思い出す記憶1
何とか危機を脱し、戻った私はジャックに全てを話した。
「なるほど……セリナさんと互角に渡り合う少年とは……」
「私の見立てだと、恐らく彼は魔王の配下。それも実力的にかなり上の立場ね」
「今は様子見……ということで退いたのでしょうか」
「恐らく……ね」
ジャックは深刻そうな表情を浮かべ、顎に手を当てる。
「近いうちにまたやってくるかもしれません。急ぎ剣を完成させますので……セリナさん、これを」
ジャックは一般的な剣を私に差し出し、私は何も言わずに受け取る。
「今の内に剣には慣れておいてください」
「……分かった」
私が立ち上がるとジャックは作業に取りかかり、私は里の一目につかない場所に向かった。
数年ぶりに剣を握った私は、静かに目を閉じ、集中力を高めた。
瞼の裏で相手がいることを想像し、数回ほど剣を振る。
体って本当に不思議。握っただけじゃ感覚を取り戻す自信はなかったけど、いざ振ってみるとすぐに慣れた。
『意外とやれるものだな。昔の感覚は中々消えないってものか? それとも、お主の才能が補助しているのか?』
私の動きを見て、思わず口を挟むスカーレット。
だけど、感覚を取り戻した程度では、私は納得しなかった。
「まだ剣に振り回されている。それに近距離を意識し過ぎて、魔法を唱えるのがワンテンポ遅れている。これじゃ……ダメだね」
『うむ。真剣なのは分かるが……セリナ。少し休め』
「休め? 私の話を聞いていた?このままじゃダメなのよ。このままじゃ、魔王どころかあの子にも……」
再度体を動かそうとした私だが、突如眩む視界に思わず跪く。
「うぅッ……」
『言わんこっちゃない。そもそも先の戦闘で体力をかなり使っている。無理をすると元も子もないぞ』
悔しさで思わず舌打ちをしてしまったが、スカーレットの言うことは一理ある。
感覚を取り戻すことも大切だけど、焦るのは間違っている。
「……分かった。今日はもう休むよ」
納得したスカーレットはそれ以上発言する事はなく、私は剣を鞘に収めてレシスの家に向かった。
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数時間ぶりにレシスの家に顔を出すと、待っていたと言わんばかりにシャルロットが私に抱きつく。
「やっと戻ってきた! セリナさん! 魔法のことで聞きたいことがあるんだけど……」
は、はぅ~!! か、可愛すぎるッ!! こんなに甘えられたら何でもしちゃいそう。
「わ、分かった。分かったから離れてね」
素直に言うことを聞いたシャルロットは嬉しそうな笑みを浮べて魔道書をパラパラとめくる。
どうやら火炎魔法の詠唱が出来ないようだった。
自分で使うのは簡単だが、教えるとなると少し難しい。
自分の中で悪戦苦闘しながらも、シャルロットに火炎魔法を教えるのだがある瞬間、私の脳内で数時間前の映像が流れる。
「……ティ……ル? ティル?」
魔道書を真剣に見つめ、火炎魔法の詠唱を行っているシャルロットを見て、私はティルという少年の素性を思い出し、胃の奥から込み上げてくるものを必死に抑え込みながら個室に駆け込む。
「え? セリナさん!?」
「紅茶をお持ちしましたよ~……って、あれ?」
シャルロットとレシスはお互いに顔を見合わせ、同時に首を傾げる。
個室の内側から鍵をかけ、込み上げてくる吐き気を必死に抑えながら、私は深く息を吸う。
私の異変に気づいたスカーレットだったが、記憶を見たのか、声を掛けてくることはなかった。
「はぁ……はぁ、そんな。こんなことって……」
再び吐き気を催し、私は吐くものかと口に手を当てる。
何とか耐え凌ぎ、やっとの思いでベッドに転がり、呼吸を整える。
『……ようやく落ち着いたか?』
私の様子が安定したのを知ったスカーレットが声を掛けてくる。
上手く声を出すことが出来なかったが、私はコクリと頷いて、落ち着いたことを伝える。
『……まさか、シャルロットの親友が魔王の配下になっているとはな』
「信じたくない……信じたくないけど、現実なんだよね?」
『ああ……』
数秒ほど沈黙が流れ、私は思わずスカーレットの力を頼ろうとした。
「スカーレット……」
『残念だが、今の我の力ではどうすることも出来ん』
先に思いを読み取っていたスカーレットは私が用件を口にする前に否定した。
分かっていた……分かっていたけど……私にはどうすることも出来ない。
「そう……だよね。それに、操られているのか、ティルの本心なのかも分からない以上……どうすることも出来ないよね」
『すまない……それよりも、このことはシャルロットには話さないのか?』
私は頭を抱え、深くため息をつく。
「今はまだ……話さない」
『いずれ知ることになってもか?』
「その時は……正直に話す。だけど……隠せるのであれば隠し通したい。もし……彼を」
言い切る前に扉がノックされ、私はスカーレットとの会話をやめる。
「誰?」
「あ、セリナさん。私です。シャルロットです。あの……宜しいですか?」
扉の向こうにいるシャルロットが入室を願うが、私は拒否した。
「ごめん……本当に体調が優れないから……入ってこないで」
「ご、ごめんなさい。もし……何かありましたらいつでも呼んでください。何でもしますので……」
遠ざかっていくシャルロットの足音を聞きながら、私は手の甲に浮かんでいる守護の紋章を見つめ、再び頭を抱える。
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