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セリナの武器2

 差し出されたまほう石を受け取った私は、魔力の純度が高いことを確認した後、キースに目を向ける。


「キースくん。この魔法石はどこで?」


「……3年前になります。病気で亡くなった母の形見です。弱っていく中、僕に……」


 あまりにも重すぎる真実を知った私は、慌ててキースに魔法石を返す。


「う、受け取れないよ! そんな大事な物……ちゃんと持っていてね」


 しかし、キースは魔法石を受け取らず、真っ直ぐ私の目を見てくる。


「セリナさん……いえ、里長には返しきれない恩があります。一族を受け入れてくれた上、僕に生きる意味をくれた。どうか、僕の想いを受け止めてくれませんか?」


 う……いつから強情な性格になったの? 困るわぁ……こんな大事な物受け取れないよぉ。


 受け取るか受けたらないか悩んでいると、工房の入り口に影が伸びる。


「受け取ってくれませんか? セリナ殿」


 突然会話に混ざってきたのは、キースの父、ベルフェだった。


「べ、ベルフェまで……」


「いつも自分の気持ちを表に出さないキースがここまで言っているんです。それに亡き妻も、恩人の支えになれるのであれば文句は言わないはずです。自分からもお願いします」


 ベルフェからも頭を下げられ、私は再びキースに目を向ける。


 以前旅をしたときの怯えた表情ではなく、覚悟を決めた凜々しい表情を浮かべていた。


「……分かった。言葉に甘えさせてもらうよ」


 私はキースの頭に手を置き、優しく撫でる。


「受け止めさせてもらうよ。キースくんの想い」


 返答を聞いた瞬間、キースは満面の笑みを浮べて「はい!」と返事をする。


 話しを終始見守っていたジャックが腰を上げ、私はジャックに魔法石を手渡す。


「決まりだな。キース。これから忙しくなるぞ。覚悟は良いか?」


「はい! 師匠!!」


 ジャックとキースは工房の奥へと入っていき、ベルフェト共に工房を後にした。




 ======




「ベルフェ……ありがとね。奥さんの形見を使わせてもらって」


 隣に並んで歩くベルフェに、私は感謝を口にした。


「いえいえ。自分たちに出来ることであれば何でもしますよ。それよりも……キースが未だにあの石を持っていたことに少々驚いています」


「余程お母さんのことが好きだったのかな?」


 茶化すつもりはなかったが、ベルフェは苦笑を浮べて首を横に振る。


「いえいえ。自分がキースを甘やかしすぎてしまって、いつも一緒に怒られていましたよ……ですが、時折見せる格好良さに自分もキースも惹かれたんだと思います。セリナ殿のように」


 突然出てきた自分の名前に驚く私。


「私? 私は格好良くなんかないよ」


「いえ。セリナ殿を見ていると妻を思い出します。流石に顔や容姿は違いますが、常に明るく、正義感の強いヤツでしたよ」


 明るい、正義感という言葉を聞いた瞬間、私は歩みを止め、ベルフェの言葉を否定する。


「……いや、私は明るくもないし、正義感なんか全くなかったわ。今思うと間違えていたね……あの時は」


「あの時?」


 ヤバッ……思わず話したくないことを話しそうになった。


「いや……何でもないよ」


 私の表情が暗かったのか、ベルフェは食い下がって続きを知ろうとする。


「失礼ですが、何でもないようには見えないのですが……」


 いや、察してよ。話したくないことなんだけど?


 しかし、ベルフェは食下がり、あまりのしつこさに、いっそ話そうかと諦めた瞬間、遠くからレシスの声が聞こえ、間一髪、私はベルフェに過去を話すことを免れた。


「ごめんなさい。呼ばれているからまたの機会で」


 納得しがたい表情を浮かべるベルフェだったが、レシスの元に向かっていく私を跪いて見送った。




 ======




 レシスに呼び戻された私は、家の中の惨劇を見て、苦笑を浮べる。


「も、もう無理です……頭がおかしくなりそうです」


 机の上で小刻みに震えるリリカ。


「まさか魔道書を全部読もうとしたの? だから最初に言ったじゃない。必要な物だけ読んで理解するって」


「は、はい……」


 まあ、ろくに魔法を使ったことがない上に、文字だらけの魔道書をいきなり読んだとなれば、パンクするのも無理ないね。


「でもまあ……意欲は伝わったよ。よく頑張ったね。休憩しましょうか」


「は……はい」


 リリカはやっとの思いで体を起こし、リリカの疲れを労うかのようにレシスが紅茶を出す。


「レシスはどう? 頭が混乱しそうになった?」


「私はセリナさんの言葉通りに必要な部分だけを読んでいたので、それほど疲れていませんけど……」


「ええ? レシスさんそれで良いんですか? なんか、派手そうで、面白そうな魔法に目を付けましょうよ~」


 頬を膨らませるリリカに対して、レシスは苦笑を浮べて椅子に座り、紅茶を飲む。


「派手なのはちょっと……それに、自分の魔力とも相談して読んでいるから無茶は……」


 おお! 流石は元エルフの里長。要領が良いね。


「むぅ……」


 頬を膨らませつつもレシスの紅茶を飲むリリカ。


 その時、私はシャルロットの姿がないことに気づき、飲もうとしていた紅茶を机の上に置く。


「あれ? シャルは?」


「そういえば、5分ほど前に、お手洗いに行ったきり帰ってないですね」


 リリカの証言を聞いた瞬間、私はまさかと思い、トイレの扉を勢い良く開ける。


 当然シャルロットの姿はなく、換気用の小窓が開いているのを見た私は、なりふり構わず家を飛び出る。


「あ、セリナさん!?」


 レシスが私を呼び止めるが、私は止まることなく、里の外へと向かう。


 まさかと思うけど……あの子。魔法を試すために里の外に!?

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伊澄ユウイチです!


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