第二十四話 ぼっちと陽キャ③
「ちょっと待ったちょっと待ったちょっと待ったぁ!」
砂埃を巻き上げながら結構なスピードでバタバタと走ってきたその誰かは、俺と眞城のすぐ目の前で止まった。
大きく深呼吸をして、爽やかに短髪をかき上げた男は、俺と眞城を交互に見て「あちゃー」といった感じで額に手をあてる。
「くそ、間に合わなかったか」
その男子生徒には見覚えがあった。同じクラスの牧村洋平だ。
直接話したことはないが、クラスの男子の中心人物で、立ち位置的には男版眞城みたいな存在。
鉄面皮の眞城と違い、明るく常に笑顔を絶やさない陽キャの鏡のような奴で、基本的にいつでも誰かと一緒にいてわいわいやっているようなタイプ。高身長で運動部らしく髪を短髪に狩り上げており、爽やかという言葉がよく似合う男だった。
そんな牧村は、俺の視線に気付くと、ニッと笑って言った。
「初めて話すよな。俺、同じクラスの牧村。改めてよろしく!」
「ああうん、よろしく」
なんというか……爽やかな奴だなぁ。爽やかすぎて語彙がどこかに吹っ飛んでっちゃった。
「どうして牧村がここに?」
「ほんとは俺もましろと一緒に最初から織羽志と話す予定だったんだけど、ましろが先走っちゃってさ」
「お前も?」
「ましろ一人じゃどうせまたこじれてわけわかんねぇことになるだろうと思ったからな」
「あー……つまり、どういうこと?」
「なんつったらいいんだろなぁ……」
ガシガシと頭を掻くと、牧村は思案顔をする。
その間も眞城は何も言わず、ただ鼻をぐずぐずさせているだけだった。
この人いつまでべそかいてんだろう。いつもとキャラが違いすぎて別の意味で怖い。
だが、眞城が何も言わないということは、牧村の言うとおり最初から二人で俺と話をしようとしていたということなのだろう。一緒になって俺をシメるために呼んだという風にも見えないし。
しばらくああでもないこうでもないと言っていた牧村は、顔を上げて言った。
「ましろは、滅茶苦茶不器用なんだ」
「はぁ……」
「言ってることに思っていることが付いていってないって言えばいいのか。だから俺が通訳として来たってわけ」
そう言われてもいまいちピンと来ない。
「その辺はあとで説明するよ。それで、ましろとどこまで話したんだ?あぁ、國乃とのことならある程度事情は知ってるから大丈夫だ」
眞城を見てみるが、どうやら話す気も止める気もないようだったので、校舎裏に来てから話したことをかいつまんで牧村に聞かせた。
話を聞き終えると、牧村は呆れたように大きくため息を吐いて眞城を見る。
「お前なぁ……」
「うっさい」
突き放すように眞城は言うが、牧村は慣れているのか全く気にした様子はない。
それから牧村は再び俺の方に向き直って言った。
「織羽志。ましろは別に國乃に対して怒ってるわけじゃない。むしろ逆だ。自分に怒ってるんだよ」
「悪い、さっぱりわからない」
「そうだよなぁ。仕方ない、順を追って説明するか。立ち話もなんだから、どっか落ち着ける場所にでも行こうぜ?この後空いてる?」
俺もあとは家に帰るだけだったので頷いて答えると、「じゃあ鞄もって校門前集合な!」と言い残してさっさと歩き出してしまう。眞城も無言で牧村の後を付いていった。
嵐のような出来事にしばし呆然としてしまう。
いや、ほんと、なんなんだろう。
眞城が不器用なのはまだわかるとして、アリスに対して怒っていないとか、自分に対して怒っているとかいうのがまったく理解できない。ツンデレにしてもツンがガチすぎる。
話が急展開過ぎて追いつけていないが、説明してくれるというのなら付いていかないわけにもいかなかった。




