故郷へ3
「始まった……」
「セリナさんとベルフェが魔人たちを引き付けている間に片付けるぞ」
国の出入り口付近で爆発音が聞こえる最中、私とジャックさんはセリナさんに指示された場所に向かう。
「レシスさん。走りながらで構わない。これを」
「え? わッ!!」
どこから取り出したのか、ジャックさんは私に杖を投げ、バランスを崩しかけながらも私は杖を受け止める。
「これは?」
「セリナさんから頼まれていたんだ。別行動になった場合、レシスさんも戦えるよう簡易的な武器を渡してくれと。使い方を教えている時間が惜しい。実践で覚えてくれ」
「ふえぇ!!」
実践でって……そういうことならもう少し早く渡してくださいよぉ。
「見えた……あのランプの明かりだ」
杖の使い方を聞きたかったが、目的の場所に近づき、私は前方のランプに目を向けた。
「みなさんがグランの住民さんですね? 私たちはセリナさんの指示で来ました。ここにいる人数で全員ですか?」
「お待ちしていました! ここにいる50名で全員です。準備は出来ています。指示を!」
私はジャックさんと目を合わせ、セリナさんが指示した避難ルートに住民さんたちを誘導する。
「おい!! そこで何をしている!!」
「わッ!! 魔人!? どうしてここに?」
「チッ!」
私は住民さんたちに走るよう指示し、剣を抜いて襲ってくる魔人をジャックさんが足止めする。
「ジャックさん!」
「俺に気遣う暇があるなら住民たちに付き添ってくれ!」
鍔迫り合いしながらジャックさんは私に指示を送り、私はジャックさんを心配しつつも、背を向けて住民たちを追った。
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「まだなの?」
ジャックとレシスからの合図を待つ私とベルフェは魔人の相手をするのに飽きてきた。
正直倒すのは簡単だが、ほどよい加減で気を引き付けるのは辛い。
「セリナ殿。正直、我慢の限界なんですが……」
「奇遇だね。私も面倒くさくなってきた……でも我慢だよ。今派手に暴れると、怪我人が出るかもしれない。万が一のことを考えて、もう少し我慢だよ」
「……承知しました」
距離を縮めてくる魔人は、変わらずベルフェが迎撃するが、遠くから攻撃してくる魔人に対しては私が魔法で対処する。
「オラァッ!!」
「下級雷魔法・サンダー!」
雷を纏う複数の球体が魔人の頭を貫き、声を出すことなく倒れる。だが、倒れても倒れても次々と魔人が来る。
あー、面倒くさい。まとめて吹き飛ばしたいんだけど……。
痺れが切れそうになったその時、暗闇が広がる上空に、眩い閃光が走る。
「お?」
「やっと合図だね。待ちくたびれちゃったよ。それじゃあ、ベルフェ。お疲れ様」
「お力になれたでしょうか?」
「なれてるよ。ありがとね」
私に笑みを見せながら退避するベルフェ。ベルフェが離れたのを確認した私は、飛行魔法を使い、空からグランを見渡す。
魔人たちが蔓延る国を見て、私は右手と左手にそれぞれ魔力を集中させる。
「炎魔法・雷魔法混合……」
地上にいる魔人たちは私が唱える魔法を見て、恐れおののく。
ああ……こんな光景だったのね。魔王が私の故郷を壊した時って。
皮肉にも私も彼と同じ事をする……まあ、やられたらやり返すのはこの世の理よね?
「ビッグバン!!」
炎と雷の混合魔法を地面に向けて放ち、小さな光は地面に辿り着く。
数秒後、眩い光が国全体を覆う。直視できないほどの光で、光が弱まり、目を開けると、故郷は……グランは消滅していた。
建物や忌々しい地割れも消え、真っさらな土地だけが残った。
全力で国の外に退避したベルフェは私の混合魔法を見て、思わず感想を口にする。
「これがセリナ殿の魔法……底が見えない……流石は主」
「……故郷の最後。まさか私の手でトドメを刺すことになるとは」
消滅した瞬間、思い出が頭の中で広がり、思わず涙が浮き上がってしまったが、ベルフェが見ている手前、何とか涙をこらえる。
「セリナ殿! レシスとジャックが待っています! ……セリナ殿?」
「ん? ああ、ごめん。行こうか」
地上に降り立った私はベルフェと共にレシスとジャックが待つ場所へと向かった。
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「あ、セリナさ~ん」
私とベルフェの姿を確認したレシスが手を振りながら近づいてくる。
手を振り返すと、レシスは私をポカポカと軽く殴りながら喚き始める。
「セリナさん!! 酷いじゃないですか!!」
「え? な、なに?」
「ジャックさんからこれを貰ったんですよ!」
レシスは杖を私に見せつけ、思い出した私はポンと手を叩く。
「私は攻撃魔法を使いたくないって言ったじゃないですか!」
それは初耳ですけど?
「怒らないでよ~。護身用で準備してもらっただけだよ~。それに使う機会はなかったでしょ?」
すると、レシスは頬を膨らませて私から目を逸らす。
私は首を傾げ、理解できていない私を見かねて、ジャックが経緯を説明する。
「すみません。セリナさん。自分が退路を確保するために別行動をした時、別方向から迫ってきた魔人を撃退したのはレシスさんなんです」
「レシスが? と言うことは……」
「はい。風魔法を使ってグランの住民たちを守ったんです」
ジャックの説明を聞いて、私はもう一度レシスに目を向ける。
レシスは頑なに私と視線を合わそうとしなかったが、私は彼女の肩に手を置く。
「レシス。ごめんなさい。そして……ありがとね」
するとレシスは顔を真っ赤にさせた後、表情を隠すように背を向ける。
か、可愛い……おっとりしている印象が強いレシスがこんなにも……って、いけない! いけない!
また別の世界に行こうとしていた……。
「セリナさん……」
別世界に行きかけていた私の前に、グランの住民たちが膝をついて、私に頭を下げる。
「ご無事で何よりです!! それと……ありがとうございます!!」
言葉を返すのに一瞬焦ったが、私はニッコリと笑みを浮べて、一番前にいる男性に手を差し伸べる。
「そっちこそ。無事でいてくれて、ありがとう」
「せ、セリナさん……」
住民たちは感極まって涙を流し、その涙が国が崩壊してからの過酷さを教えてくれた。
「……貴方たちの住む場所……大切な場所に、私はトドメを刺してしまった……ごめんなさい」
「セリナさん?」
「罪滅ぼしと言っちゃ何だけど、私たちの里に来ない?」
住民たちは呆け顔を浮べ、私はベルフェ、レシス、ジャックの3人に目を向け、3人ともコクリと頷く。
「つ、罪滅ぼしなんてとんでもない!セリナさんは私たちを救ってくれた恩人……いわば英雄ですよ!」
え、英雄だなんて……大げさな。
『満更でもなさそうだな?』
黙って、スカーレット。と言うか久しぶりに喋ったわね。
「是非! 是非、我々を連れて行ってください!セリナさんの……セリナさんたちの里に連れて行ってください!」
住民たち全員が笑みを浮べ、私もつられて笑みを浮べる。
「決まりだね! よし! それじゃあ……みんな! 帰りましょうか!」
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