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伝わる情報

「里長~!」


 里の住民たちが里の入り口で手を振りながら、私たちを迎えた。


「みんな。ただいま」


「ただいま、じゃないですよ!」

「そうですよ! 無断でみんなでどこ行っていたんですか!?」


 帰って来て早々、住民たちから心配の声が上がる。


 本当に申し訳ない……。


「ちょっとね……」


 私はレシス、ジャック、ベルフェの背後にいるグランの住民たちに目を向け、その存在に気づいた里の住民たちは私に尋ねてくる。


「里長。この方々は?」


「私の故郷の人たちだよ。急な話で申し訳ないけど、彼らを里に迎え入れたいのだけど……」


 里の住民たちは数秒だけ騒いだが、状況を理解してくれたのか、即座に動き始めた。


「と、言うことは……準備すれば良いんですね?」


 おお、慣れてきたのか察しが良い。


「頼むわね」


『はい!』


 里の住民たちは声を重ね、笑みを浮べて返事をする。


 数分も経たないうちに、各家庭から美味しそうな匂いが漂い始め、私は里の住民たちに後を任せた。




 ======




 やっと一息付けるようになった私は、ジャック、ベルフェと共にレシスの家にお邪魔していた。


「ふぅ……流石に疲れたぁ」


 レシスがテーブルの上に人数分の飲み物を置き、3人が揃った瞬間、私は何も言わずに深々と頭を下げた。


「セリナさん!?」

「セリナ殿!?」


「3人とも……ありがとね」


「突然どうしたんですか? 私たちは感謝される覚えがないんですが……」


「いや。みんながいなかったらスムーズに事は進まなかったし、私1人だと、グランのみんなを助けることは出来なかった。私のワガママに付き合ってくれて、ありがとう」


 意味を理解した3人は、笑みを浮べて顔を上げてくれと頼んでくる。


「セリナさん。この里はセリナさんが全てです。レシスは……セリナさんが向かう場所まで付き合いますよ」


「命をかけて、死ぬまで忠を尽くすと決めたのです。どこまでも付いていきます」


「面白い人には面白い出来事が転がってくるものですよ。それを見ないわけにはいかないでしょ?」


 3人の想いを受け止めた私は、涙を流しながら笑みを浮べ、改めて3人に感謝を述べた。




 ======




「……退屈だな」


 一定の間隔で降り続く雷を窓越しで見ながら、俺は呟いた。


 深くため息をつき、玉座に腰を下ろす。


「我が魔王、デューク様」


 部下の魔人が俺の前に跪き、報告の許可を求めてくる。


「なんだ?」


「失礼。幹部4名が遠征を終え、お戻りになりました」


「そうか……戻ったか。通せ」


「はッ!!」


 入り口の扉が全開になり、俺が認めた4人の幹部が部屋に入り、目の前で跪く。


「良く戻った。幹部たちよ。報告を聞こうか。まずは北部の主要国制圧を任せたハープから話せ」


「はッ! 北部の主要国を全て制圧してきました。抗う者は全て殺し、降伏してきた者は強制労働を命じてきました」


 すると隣で報告を聞いていた幹部の1人が鼻で笑う。


「クフフ……手ぬるいですねぇ。ハープさん」


「何だと?」


「抗う者だけではなく、問答無用で全員殺してくれば良いじゃないですかぁ」


「それだと、デューク様の理想通りにはならない」


「ええ。そうですね。ですが、人間とは醜い生き物。欲に忠実で、この世に残す価値は無いかと想うのですよぉ」


「口を慎め、ギルディック! それ以上余計なことを言うのであれば、斬るぞ!」


「おお~。怖いですね~。女性を怒らせない方が良いとはこのことですねぇ」


 ハープが腰に携えている剣に手をかけた瞬間、ギルディックは不敵な笑みを浮べて、右手で魔法を唱えようとする。


「やめてください。2人とも」


 2人を止めたのは3人目の幹部、レイズだった。


 幼そうな見た目に反して、冷酷な表情を浮かべる彼女は、2人に殺気混じりの視線を送る。


「デューク様の前です。控えてください」


「レイズ……」

「ふんッ!」


 ハープはレイズの冷酷な表情を見て、渋々剣を納め、ギルディックは不満そうな表情を浮かべて、レイズから視線を逸らす。


「そういうことだ。2人とも。実力は評価しているが、仲間同士で睨み合うのはやめてもらおうか」


 俺が一言添えると、2人は深々と頭を下げて、謝罪を口にする。


 再び報告に戻り、ギルディック、レイズの報告を聞き、4人目の報告を聞こうとしたその時。


「デュ、デューク様ッ!!」


 1人の魔人が息を切らしながら俺の前に跪く。


「無礼者!! アポイントも無しに、デューク様に接見するなど……」


 魔人に対し激怒するハープ。

 今にも剣を抜き、魔人の首をはねようとしていたが、ため息をつきながら彼女を止める。


「構わん。無礼を許そう」


 そういうとハープは再び跪き、俺は魔人の話を聞く。


「で? 何用だ?」


「そ、それが……旧グラン国の近くで見張りをしていた同胞から連絡があり、旧グラン国が消滅したとのことです!」


 消滅という言葉に驚く幹部たち。


 さらに魔人からの情報を聞く。


「消滅……か。自然的なものか? はたまた人為的なものか?」


 魔人は震えながらも、報告を続ける。


「じ、人為的なものであります」


「そうか……それで? 被害は?」


「魔人たちは国と共に消えてしまい、生き残っていた住民たちには逃げられてしまいました」


 魔人が言葉を言い切った瞬間、俺はゆっくりと立ち上がる。


「もう一度聞いても良いか? 今、逃げられたと言ったな?」


「あ……はい」


 魔人が返事をした瞬間、俺は魔人の首めがけて目にも止まらぬ速さ手を横に振る。


「あ……え?」


「グラン国近辺の魔法石は今後のためにも必要だと言ったはずだ。国や魔人たちが消えたのはまだしも、大切な労働力を失い、追いかけもしなかった。まあ、最速で報告しに来たのは褒めてやろう。ゆっくり眠れ」


 魔人に別れの言葉を伝えた瞬間、首と胴が離れ、噴水のように血が吹き出る。


「レイズ。すまないな。お前が玉座の間を汚さないように努力していたのを無駄にしてしまった」


「いえ。デューク様のお気持ちを考えれば致し方ないことです」


「そうか……悪いが掃除を任せる」


『はッ!』


 魔人の死体掃除に取りかかろうとする幹部たちだが、俺は報告を終えていない幹部1人を呼んだ。


「はい。デューク様。遠征の報告ですか?」


「いや違う。報告は大体分かった。お前には頼みたいことがあるんだ」


「何なりと」


 俺は彼の肩に手を置き、命令を下す。


「グラン国跡地に赴き、調査をしてきてくれ。些細なことでも構わない。くまなく調べてくれ」


「……承知しました。デューク様」


 命令を受けた幹部は、足早に玉座の間から出て行き、グラン国へと向かっていった。


 俺が半分崩壊させたとはいえ、国を消すほどの実力を持った者とは……これは面白くなりそうだ。


いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!

伊澄ユウイチです!


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