てハッピー、アリスも夢に近づけてハッピー、俺もアリスから解放されてハッピー。文句のつけようがない最高のハッピーエンドじゃあないか。


 今日の夕飯はさぞ美味しく感じることだろう。

 久々に奮発して寿司の出前でも取ってしまおうか。

 フライドチキンを食べられないほど大量に買ってきてもいいかもしれない。ホールケーキも用意しよう。

 そうして『アリスちゃん大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!』と題した盛大なパーティを開くのだ。


 ガハハ!勝ったな!


 しかし、そうは問屋が卸さないのが現実というものである。

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