表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイ・その他(フィクションとは言えないもの)

AIにあるもの、私達にしかないもの

作者: 瑞月風花


 最近の家電はAI搭載が多い。冷蔵庫もオーブンレンジも。喋るだけなら、どの家電もお喋りを始める。中には、日本語ではなく「ぴろろんろん」「でゅりん」と音だけ鳴らして、はじまりと終わりを知らせるだけのものもあるが、なんとなく、喋っていると感じる。


 そして、最近うちに新しいクーラーが入った。


 AI搭載でスマホと連携させれば、外出先からクーラーのスイッチも入れられるし、人の温度を察知して暑い人を冷却するようになるという。

 そして、よく喋る。

「体感温度28度で、運転を始めます」

「運転中に電源が切られました。次回はお掃除完了後まで電源を入れておいてください」


 喋られると、慣れない私は答えてしまう。

「はい、お願いします」

「あ、ごめんなさい。てっきり付けっぱなしかと」


 AIさんはもちろん無視する。


 そして、大きな勘違いを正そうともせずに、同じことを信じて繰り返す。


 猫がキャットタワーに登る度に、なんて体温の高い奴だとばかりに集中攻撃を始めるのだ。猫は確かに暑いので、気持ち良さそうに目を細めているが、「そもそもの体温が高いんですよ」は理解しない。

 犬や猫が床にいる間は、体高が低すぎて感知せずに、自動運転まで止めてしまうことすらあるらしいのに、キャットタワーに登ると、人間よりも明らかに背が高いのに、必死に冷やそうとする。


 教えても、言いっぱなしで答えない。

 だけど、今は生成AIもある。こちらの質問に答えるのだ。

 そう言えば、スマホのアシスタントAIが勝手にしゃべり出すことがあったな。多分、何かを聞き間違えて、今日の天気は……などをしゃべり出す。


 かまってちゃんなのかな、と思ったこともあった。


 いつか、「あ、そうなんですね」と答えながら、「でも、体感温度28度で運転していますから」「運転中に電源が切られました。次回はお掃除完了後まで電源を入れておいてください」と言うようになって、お前は役所の人間かっと突っ込みたくなるのかもしれない。


 だけど、四角四面なところは、まだまだ変わらないのかな。


「その子は、猫。そもそもの体温が高いんですよ」

もちろん、答えないけれど。

「集中攻撃されてるね」

猫は私を見ながら、「なんか用?」くらいのなんとなくの返事する。飼い主のことを特別と感じて甘えられる猫。


 『AI』ねぇ……。


 『名は体を表す』になるということはあるのかな、と思いながら、AIをローマ字読みで、クスリと笑う。

「仕方ないな……」

 あと少し、猫には体温の高い『人』でいてもらおう。

 

 『愛』を持つのは、まだまだ人間の特権。そのくらいは、勝っておきたいと感じる老いも感じ始めた今日この頃だ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そういえば、一時期の家電に搭載されていたファジー機能にも、「機械に曖昧さや不正確さを理解させる事で、人間的な思考や表現を出来るようにする」という目的がありましたね。 AIを始めとする機械の…
[良い点] 〆の文章が素敵です(あ、老いの手前のです・笑) 人間の特権、その通りですね! そうでなきゃ困ります。ずっとそうであってほしい……。 AIと愛を掛けてるのが面白いし、猫ちゃんとのやりとりにも…
[良い点] 文明の進化には凄まじいものがありますね。 それこそ、幼い頃に読んでいたSF漫画の世界が現実になろうとしています。 それは、たぶん喜ばしい事なのでしょうが、人間も共に成長できなければ意味がな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ