セリナの武器3
「えいッ!」
魔道書に記されているとおりに魔法を唱え、成功した私は消えていく魔法を見ながらガッツポーズをする。
「完璧! 次からは魔道書を見なくても唱えられそう」
自信がつく反面、私はセリナさんの言いつけを破ってしまったことを反省していた。
怒っているかな? ……でも、魔法の意欲を抑えることは出来ない。
セリナさん……ごめんなさい。
「さて、次は……面倒だし、火・水・雷・風・氷の魔法を全部試してみようかな?」
再び魔道書を開いて、詠唱しようとしたその時。
「え?」
背後の木が次々と倒れ始め、何かが近づいてくるのを感じた私は魔道書を強く持つ。
「ああ……まさか、魔物?」
木の陰から見えたのは巨大な蜘蛛の魔物だった。蜘蛛は私の存在に気づき、奇声を発しながら、威嚇行動を取る。
「せっかくだし……魔物さんには私の練習台になってもらおうかな」
逃げる選択をせず、私は炎魔法を唱え、火球を創り出す。
奇声を発しながら魔物は私に突進し、前足を叩きつける。動きが予測できた私は素早く後退し、火球を魔物に向かって飛ばす。火球が魔物に触れた瞬間爆発……したのだったが。
「え?」
「キシャァァァッ!!」
炎が魔物を包み込むことなく、徐々に消えていく。
「どういうこと? ちゃんと唱えたのに……まさか、魔力不足?」
困惑している私に構うことなく、魔物は糸を吐き、体の自由を奪ってきた。
「キャッ! 何これ!? ネバネバして動けない」
身動きがとれず、もがいていると、魔物が立ち上がり、私を押し潰そうとしてきた。
恐怖と焦りからなのか涙が流れ、私は思わず叫んだ。
「た……助けて!! セリナさん!!」
瞼を閉じた瞬間、はっきりと聞き覚えのある声が耳に届いた。
「はいはい」
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魔物の奇声を頼りに森を駆け回っていた私は、ついにシャルロットを見つけた。だが、状況を見た感じ、笑みを浮べて駆け寄る暇はなかった。
「ちょっと荒っぽいけど、仕方ない」
地面を思いっきり蹴り、シャルロットの元に向かう。
「た……助けて!! セリナさん!!」
「はいはい」
助けを求めるシャルロットに返事をし、私はシャルロットを襲っている魔物を思いっきり蹴り飛ばす。
派手に吹き飛んだ魔物を眺めながら私は目を閉じているシャルロットに声を掛ける。
「大丈夫? 怪我はない?」
シャルロットはゆっくりと目を開け、私を見て、大粒の涙を流し始める。
「せ、セリナさん!! ごめんなさいい!!」
「そういうのはもう少ししてからかな? それよりもアイツを倒さないと」
シャルロットを動けるように糸を魔法で焼き切り、魔物に目を向ける。
魔物は体勢を整え、標的を私に変える。突進してくる動作に対し、炎魔法を盛大に放つが、魔物は怯むことなく私との距離を詰めてくる。
「お?」
危険だと判断した私はシャルロットを抱え、高さがある木に飛び乗る。
「セリナさんの魔法も効かないなんて……」
「恐らく、魔法耐性がある魔物ね。珍しくはないけど、一切効かないヤツを見るのは初めてね」
私はシャルロットに木の上で待つよう伝え、再び地面に降り立つ。
私に気づいた魔物は再び突進してくる。
「セリナさん!!」
「心配無用だよ! 見ていて!」
重心を落とし、大きく振りかぶって、私は魔物に拳を思いっきり当てる。
「魔法がダメなら、思いっきり殴れば良いのよ!!」
当てた手応えは十分。魔物から拳を離すと、その場に沈み込み、ピクリとも動くことはなかった。
「す……凄い」
木の上で呆気にとられているシャルロット。私はシャルロットに「降りてきなさい」と声を掛ける。
「せ、セリナさん!!」
私に抱きついてこようとするシャルロットだが、私は彼女の額を思いっきり指で弾いた。
「ふぉぉ……」
あまりの激痛にシャルロットは悶絶し、転がり回る。
「な、何するんですか!?」
「何するんですかって……シャル。自分が何をしたのか分かっているの?」
私の言葉に対し、答えることが出来ないシャルロット。私はため息をついて、シャルロットと目線を合わせる。
「自分の力を試したいのは分かる。だけど、この森は貴女が思っている以上に危険な場所なの。さっきの魔物は魔法攻撃に対して耐性を持っていた。そんな相手に魔法は通用しないよ。反省しなさい」
言いきった瞬間、シャルロットの表情が曇る。
少しキツく言い過ぎたかな? ……仕方ない。
今にも泣きそうな表情を浮かべているシャルロットの頭を優しく撫でる。
「え?」
突然頭を撫でられたシャルロットは戸惑う。
「だけど魔法の威力と狙った場所は悪くなかったわ。属性選びも間違っていない。良いセンスだよ」
するとシャルロットは私に抱きつき、ローブの袖を握りながら謝り続ける。
「……さあ、帰ろうか」
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レシスの家に戻った私とシャルロット。
心配していたレシスは当然のようにシャルロットを怒るが、すぐに笑みを浮べて抱きしめていた。
離れた場所から様子を見守っていた私は、気持ちを落ち着かせるために紅茶を飲む。
「やれやれ。無駄な心配させないでよね」
『あ、あの……セリナよ』
また勝手に喋る。スカーレット。今度は何よ。
『いや……数分前のお主の戦いを見ていたのだが……武器は必要なのか?』
今更何を言っているの? 魔王を倒すには必要じゃない。
『そ、そうなのだが、その……武器を持たなくても強いのではないかと』
ヤダ。武器を持たないで戦うなんてごめんよ。手が汚れる。
『気持ちは分かるが……』
何? 何か文句でもあるの?
『いや……まあ、いい。好きにしてくれ』
全く……なんなのよ。
(ひょっとして……我は予想以上に、とんでもない戦闘狂を生き返らせてしまったのではないか? こんなヤツに武器など持たせたら鬼に金棒なんてものじゃないぞ!?)
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