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泡沫の夢、夢枕  作者: 蒼井ミチル
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「ひろ。え、なにここ。」

「なにかと言われますと…まあ、見ての通りかと。」

漫画風に描写すればかぽーんという擬音が聞こえそうな風景。まあ、風呂だ。ホテルの屋上とか地下にある温泉施設みたいな大きな浴場をイメージして貰えれば大体そんな感じだと思う。

「これ、普通のお湯?温泉?」

「どうでしたかね…ええと、たしかこっちの水風呂、普通のお風呂が上水で、あっちの深いお風呂が炭酸泉だったかな。」

「すご…家庭用の温泉か。たしか龍脈で水源が熱を持ってるのよね。旧官庁区の温泉地でそんな看板を見たことがある。」

「あっちって関係者以外立ち入り禁止なんじゃないですか?まだ復興が終わってないらしいじゃないですか。」

「あなたに言うこことじゃないとは思うけどさ、戦争が終わったのってわたしらが10歳の頃よ?流石に復興も終わってるわよ。ただあなたが去年捕まえたようなのがまだいるからフリーに出来ないんでしょうね。」

「…あ、そういえばお父さん市議でしたっけ?」

「うん。当たり。その関係で温泉施設のモニターに行ったの。」

「あー、なるほど。ちなみに立ち入り禁止の理由は結界が不安定だからです。代表議会レベルで止まってる話だからナイショでお願いしますね。」

「え、ちょっとまって、そんなところにわたし行ってたの?」

「不安定なのは精神の結界なので中にいる分には問題ないですよ。」

「三重結界なんだっけ?わたしたちは中からしか見たこと無いから知らないんだよね。タブーみたいな感じでさ。」

「そのタブーだって思わせてる結界が不調なんです。だから旧官庁の温泉に浸かりながらその辺考えてみると真実が見えてきますよ。」

「…もう、ほんとにあなたってわたしと同じ学生?」

「そういう魔法使いなんです。」

「大いなる力には大いなる責任が伴う、だっけ?」

「『多く与えられた者からは多く求められ、多く任せられた者からは更に多く要求されるのである』、の方が好きですね。」

「どっちでもいいけどさ、私たちって…あなたは見てくれだけは特に、子供なのよ。なんだかんだ言って、最終的に一人じゃなんも出来ない、コネも力もお金もない。」

「わたしのそれも大半は借り物ですね。」

「ん。つまりね、出来ることには限界があって、その範囲を越えちゃいけないの。さもなくば…」

「さもなくば?」

すると身体を洗い終えた撫子はお風呂の縁に立ち、足を滑らせるようにお風呂に落ちた。

「げほっ、げほ、うぇ、こうなる。」

「大丈夫ですか?」

「思った以上に深かった。ビックリしたわ。」

「わざわざ端の方から入るからですよ。入り口は浅いです。」

わたしはお風呂に飛び込むようなことはしないので、普通に階段から入る。

「いやぁ…お外はどうか知らないけど、広いお風呂ってなかなかないからさ。むしろシャワーが主流だからさ、このクニは。だからちょっと興奮しちゃったよ。」

「…あんまり品がある行為じゃないですね。」

「それについては謝る!」

「いえ、構いませんよ。」

撫子はなんというか、狂言回しみたいなクール系というか斜に構えてる女なのでこういう一面があることに驚きを覚えた。

類は友を呼ぶと言うのか、アグレッシブな知人は本当に少ないから、水の掛け合いとか飛び込みとか、そういう人種が本当にいるのかという新鮮味と困惑だ。

こちらに来てからそういう驚きに不足しない。


談笑の最中撫子の額から零れた汗が艶やかな首筋を通って胸の谷間に吸われていった。腕を膝の上においているため寄せられているが…目測D。

「撫子っておっぱい大きいですね…触ってもいいですか?」

「乳首は弱いからやめてね」

「そですか。…うわ、やわ。はぁ…」

「なんのため息?」

「子供が生まれたときに苦労しなさそうだなって。」

「おっぱいの大きさと母乳の量は比例しないよ?」

「それでも限度があるでしょう。多分多少は胸があった方が赤ちゃんも吸いやすいと思いますよ?…はぁ。すこしはわたしの胸も膨らんでくれればいいのに。」

「いやいや、そんなガリガリだったら付くもんも付かないって。もうちょっと肉つけようよ。食生活変えて筋肉もつけたら身長も伸びるかもよ?いま体重何キロよ。」

「35.4キロです。」

「かるっ!」

「これでも大学生になってから5キロは上がったんです。身長も8センチ。」

「流石に小学生並みの体格はお姉さん心配になっちゃうよ。というかあんたの旦那ロリコンなの?」

「いえ…あれです、見た目は気にしないタイプです。多分男でもおばあちゃんでも好きになれば気にしないんじゃないですかね?」

「えぇ…?」

「これは基本的に、ではなく絶対に、なんですけど、魔法使いって頭がおかしいんです。むしろ頭がおかしいから魔法使いになったんです。常識で測るのはやめた方がいいですよ?」

「藍ちゃんもキチガイって?」

「ええ。中学生くらいにはとある宗教で聖女認定されかけたことがあります。」

「聖女…?」

「称号は純潔だったかな。元々行方不明になったお兄さんの無事を祈るために教会でお世話になるようになったので、まず帰ってこれないような状況だったために修道女のエリートコースだったんですよね。」

「めっちゃ気になるんだけどその話。」

「でもまあ…あんまり面白いお話じゃないので。顛末から陰謀から野望まで、誰も特をしなかった悲しい話です。」

「ふぅん。」

「いつか教えますよ。それより、女子会は楽しいことを話しましょ?」


夜は、深まるばかりである。

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