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「っくしゅん!」
「大丈夫?」
「うぅ…寒いです。なんでこんなに寒いんですか」
「そりゃ、二月だからかな。」
「暖房入れましょうよ!お部屋も…ほら、12度はさすがに寒いですよ」
「布団に入ったら温かくなるよ」
「もぅ…これでよし。眠くなるくらいには切れるようにしときましたから。」
「はいはい。…布団もオッケー。寝よ」
「お邪魔しますね。」
人の肌はやっぱり温い。腕枕というより抱っこされる位の勢いで布団と彼に潜り込めばそれなりに包容を返してくれる。
「初めはさ」
「はい。」
「矯正するつもりだったんだよ。」
「腕枕ですか?」
「そう。当時も中学生だったわけだし、仮に家族でもそういうことする年齢でもないわけでさ」
「誰でもはしませんよ?」
「嫌われるよりかは好かれてた方が嬉しいけどさ」
「…嫌でした?」
「泣き落としはズルくない?」
「ふふ。女の子は小さい時から“女”なんですよ。」
「まあとにかく、一般論として中学生で、ほとんど見知らぬ男と毎日寝てるのは情操というか倫理的にも世間体的にも、良くないわけでさ。」
「初めは誰だって初めまして、ですよ。」
「詭弁だよ、そういうのは。」
苦笑いを浮かべてそう答えた。
「でもですね、あなたにかつて信念があったようにわたしにも譲れぬモノがあったんです。」
「知ってる。何度も聞いた。」
「何度もしてますものね、この話。」
「いつかはどうにかしないとと思ってズルズルと引きずっちゃってさ、気づいたら指輪まではめちゃってさ。」
「墓場までしがみついていく所存です。」
「ん。まあ、そうだね。ぼくも君なしじゃ生きてけないや。この家は一人で住むには広すぎるし。」
「…二人でも広すぎません?こっちに住んでまる三年ですけど、まだ三階の間取りとか覚えてませんよ。」
「行ったことないっけ?」
「お掃除で立ち入ることはありますけど…生活出来るかと言うと別じゃないですか。会議室とかカラオケとか使う機会そうそう無いですし。」
「アンバーライトの同窓会とか」
「一応名前は戴きましたけど、わたしは皆さんと旅をした訳じゃないですから、どうかなって。あんまり参加はしてないですね。キッチンでパタパタする事はありますけど。」
「じゃあ今度上で遊んでみるか。誰か適当に人を集めてさ」
「そうですね。よかったら。」
後日、お友達や先生を集めて懇親会的な感じでカラオケ大会をすることになった。悠越にJpopが浸透する日が来ようとは、この日のわたしは微塵も思っていなかった。