セリナの武器1
グランの住民たちを救出してから3日経ち、住居が急速に増えた里を眺め、私は心の底から満足していた。
「ふむふむ。最初は小規模だった里が、街のようになるなんて。いろんな種族が集まると発展も早いわね」
行き交う人が挨拶しながら私の前を通っていき、消してしまった故郷を彷彿させる。
「あ、ここにいた! セリナさん!」
遠くから手を振りながら声を掛けてきたのは、里の外で倒れていた少女、シャルロットだった。
「ん? どうしたの? シャルロット……って、なんでレシスとリリカちゃんもいるの?」
シャルロットの背後に入るレシスとリリカは満面の笑みを浮べて、私に手を振ってくる。
「セリナさん! 私に魔法を教えて!」
レシスたちが口を開く前に、シャルロットが私のローブの袖を掴んで懇願してくる。
「え? 突然何? 魔法? え?」
困惑している私に、レシスが説明する。
「実はですね……シャルちゃんがどうしても魔法を習得したいって言い出したもので……私じゃ攻撃魔法は教えられなくて」
なるほど。だから私の所に来たんだね。
「それとシャルちゃんに教えるついでに、私とリリカちゃんも習いたいなぁっと思って」
ちゃっかり便乗してるし。
リリカちゃん……興味津々ですって言わんばかりの目はやめて。
しかし、懸命にローブの袖を放そうとしないシャルロットを見て、私はため息をついてシャルロットの頭を撫でる。
「仕方ないね。良いよ。教えてあげる」
すると3人は明るい笑みを浮べて、喜び始める。
「ただし、レシス。場所を貸して。それが条件よ」
「え~?」
え~? じゃないわよ。
「いきなり実技なんて出来るわけないでしょ? 座学からだよ。ざ・が・く。嫌なら他を当たって」
「わ、分かりました! 貸します! 貸しますから、待ってくださぁい!!」
必死に引き留めるレシス……可愛すぎる!!
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魔法の勉強のため、レシスの家に転がり込んだ私たちは、1つの机を囲んで、魔道書を開いた。
「まあ、説明するのも大事だけど、魔道書に書かれている基本を覚えるのが先ね」
「結構論理的に書かれてますね……」
頭を抱えながら魔道書を見つめるリリカ。
まあ、文字数も多いし、頭を抱えるのは無理もないか。
「わぁ……もしかしてセリナさんは全部覚えているんですか?」
率直な疑問をぶつけるレシスに私は首を横に振る。
「全然覚えてないよ。必要なものだけ覚えて、必要ないものは読むことすらしなかったわ」
リリカとレシスは「そうなんだ……」と言わんばかりの表情を浮かべる。
そんな2人を余所に、黙々と魔道書を読み続けるシャルロット。
読めない文字を聞くこともなければ、効率化するにはどうすれば良いのかすら聞いてこない。
少し不安に感じたが、集中しているので、声を掛けるのは控えた。
「文字数に圧倒されてないで、2人も読んで」
『はーい』
3人とも頭を揃えて魔道書に目を向け、集中モードに入る。
正直、リリカは攻撃魔法を使うには魔力が少し心許ないが、エルフ特有の回復魔法を使うのであれば、十分すぎる魔力を持っている。
レシスに関しては……言うまでもないか。
加護を受ける前の私と変わらないほどの量と質を持っている。コツさえ掴めば化けそうだが……生憎、戦いを好む性格じゃない。惜しい逸材なんだけどね。
そして、レシスと同じだけ……いや、それ以上の魔力を持っているのがシャルロット。
私の目が狂っていなかったら、この子は賢者になれるかも。聞くところによると、まだ12歳らしい。環境1つだが、生前の私よりも優れた魔法使いになることは間違いない……まあ、あくまでも生前の私よりだけどね。
気持ちも魔力も違う3人がここからどこまで成長するか楽しみ。
『セリナ。少し良いか?』
ダメ。今ワクワクしているんだから邪魔しないで。
話しかけてくるスカーレットを無視しようとするが、しつこく何度も声を掛けてくるため、私は3人に自習を命じ、家から……そして里の外に出る。
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「で? 何? いきなり話しかけてきて、何の用なの?」
『3人と話しているときとは打って変わっての口調だな』
「当たり前でしょ? 少なからず、私は貴方のことを恨んでいるんだから」
『まあ……その恨みが魔王を倒した後に晴れるのであれば良いのだが。それよりも、他の者を育てるのも大事だが、お主自身も成長してもらわなくては困る』
勝手に困ってくれ。
『辛辣なヤツだな。だが、お前も感じているのではないか? 今のままだと、生前の二の舞だと』
残念だけど、スカーレットの言うとおり。加護で強化されたとはいえ、今のままでは魔王に勝てるとは思っていない。
まだアイツの底を知っていない。だから、現状に満足するのは間違っている。
「悔しいけど……仕方ないわね。少し修行するとしましょうか」
『理解……感謝するぞ』
さてと……何を伸ばそうか悩むところだけど、確かアイツは……翼を持っていたね。
空中戦を想定するのであれば、空中機動力を伸ばすのが先決のようね。
「久しぶりに飛んでみるか……」
空を見上げ、飛行魔法を使って空中を泳いでみるが、魔力が強化されたといえども、速度は生前のままだった。
「……遅い。これじゃあ、遊覧飛行ね。参ったなぁ」
納得がいかず、ゆっくり下降し、悩みながら着地する。
そんな時、再びスカーレットが声を掛けてくる。
『速さが問題か。それならお主に我の翼を授けよう。背中に翼をイメージしてみろ』
翼を……イメージ? 理解に苦労するけど、やってみるだけ、やってみましょうか。
自分の背中に翼が生えてくるとイメージすると、紅い炎が背中から溢れ出て、竜の翼に変わる。
「おお!? 本当に出た! これがスカーレットの翼?」
『正確には加護に飛行補助の機能を追加しただけだ。まあ、飛行魔法を使うよりは速く動けるだろう』
やっぱり理解に苦しむけど、せっかく生えたのだから、試しにもう一度飛んでみよう。
飛ぶ前に翼が動くのか確認し、再び空に目を向け、私は翼を羽ばたかせた。
すると、今まで感じたことないスピードに私は思わず声を漏らしてしまう。
「うわッ!! は、速い……」
スピードは出ているが安定感は消え、旋回時もクセがあった。
「でも……これくらい」
飛んでから数秒ほど戸惑ったが、すぐにコツを掴み、最小限の羽ばたきで速く飛べるようになった。
「おお~。これならいけそう。あとは反復練習ね」
悔しいがスカーレットの翼のお陰で空中機動力の課題はクリアし、私は再び地上に足を付けた。
だが、ここで私はさらなる問題を見つけてしまった。
「翼も持っていたけど……アイツ、近接でも戦えていたわね」
『そうだな。圧倒的な魔力と達人級の剣術を身につけている。魔力では劣っているとは思えないが、距離を詰められると、少々苦しくなるな』
近接……8年ぶりに近接戦のことを考える。騎士団にいた頃を思い出してしまう……思い出したくない。あの訓練の日々を思い出しただけでも……うぷっ、吐き気がする。
嫌な記憶を思い出しつつも、私は里に戻り、ジャックの工房へと足を運んだ。
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「え? 何の武器を使えば良いか……と、言いますと?」
言葉の通りなんだけどね。
「私に合う武器を見繕って欲しいの。出来れば使いやすくて、近接に対応できる武器をね」
「無茶言いますね……以前も言いましたが、魔法使いなんですよね? 近接武器を持つのはリスクがあるんじゃ……」
「あれ? 言っていなかった? 私はグランの王国騎士団にいた時期もあるんだよ? 武器なら一通り使えるよ」
あーあ、また思い出しちゃった。吐きそう。
すると後頭部を掻きながら数秒考えたジャックは答えを口にした。
「使い回しを考えると、やはり剣になりますね」
まあ、そうなるよね。
「ただ……セリナさんの魔力を活かすのであれば、普通の剣ではダメですね」
「ん? 普通の剣ではダメってどういうこと?」
「専門的なことは言いませんが、セリナさんの魔力を纏い続けられる耐久性がある武器でないとダメと言うことです」
ああ、なるほどね。理解しやすいね。
「となると、素材の問題?」
「はい。素材として魔力を蓄えることが出来る石、魔法石が必要なのですが……」
「魔法石……かぁ」
魔王も欲している魔法石。もう一度グラン国まで足を運ぶ事を想像すると面倒ね。
と言うか、国を消してしまったから、あの周辺は目を付けられてそう……だけど、代替えできる物でもないし、その辺の鉱山だと純度の高い魔法石は出ないだろうし……。
私とジャックは「うーん……」と悩み続け、武器の製造を諦め欠けたその時。
「里長、師匠」
声を掛けてきたのはジャックの元に弟子入りしたキースだった。
「キース。すまないが今は大事な話を……」
ジャックの言葉を遮るかのようにキースは麻袋からある物を取り出し、私とジャックは目を丸くした。
「キースくん……これって」
「魔法石です。それも高純度の物です。どうか……これを使ってください」
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