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隣のアリスちゃん  作者: sazamisoV2
第一章
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第二十一話 ぼっちと日常⑧

「あたしはあなたが思っているよりもずっと嫌な人間だと思います。多分、というか絶対、面倒くさいって思います。だから……いたっ!?」


 アリスの言葉を遮って、頭に手刀を叩きこんだ。 


「そんなんだから陰キャって言われるんだ」


 何かを言いたげに見上げるアリスに向かって言う。


「お前と友達になりたいかなりたくないかなんて、お前と接した奴が決めることだ。奈々衣はお前を見て、話して、友達になりたいって思った。それで十分だろ。大体、友達作ろうとしてるやつが自分からそれを拒否ってどうするんだ」


「それは奈々衣さんが優しいからですよ。優しいから、そう言ってくれるんです」


 アリスの言葉に、奈々衣は首を横に振った。


「私は優しくなんかありませんよ。愚痴だって言うし、苦手な人だっています。誰彼構わず友達になりたいとも思いません。でも、アリスさんはそんな私を優しいと言ってくれました。多分、それと同じです。アリスさんは、こんな私とは友達になってはくれませんか?」


 奈々衣の問いに、アリスは答えなかった。答えられなかったと言ったほうが正しいかもしれない。


「確かに見た目だけじゃわからないことの方が多いですけど、見た目だけでわかることもあると思うんです。私はアリスさんを見て、アリスさんのことをもっと知りたい、仲良くなりたいって思いました。私のことも、もっと知ってほしいって今は思っています。そう思えたことがきっと、友達になるための第一歩だと思うんです」


「友達になるための、一歩……」


「無理に素を見せてほしいとは思いません。でも私は、さっき兄さんと話していた時のようなはしゃいでるアリスさんも好きですよ。だから、私にも気を使わないでください。その方が私も嬉しいですから」


「…………そう、ですか。そんなことを言われたのは初めてですよ、あたし」


 俯いたアリスの体は小刻みに震えていた。ずびずびと鼻を啜る音も聞こえてきて、泣いているのは明らかだった。


 そんなアリスを見て、奈々衣が慌てる。


「ア、アリスさん?」


「あーあ、奈々衣が酷いこと言うからアリス泣いちゃったよ」


「えぇ!?す、すみませんすみません!私なんかが、生意気でしたよね!?ああ、ど、どうしよう!兄さん、私どうしたらいい!?」


「ほっとけば勝手に泣き止むんじゃないか?」


「えぇ!?」


「……兄妹揃って酷い人達ですね。散々悩んでたあたしが馬鹿みたいじゃないですか」


 目を擦りながら言うアリスの言葉を聞いて奈々衣がいっそう顔を青くさせる。


「あの、アリスさん。私そういうつもりじゃ……」


「アリスちゃんって、呼んでくれませんか?」


「え?」


「奈々衣さんが言ったんじゃないですか。あたしが奈々衣さんのことを友達だと思ったとき、そう呼ばせてほしいって」


「それって……」


 キョトンとする奈々衣に、目を赤くさせながら、アリスはぶっきらぼうに言った。


「言っときますけど、あたし相当面倒くさいですからね?」


「ほんとにね」


 横から口を挟むとアリスが叫ぶ。


「いやそこは黙っとけよ!?今大事な事話してる途中だったでしょうが!?」


「だって昼休み終わりそうだし、長くなるなら改めた方がいいんじゃないかと思って」


「どんなテンションで改めるの!?改まんないでしょ!?微妙な空気にしかなんないでしょ!?」


「まぁ時間はいくらでもあるんだし、ゆっくり伝えていけばいいじゃないか。お前の異常性については」


「い、異常性!?そこまで酷い言葉生まれてこの方言われたことないんですけど!?」


「ふふっ」


 そんな俺たちのやり取りを見て、奈々衣が笑った。


「アリスちゃん」


「は、はひっ!」


「私のことも、奈々衣って呼び捨てにしてくれませんか?」


「え!?」


 奈々衣の期待を込めた目で見つめられて、アリスは目をぐるぐるさせる。


「それは、その、追々というわけには……」


 答えずに笑顔のままアリスを見つめる奈々衣。

 有無を言わせぬ無言の圧力。家で見せる顔とは違った妹の姿に、なんだか新鮮な気持ちになった。


「そういえばさっき奈々衣ちゃんって呼びたいみたいなこと言ってなかったか?」


「追い打ち!?ここで!?」


「本当ですか?兄さん」


「ああ。それはもう嬉しそうに言ってた」


「晒さないで!あたしの心を赤裸々に晒さないで!」


「アリスちゃん、そんなに私のことを……」


「ち、違いますから!そういうんじゃないですから!」


「違うんですか?」


「あぅ……」


 恥ずかしさで顔を真っ赤にしたアリスは遂に耐えられなくなったのか、


「あ、新手のいじめだあああああああああああああああああああああああああああああ!」


 そんなことを叫びながら、教室から逃げ出していった。

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