第十四話 ぼっちと日常①
「あ、先輩!おはようございます!」
翌日の朝、学校へ向かう道すがら声をかけられた。
声のした方を振り返って見てみると、そこにいたのは眩いくらいの金髪を携えた青い瞳を持つ女子生徒。
「俺に後輩はいないので人違いだと思います」
無視して行こうとするが、アリスは気にした様子もなくうざい絡み方をしてくる。
「もぉ先輩ったら!昨日の夜あんなに熱く語り合ったのに、忘れたなんて言・わ・せ・な・い・ぞ?」
「うわぁ……」
「おいなんだその顔は」
「気持ち悪いものを見る顔だけど」
「…………」
泣きそうになるアリス。本当にこの手の言葉に弱いなこいつ。
べそかきながらついてこられても困るので仕方なく対応する。
「大体熱く語り合ったなんて事実ないだろ」
「またまた、先輩ったら何言ってるんですか」
とぼけたように言うアリスだが、冗談を言っているようにも見えない。
昨日の喫茶店からの帰り際、何かあったときに連絡手段はあったほうがいいとアリスに強く言われしぶしぶ連絡先を交換し、夕食を食べ終えてからアリスとメッセージのやりとりを少しだけしたのだが、もしやそのことを言ってるんだろうか。
でも、途中で面倒くさくなって電源を切ってしまったので、結局三通くらいしかやり取りはしていないはず。
嫌な予感がしてスマホの電源を入れると、すぐに新着メッセージの通知が映し出される。
『新着メッセージ 百八十五件』
「ひっ」
その数を見て俺は短い悲鳴を上げてしまった。
恐る恐る開いてみると、そこには背筋が凍るような見たこともないくらいおぞましい世界が広がっていた。
『先輩って誕生日いつなんですか?ちなみにあたしは十二月二十五日です』
『今日の夜ご飯はピザトーストです!おいしそうでしょ!』
『先輩今何してます?あたしはお風呂入ったところです!』
『お風呂入ってるときに歌うと幸せな気分になりますよね!』
『明日の数学の宿題やりました?』
『なんだか今日は眼が冴えて眠れないです!』
ざっと目を通しただけでもこんな感じ。
そんなメッセージが二十時くらいから夜中の二時くらいまで延々と書き連ねられていた。
普通であれば、こんなどうでもいいやり取りは極々当たり前に行われていることなのかもしれない。
それにしても多すぎるとは思うが、そんなことは今問題じゃない。
問題は、この大量のメッセージが返信もしていないのに一方的に送りつけられているということだった。
「な、何なんだこれは……」
普通に怖い。
アリスを見てみると、ぽけっとした平和な顔で俺の顔を覗き込んでいる。
そこには何の疑問も浮かんではいない。
「なぁ、アリス。これ……」
「あ、それあたしが昨日先輩に送ったメッセージじゃないですか!」
何かの間違いであってほしいと期待したのだがこの反応を見る限りそうではないらしい。
え、怖い……。
「ねぇなんで返信も来てないのにこんなに送り付けてくるのお前は。おかしいと思わないの?」
「え、なんで?」
本当にわかっていないと言いたげな顔で首をかしげるアリス。
こいつやべぇ奴だ。いやわかってはいたことだけれども。
「そんなことよりも、早く行かないと遅刻しちゃいますよ!」
「いやそんなことで片付けていい話じゃねぇから。やめて本当に。こんなの毎日送られたら俺発狂しちゃうよ」
「いやだなぁ毎日なんて送りませんよ。夜更かしするのは嫌いじゃないですけど、さすがに昼間眠くなっちゃいますし。せいぜい二日に一回くらいにします」
「いやおかしいおかしい。二日に一回とか三日に一回とかいうそういう問題じゃないから。何の嫌がらせだよ。ていうか昨日の段階でメッセージは不要だって言っておいただろ」
「え!?あれ、送ってきていいよって言うフリじゃなかったんですか!?」
「どんな解釈したらそうなるんだ。とにかく俺に無意味にメッセージを送るのはやめろ。次やったらマジで着信拒否するからな」




